北の富士勝昭が斬る「大相撲春場所の優勝争いは・・・」

NHK
2024年3月29日 午前7:40 公開

御嶽海、もう1つ上の地位を狙ってほしい


〝万年大関候補〟だった御嶽海が春場所で大関に昇進した。相撲ファンからすれば、ようやくといった感じだろう。(※2022年3月9日スポーツオンライン掲載)

初場所で優勝した御嶽海(右) オープンカーに乗って笑顔  旗手は碧山

自分より上の番付で強いのが1人しかいなかったので、ラッキーと言えばラッキーな昇進であった。こんなチャンスはめったにない。さぞがし、気合いも入ったことだろう。しかもその強い一人を倒して13勝で3回目の優勝。文句なしの大関昇進であった。

特にどこが変わったということもなかったように思う。要するに周りが弱すぎた。特に大関陣はだらしない。現状の実力で2番目に強い力士が結果を出したということ。1番は言わずもがなの横綱照ノ富士。3番手以下は大関陣も含め、どんぐりの背比べだ。

春場所に向けて稽古する新大関の御嶽海

新大関はコンスタントに2桁は勝つ安定感はある。期待することはもちろん、もう一つ上の地位を狙ってほしいということ。今は横綱が1人しかいないし、既存の2人の大関はあてにならない。このチャンスを逃してはいけない。こういうものは勢いがあるうちに一気にいったほうがよい。

ことしが20代最後の1年なんだから、この1年が勝負だろう。綱とりに挑戦するだけの力はある。気を抜かずに打ち込んでほしい。

照ノ富士はしっかり治して次の場所に備えてほしい


初場所千秋楽 照ノ富士(奥)が寄り切りで御嶽海に敗れる

横綱照ノ富士がちょっと心配になってきた。初場所は序盤から相手の攻めを受ける相撲が目立っていた。場所前からあまり稽古ができていないという話は聞いていたが、最後まで優勝戦線を引っ張ったのは第一人者として立派であった。

全勝優勝した九州場所の相撲ぶりを見たら、あと2、3年は安泰かと思ったが、春場所あたりは難しいかもしれない。場所中にかかとを痛めたという話が伝わってきたが、両膝に〝爆弾〟を抱えているだけに患部をかばっていると、体のあちこちを痛めるものだ。しっかり治して次の場所に備えてほしい。

阿炎は大関も近いのではないか


初場所千秋楽  幕内土俵入りを行う阿炎

阿炎の活躍にはびっくりした。力士というものはこうも変われるものなのか。

2場所連続で優勝争いにも絡んで12勝と流れがいい。今度の春場所で優勝でもしたら一気に大関とりのムードも出てくるのではないか。幕内に復帰した九州場所よりもさらによくなっていた。これは大関も近いのではないか。

春場所の番付表を指さす新関脇の阿炎

あれだけ飛んだり跳ねたりしていたのが、相撲に力強さが出てきた。上背もあるのに突っ張りながら頭でも当たるというのは、なかなかできないものだ。リーチは長いが、おそらく非力であるため回転の速さでそれをカバーしている。

春場所の優勝争いは照ノ富士次第、二番手は御嶽海


2年ぶりとなる春場所の優勝争いは、照ノ富士次第といったところか。初場所では不安を残した1人横綱が、どこまで体調を整えて臨むことができるか。

初場所三賞獲得の各力士 (左から)殊勲賞の阿炎、敢闘賞の琴ノ若、技能賞の御嶽海

2番手はやはり新大関御嶽海だろう。2人のカド番大関は名前を挙げることができない。ここのところの流れでいくと、阿炎が初賜盃を抱く可能性もないとは言えない。豊昇龍あたりも旋風を吹かせるかもしれない。

相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から