特集 若隆景・若元春・若隆元 ふるさと福島を思って 大相撲春場所

春場所5日目、大相撲でも珍しい3兄弟の力士が思い切りのいい相撲でそろって白星を挙げた。今場所は自己最高位となる新関脇の三男、若隆景(写真中央)と、先場所新入幕を果たした次男の若元春(写真右)、それに幕下の長男、若隆元(写真左)だ。
地元期待の星の3兄弟は福島市出身。昨夜(16日)遅く、東北を襲った地震で、福島市は震度6弱の揺れを観測した。同じ3月ということもあり、11年前の東日本大震災を思い起こしてしまうような地震だった。
大阪で開催されている春場所の5日目、最も早く取組が終わった長男の若隆元は地震について「かなり心配ですね」と答えた。さらに「大阪はあまり揺れなかったので朝起きてびっくりして。すぐに両親に連絡して『無事だ』ということで。ただ実家はちゃんこ屋なので食器とかたくさん割れて」地元の友人にも連絡を入れて無事を確認したというが、福島のことが気がかりなのが、ひしひしと伝わってきた。
春場所5日目 若元春(左)が妙義龍(右)を寄り切りで破る
妙義龍との一番を制した次男の若元春は「震災から年月がたったが、地震は怖いので心配になりました。皆さんがケガをなさらないように、ケガしないといいなと」と遠く離れた大阪から地元を気遣った。
春場所5日目 若隆景(左)が豊昇龍(右)を攻める
三男の若隆景は難敵の新小結の豊昇龍から白星。取材に対しては、ことば少なだったが、ふるさとへ強い思いを抱いている。
2月28日、春場所の番付発表。会見でふるさとへの思い、そして震災について話した。
春場所の番付が発表され記者会見する新関脇の若隆景
「年々、福島への思いが増している。震災から10年という去年の春場所で三賞を頂くことができた。ことしは震災から11年。少しでも活躍できるよう頑張りたい」
春場所5日目 若隆景(左)が豊昇龍(右)を寄り切りで下す
若隆景は新関脇の場所で、ここまで4勝1敗と好成績をあげ「一番、一番」と気負わず目の前の相撲に集中している。若元春は「できることを精いっぱいやっていくだけ」と決意を示し、長男の若隆元も「土俵でしっかり頑張る姿を見せられたら」と話した。
口数は少ないが、ふるさとに思いをはせながら淡々と話す3兄弟。白星・黒星に関わらず3人の持ち味の思い切りのいい相撲がふるさとを元気づけているに違いない。
この記事を書いた人

舟木 卓也 記者
平成25年NHK入局。令和2年秋からスポーツニュース部。
プロ野球(ロッテ)担当を経て、現在は大相撲や柔道など格闘技担当。