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特集 令和初の優勝力士!朝乃山が語る!

相撲 2019年5月19日(日) 午後8:10

「令和初の本場所」として注目された大相撲夏場所。十四日目に優勝を決めたのは、平幕の朝乃山でした。25歳、入幕から11場所での初優勝。千秋楽当日の夜にサンデースポーツ2020に生出演。その喜びを語りました。

初めての賜杯と大統領杯

番組冒頭、初めてのNHKのスタジオでの生出演について聞かれ、「素晴らしいです!」と若干緊張気味ながら笑顔で答えてくれた朝乃山。優勝の実感もようやく湧いてきたということでしたが、この日の千秋楽は、実況アナウンサーが「見たこともない光景」と表現するほど、異様な厳戒態勢の中の1日でした。

アメリカのトランプ大統領が観戦した千秋楽。その前で、朝乃山は小結・御嶽海との一番でした。立ち合い、突っ張りを見せた朝乃山でしたが、御嶽海の厳しい攻めに寄り切られ黒星。12勝3敗、令和最初の本場所でつかんだ初優勝です。

表彰式。初めての天皇賜杯、内閣総理大臣杯の授与に続いて…。

 

「アーサーノヤマ・ヒデキ!スモウ・グランドチャンピオン!」

朝乃山はトランプ大統領からアメリカ大統領杯を手渡されました。
「言葉で言い表せないほどうれしかった」と表彰を振り返った朝乃山に、NHKのスタジオでじっくり話を聞きました。

 

大越健介キャスター(以下、大越) まずきょうの相撲なんですが、きのう優勝を決められて今日は残念ながら千秋楽を白星で飾ることはできませんでした。きょうの相手は御嶽海関でしたけれども、振り返っていかがですか。

 

朝乃山関(以下、朝乃山) きのう優勝は決まって、今日の一番も気を抜かずに頑張ろうと思ったんですけど、黒星で終わってちょっと、悔しいです。

 

大越 学生相撲からの先輩ですよね。御嶽海関は。

 

朝乃山 ひとつ上の先輩です。

 

大越 本場所では初対戦ということでしたが、やっぱりそこはまだまだ課題があるっていう事でしょうか。

 

朝乃山 そうですね、優勝しましたけど、きょうの黒星だけじゃなくあとふたつの黒星もあるので、課題はまだたくさんあります。

激動の十三日目と十四日目

副島萌生キャスター(以下、副島) 朝乃山関は富山市出身の25歳。身長は1メートル87センチ、体重は177キロ!平成28年に初土俵を踏んで平成29年に新入幕。史上8番目に早い、新入幕から11場所での優勝を果たしました。

 

大越 今場所初優勝まで手が届いた、大きな要因は自分では何だと思いますか。

 

朝乃山 自分の体を生かした相撲、その攻めの姿勢を貫いたことがよかったんじゃないかと思います。

 

大越 しかし朝乃山関、終盤に試練が来ましたよね。十三日目、栃ノ心戦です。

 

副島 相手の栃ノ心関は、勝てば大関復帰が決まる一番。朝乃山関は攻め込みますが、土俵際で逆転され栃ノ心関に軍配が上がりました。しかしここで「物言い」。およそ6分にもわたる協議の末、軍配差し違え、朝乃山関の勝利となりました。

 

大越 本当に微妙な一番だったと思いますが、栃ノ心関には随分巡業でも稽古をつけてもらった間柄だったと聞きました。

 

朝乃山 そうですね。今年の春巡業でも去年の冬巡業でも、ずっと指名されて稽古つけてもらいました。

 

大越 この6分にわたる協議の間、どのような気持ちでしたか。

 

朝乃山 自分としては負けたと思ったので、物言いがどこについたのか、ずっと不思議で。軍配差し違えになって、「あれ?勝ったんだ」と思いました。

 

大越 そしてその翌日ですね。優勝を決めたのが十四日目でした。

 

副島 相手は大関の豪栄道関。相手に先に上手を取られながら、得意の右四つに持ち込んで寄り切ってみせました。本当に素晴らしい相撲でしたね。

 

大越 取組の映像をご自分でも頷いて見てらっしゃいましたが、この日は大関・豪栄道関に、しっかり組んで勝ったという事で自信になったんじゃないですか。

 

朝乃山 最初、体勢は大関のほうが有利だったんですけど、まあ辛抱して左から押っつけて上手を取る事ができました。そこから休まず攻められたのが良かったと思います。

 

大越 しかも場所も終盤戦、当然優勝への意識のどこかにあったと思うんですが。

 

朝乃山 いや・・・、意識はまだしてなかったです、全然。相手が大関だったので思い切りいこうと思いました。

 

大越 結果的にこの一番があり、この日に優勝を決めたわけですよね。いつごろから優勝は意識しましたか?

