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特集 競泳 日本選手権 ”日本一” のプライドを賭けた争い

水泳 2022年4月26日(火) 午後8:10

98回目を迎える伝統ある大会、それが競泳の『日本選手権』です。ことしは4月28日から横浜市の横浜国際プールで開催されます。新型コロナウイルスの影響を受けて開催日程が変更となりましたが、”日本一速いスイマー”という称号をかけた戦いの意味が揺らぐことはありません。

 

東京オリンピックでメダルを獲得した大橋悠衣選手(左)と本多灯選手(右)

大会にエントリーしたのは、去年夏の東京オリンピックで2つの金メダルを獲得した大橋悠衣選手や、一気に日本競泳陣を引っ張るエース候補に名乗りをあげた本多灯選手。一方で、東京では思うような結果を残せなかった選手たちは捲(けん)土重来を期す大会でもあります。世界のトップを狙う国内最高峰のレースは『気になる』ポイント満載です。

”トップ”と”伸び盛り”が『気になる』

今回の日本選手権は、イレギュラーなタイミングで行われることが決まりました。当初、6月に開催される予定でしたが、5月に福岡で開催予定だった世界選手権の延期が決まった上、新たに6月にハンガリーで世界選手権が開かれることになりました。その影響で日本選手権が前倒しとなり、4月28日から5月1日までの4日間の日程で開かれることになりました。

 

(左上から時計回りに)大橋 悠依、本多 灯、瀬戸 大也 、松元 克央、池江 璃花子の各選手

大会には、東京オリンピックの女子200メートル個人メドレーと400メートル個人メドレーで金メダルを獲得した大橋悠依選手や、男子200メートルバタフライで銀メダルに輝いた本多灯選手のほか、日本の競泳陣を引っ張ってきた瀬戸大也選手や松元克央選手、それに池江璃花子選手などがエントリーしていて、世界の舞台で戦ってきたトップスイマーとしては譲れないプライドとともに、選手たちの現時点の調子や先を見据えた取り組みなどを、かいま見ることができる貴重な機会となります。

 

さらに、大会ではことし9月に中国で行われる予定のアジア大会に派遣する選手の追加選考も行われることから、2年後に迫るパリオリンピックに向けた伸び盛りの若手選手の台頭も感じることができるのが、この時期の日本選手権ならではの楽しみです。

エース候補の『気になる』現在地

本多灯選手は最近、みずからを「日本のエース」と自己紹介するようになりました。

 

東京オリンピック 200mバタフライで銀メダルを獲得した本多選手

去年の夏の東京オリンピック。日本競泳陣は事前に期待された選手たちが思い通りの結果を残せずにいましたが、そんな中で、プレッシャーをはねのけて200メートルバタフライで銀メダルを獲得しました。


その本多選手がなぜ、「日本のエース」とみずからクリアすべきハードルを上げるようなことを口にするのか?『気になる』その理由について本多選手はこう答えました。

エースという自覚を持てば、本当に力を出せると思っている。言うからにはエースらしい行動、レースをしたい。そのプレッシャーに打ち勝ってきたのが僕だ。僕は気持ちが原動力になっている。

両親の影響で中学生のころから、達成したい目標を口に出し、あえてプレッシャーを自分自身にかけることで結果を残してきたという本多選手。「日本のエース」と宣言することは、これから先、世界との戦いの中でも結果を残してみせるという決意表明でもあります。

 

東京オリンピック 200mバタフライで銀メダルを獲得 喜ぶ本多選手

今回の日本選手権で本多選手は、オリンピックで銀メダルを獲得した200メートルバタフライに加え、100メートルバタフライ、400メートル個人メドレー、200メートル自由形にエントリーしました。

おごりはないし、エースとしての器はまだ足りないと思うが、そうなれるように自分に言い聞かせている。

20歳の若きメダリストが強気なことばを力に変えて”エース候補”から”エース”になる瞬間は見逃せません。

金メダリストの泳ぎも『気になる』

大会で『気になる』選手を1人あげるとすれば、東京オリンピックで2つの金メダルを獲得した大橋選手です。

 

東京オリンピック 200m個人メドレーで優勝 喜ぶ大橋選手

今大会は、200メートル自由形、50メートルバタフライ、200メートル個人メドレーの3種目にエントリーしています。3月の国際大会の代表選考会では、金メダリストとしてのプレッシャーや体調不良で十分な練習ができなかったことから本来の泳ぎを見せることができず200メートル個人メドレーは2位、400メートル個人メドレーは3位という結果に終わり、レース後の取材で涙を見せる場面もありました。

 

3月の国際大会代表選考会 200m個人メドレー決勝 大橋選手のバタフライ

それから1か月あまりで今大会に臨む心境について大橋選手は「距離的に練習を積んでいる最中で、レース勘やスピードを出す感覚が鈍っている。5月の練習や、その後のヨーロッパでの大会、その先の世界選手権に向けてレース勘の部分や体を早く動かすなど、そういう部分を確認できたら」と話していました。

 

また、400メートル個人メドレーをエントリーしなかった理由については、ヨーロッパの大会に出場するため見送ったとした上で「目指すところは自己ベストだと思うが、カナダの15歳の選手が4分29秒で泳いでいて、自分が年齢的に練習の兼ね合いも含めてそこまで行くのは難しいという思いがある。自分が200メートルにシフトするいいきっかけにもなるかなと思ったりもしている」と揺れる思いも明かしています。

 

2022年3月 国際大会代表選考会 200m個人メドレーで2位

それでも、東京オリンピックで金メダルを獲得した200メートルに向けては「タイム的にどこまでいけるかわからないが、選考会で負けているので勝っておきたい」と気持ちを奮い立たせている大橋選手。その泳ぎが今大会の見どころの1つになることは間違いありません。

この記事を書いた人

川本 聖 記者

川本 聖 記者

平成22年NHK入局。さいたま局、宮崎局、松山局を経てスポーツニュース部。

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