特集 優勝争いを引っ張る髙安 好調の裏には 大相撲春場所

春場所は10日目を終えて大関経験者の平幕・髙安が幕内でただ1人全勝で、優勝争いを引っ張っている。
ここ数年はけがに苦しんだが、前頭7枚目で迎えた今場所は前への圧力ある攻めや豪快な投げなど本来の力強さが戻っている。
「こちらから押し込むという流れが連日できていて、前向きな気持ちになる。気力十分で千秋楽まで場所を盛り上げられたら」
所属する田子ノ浦部屋では1月に力士などの新型コロナウイルスの感染が確認され、髙安も初場所を休場したが、その期間を体のケアにあててきた。体重の増量にも意識的に取り組み、170キロ台半ばから183キロと大関時代に近い体重に戻した。
土俵での稽古を再開してからはあえて不利な体勢から組むなど工夫を取り入れた。さらにここ最近は長い相撲が多く、後半戦で体力面に課題が残ったことを考慮して、はやい攻めを心がけた稽古を徹底するなど相撲の幅を広げてきた。今場所はその効果もあって、前半戦は一気に前に出る相撲も見せて白星を重ねていった。
10日目は今場所初の三役力士となる小結・豊昇龍との対戦。
立ち合い、右を差されて土俵際まで押し込まれたが、髙安は左で抱えてこれをこらえた。
この後、豊昇龍の引き技などの仕掛けにも落ち着いて対応し、最後は左下手を深く差して右の前まわしをつかむ優位な体勢となって寄り切り、1分を超える勝負を制した。
髙安は内容に反省しながらも手応えも語った。
「体重が筋肉とともに増えていて腰がしっかり座っているので相手の攻めに対応できた。持てる力を使い切ってベストを尽くして春場所を盛り上げたい。千秋楽まで優勝争いを意識していきたい」
短い相撲にも、長い相撲にも強みを見せる今場所の髙安。悲願の初優勝へ、11日目からの終盤戦で、その真価が問われる。
この記事を書いた人

今野 朋寿 記者
平成23年 NHK入局
岡山局、大阪局を経てスポーツニュース部。一児の父として、子育てにも奮闘中