NHK sports

特集 朝乃山「まず2桁勝たないと優勝は見えてこない」新大関披露の夏場所が中止 七月場所で再挑戦 

相撲 2020年7月1日(水) 午後5:52

戦後初の無観客場所となった春場所で11勝を挙げ、富山県出身で111年ぶりの新大関となった朝乃山。披露の場所となるはずだった夏場所は新型コロナウイルスの感染拡大で中止となり、名古屋から国技館に会場を変えて無観客で実施される七月場所に持ち越された。観戦予防のため、ほかの部屋の力士と稽古する出稽古も禁止される中で、場所に備える朝乃山に話を聞いた。

早く相撲を取りたいという気持ち

朝乃山はNHKの番組「大相撲特別場所~テレビ桟敷へようこそ」にリモート出演した(5月24日)

 

ーー七月場所は不安はないですか。稽古が足りていないでしょうし。

朝乃山(以下朝):稽古をしないとケガにつながる可能性もあるので、早く相撲を取りたいという気持ちがあります。とにかくコロナが終わってくれないと、私たちも協会としても前に進めないと思うので。

 

ーー高田川部屋の勝武士さんが、新型コロナウイルスに感染して5月13日に亡くなってしまいました。

朝:勝武士さんが亡くなったと聞いたときはびっくりして、ちょっと言葉が出ませんでした。ついに角界でもコロナで亡くなる人が出たということで、改めて怖い病気だということを感じました。気持ちが引き締まりましたね。

 

ーーこれまでも十分気を付けていたと思いますけれど、改めて気持ちを引き締めるということでしょうね。

朝:それが勝武士さんへのお悔やみにもなると思います。

夏場所中止に悔しさはない。七月場所まで時間をどう使うか

ーー新型コロナウイルスの影響で、夏場所がなくなってしまいました。やっぱりやりたかったという悔しさはありましたか。

朝:いやこういう状況なので、悔しさはなかったですね。やったとしても場所中に力士の感染などがあれば、最後までできない可能性もあったと思います。協会も力士も最終的には通常どおり開催することを目指していますし、お客さんがいて、私たちも相撲を取れているというところがあります。春場所は無観客で、歓声や拍手もなく寂しかったです。七月場所はともかく、いずれ観客が入っての本場所をやりたいという気持ちがあります。

 

ーー開催されていれば夏場所は新大関お披露目で、去年は初優勝した場所でした。夏場所にはいろいろな思いがあったかと思いますが。

朝:去年は優勝しましたけれど、それは1年前のことなので、自分ではもう何とも思っていませんし、験のいい場所というようなことも思っていません。新大関の場所ということよりも、世の中がちゃんと落ち着いてから取りたいなという気持ちはあります。

 

ーー1場所中止になって、精神的肉体的に、調整は難しいのでしょうね。

朝:七月場所までの時間を、どういうふうに使っていくのか。自分で勉強していくときではないでしょうか。

七月場所はテレビで応援してくれる人たちに頑張っている姿を見せたい

稽古は自分の部屋だけ。「てっぽう」をする朝乃山(6月2日・東京墨田区高砂部屋)

 

ーー七月場所は、無観客で、通常よりも2週間遅れて、国技館での開催です。抱負はいかがですか。

朝:開催できたら、私たち力士は、テレビの前で応援してくれる人たちに頑張っている姿を見せて、見てくれる人たちもコロナに負けないように頑張ってほしいですね。

 

ーー責任ある立場で臨む思いですね。

朝:番付が下の力士には負けられない、という気持ちを一五日間持ち続けて戦いたいですね。

 

ーー精神的には大丈夫ですか。外出もままならない日が続いている中で。

朝:新型コロナウイルスが広がっていなければ、この時期は新大関のお披露目やあいさつ回りで忙しい時期じゃなかったかと思います。逆に今は相撲に集中できているし、稽古以外の時間は部屋でごろごろしたり、相撲の映像を見直したりしてリラックスしています。精神的な問題はないです。

 

ーー前向きに考えていますね。ただ富山にはずっと帰れずにいるんでしょうね。

朝:2月に後援会のパーティーが富山であって、それ以来帰っていないですね。

 

ーー富山の皆さんにもテレビの前で姿を見てもらいたい。

朝:富山の人がいちばん楽しみにしてくれていると思いますので、地元のためにも頑張っている姿を見せたいですね。

 

ーー春場所から七月まで通常の本場所が開催されず、お客さんと接することができないですね。

朝:ファンの人との交流ができないのは寂しいですし、今まで歓声と拍手を受けて15日間戦ってきたので、それが急になくなったのは寂しいです。その分テレビでしっかり見てもらいたいですね。

 

ーー巡業も秋まで中止となりました。

朝:本場所よりも巡業の方が、見に来てくださる人たちと交流を深めるチャンスだと思います。巡業はふだん見せられない稽古や相撲甚句などの時間もありますので、開催できないのは残念ですね。

中高生へ「これで終わりではない」 七月場所は二桁の白星が目標

春場所に大関昇進を決め、優勝した横綱白鵬とサンデースポーツ2020に出演

 

ーーことしは8月に予定されていた、全中(全国中学校相撲選手権大会)やインターハイ(全国高等学校相撲選手権大会)が中止になりました。相撲を取っている若い後輩たちに向けて言葉をお願いします。

朝:中学は全中、高校はインターハイがいちばん大きい大会で、みんなそこを目指して稽古してきたので、中止になって悔しい気持ちだと思うのですが、これで終わりではないので、今自分でできることを考えて、気持ちを切ってしまうことなく、前を見て頑張りましょう。これは私だけでなく、大相撲の力士みんなが思っていることです。

 

ーー七月場所の具体的な目標を教えてください。

朝:2桁以上の勝星を目指して頑張ります。

 

ーー優勝は?

朝:まあ新大関ですのであまり高い目標を持たず、まずは2桁勝たないと優勝は見えてこないので。それが私の答えですね。

この記事を書いた人

古橋 明尊

古橋 明尊

元NHK記者。大阪放送局スポーツ専任部長、報道局スポーツニュース部長等を務める。現在は相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」の編集担当。曙、若貴の横綱時代に大相撲取材。

関連キーワード

関連特集記事