 

朝乃山 優勝の意識はなかったですね、ずっとなかったです。今考えてみれば、優勝を意識していたら体が硬くなって、相撲が取れなかったと思うので。

 

大越 やっぱり目の前の一番に集中するっていう事なんですね。

 

朝乃山 きっと今場所はそれができたんだと思います。

ふるさと・富山は大興奮

副島 初優勝を果たした朝乃山関ですけれども、ふるさとへの強い思いと共に戦ってきました。朝乃山関、実はあるニックネームで呼ばれてるんですよね。

 

朝乃山 はい・・・、「富山の人間山脈」です(笑)。

 

 

副島 こちらは支度部屋で使っている座布団ですが、注目してみると「富山の人間山脈」の文字が。富山県出身としては20年ぶりの関取、そして103年ぶりの優勝と、ふるさと富山の期待を一身に背負ってきたんですね。

 

大越 確かに富山市内からは立山連峰が本当にきれいに見えますし、朝乃山関のその立派な体格なら、「富山の人間山脈」といわれるのはわかりますね。

 

朝乃山 まあこれは部屋付きの親方につけてもらったニックネームなので、うん、大事な名前です。富山の盛り上がりは聞いていて嬉しいです。入門してからずっと応援していただいたので、今回の優勝で、ひとつでも富山に恩返しができたと思います。

亡き恩師からの言葉胸に

副島 さらに朝乃山関の優勝を支えたのが、富山で指導を受けた亡き恩師の存在です。朝乃山関の化粧まわし。そこには「浦山英樹」という名前が書かれています。

 

 

副島 2年前、がんのため40歳の若さで亡くなった、富山商業高校時代の恩師です。朝乃山関のしこ名は「朝乃山英樹」。本名は「石橋広暉」なんですが、浦山さんの「英樹」という名前をもらい受けたんですよね。

朝乃山 実は入門前の大学時代から、ちょっと先生の体が悪いというのは聞いていたんです。それで2年前、幕下優勝を決めた次の日、先生に電話したんですが出られなくて、奥さんに電話しても出られなくて、これはやばいのかなと思って。そして次の日、先生が亡くなったと聞いたんです。その時は、本当にぼう然としました。浦山先生には高校の時からずっと、きつく指導されてきたので、いろんな思い出があります。ずっと怒られっぱなしでした、僕は。

 

大越 生活態度、もちろん技術的な面も含めて教えてくれた、まさに恩師というわけですね。

 

朝乃山 もうその全てです。

 

副島 先生からは遺書も受け取ったそうですね。

 

朝乃山 はい、先生の葬式に行った時に奥さんから頂きました。

「お前は良く相撲を頑張っている。俺の誇りだ。横綱になれるのは一握り。横綱になるのは難しいかもしれないけど、お前には無限のチャンスがある。富山のスーパースターになりなさい。」と書いてありました。もらった時は、もう涙が止まりませんでした。

看板力士になりたい

大越 たしかに横綱になれるのはほんの一握りですが、しかし若手力士は今戦国時代、たくさん力をつけてきて、貴景勝関そして御嶽海関はひとつ先輩、それに阿武咲関もいます。十両で勝ち越しを決めた豊山関も同期ですよね。こうしたライバルの存在は関取にとってどんな存在ですか。

 

 

朝乃山 御嶽海関は去年名古屋場所で優勝してますし、貴景勝関が大関になって自分も刺激を受けました。阿武咲関も幕内上位で相撲を取ってましたし。みんな刺激になっていますね。

 

大越 これだけ群雄割拠で若手の競争が厳しい中で、令和初の優勝を飾りました。これからどんな力士になっていきたいと考えていますか。

朝乃山 令和初の今場所に初めて優勝できたことは大変うれしく思いますし、これから令和の時代になって目標とされる力士に、日本相撲協会の「看板力士」になっていきたいです。

 

大越 看板力士ということは、高校時代の恩師の言葉にもありましたけれども、目指すは横綱であると。

 

朝乃山 先生との約束があるのでその約束を果たすっていうか、それに近づけるように頑張りたいです。

 

大越 切磋琢磨する仲間もいますしね。我々も期待してます。ありがとうございました。

 

朝乃山 ありがとうございました。

 

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