どこがスゴイの?はじめてのメッシ、ロナウド、ネイマール

サッカーファンならずとも、この3選手の名前を一度は耳にしたことがあるのでは?そのスゴさを知れば、必ずや「ちょっと見てみたい」と思うはず。そこで、30年近くにわたりサッカー実況を手がけてきたフリーアナウンサー・八塚浩さんが、3選手の「ココが本当にスゴすぎる!」を解説してくれました。(※2018年6月6日スポーツオンライン掲載)

メッシ=敵が多ければ多いほど生き生きする!


まずはアルゼンチン代表のメッシ選手。年齢は30歳。所属するクラブチームはスペインのバルセロナです。八塚さんは、メッシのすごさは“敵に囲まれたときにあり”と言います。

「普通なら敵の少ないところを攻めますよね。でもメッシは敵が密集するところをあえて突破します。それにより相手チームは大きな混乱に陥り、結果ゴールが生まれやすくなるのです。

ただ、メッシとはいえ3人、4人の敵を突破するのは簡単ではありません。そこでメッシは味方を使います。味方にポンと小さなパスを出し、ボールを受けた味方はボールを止めずに、既に全速力で敵の輪を突破しているメッシにダイレクトでパスを出す。ときには最初にメッシがポンと浮かせたボールを味方に出し、味方が頭でメッシに返すというパターンもあります。

そのバリエーションはいろいろですが、いずれにせよメッシは周りに敵がたくさんいるほど真価を発揮します。だから敵の密集が“大好物”なんです(笑) ぜひ、メッシがその卓越したスピードとテクニック、戦術眼を駆使して敵の大群を突破するさまに注目してみてください」

メッシのシュートはコントロールショット


また八塚さんは、メッシのスゴさはシュート技術にもあると話します。

「フルパワーでシュートを打つことはめったになく、ほとんどがチョンと合わせるだけだったり、コロコロ転がしたりの“コントロールショット”なんです。PKでさえネットを突き破らんばかりにフルパワーで蹴り込むロナウドとは対照的です(笑)」

なぜメッシは思いっきり打たないのか。それはゴールの確率を最大限に高めるためです。シュートの強さは最小限に抑え、その分確実にゴールの枠の中に入れ、コースをきっちり狙う。だからあれだけたくさんのゴールがとれるのです。ただ、それを実行するには高い技術が必要です。メッシは『シュートはゴールへのパスなんだ』ということをわかりやすく教えてくれます。

ロナウド=ゴールを奪うために進化した究極の肉体


続いてはロナウドです。他にも同名の有名選手がいるので、クリスティアーノ・ロナウド、C.ロナウドとも呼ばれます。ポルトガル代表で、年齢は33歳。所属クラブはスペインのレアル・マドリード。世界最高のサッカー選手を決める「バロンドール」という賞を、ここ10年でメッシと5回ずつ分け合っている選手です。

ロナウドのスゴさはズバリ、肉体です。サッカーが詳しくても詳しくなくても、脇腹も含め8つに割れた腹筋には度肝を抜かれます。個人トレーナーを雇って日々身体を鍛えていて、自身も筋トレが大好きなようです。この人くらい自分の肉体にお金と手間暇をかけているサッカー選手はいないのではないでしょうか」

「もちろん肉体美だけではありません。その驚異的な身体能力は試合でもいかんなく発揮されます。シュートは強烈で、足も速く、ヘディングも強い。加えてテクニックも非常に高い。持って生まれた身体能力はメッシを遥かに凌駕(りょうが)しています」

圧倒的な身体能力があってこそのワンタッチ


中でもプレーの見どころは、「ワンタッチゴール」だと言います。

「以前は自分でドリブルを仕掛けて突破する場面が多かったのですが、近年はすっかり、自分のところにきたボールを止めずにそのまま蹴り込む“ワンタッチシュート”でゴールを決めるスタイルが定着しました。それでゴールをとりまくっています。言い方は悪いですが、いよいよ“究極のゴールマシーン”へと最終進化を遂げた印象です。ワンタッチであれだけゴールを決められるのも、圧倒的な身体能力があってこそでしょう。

私は中継の仕事を通じて実際に本人を見たことがあるのですが、実は身長もとても高い。187センチもあるんです。にもかかわらず、高身長の選手にありがちな無骨さや緩慢な動きは全くない。走る姿なんかを見ると、完全に170センチの選手くらいの俊敏性です。この身長で素速くて跳躍力も抜群なのだから、そりゃヘディングでも無敵なはずです」

ネイマール=まるでサンバを踊っているようにエレガント


3人目はネイマール。ブラジル代表で年齢は26歳。所属クラブはフランスのパリ・サンジェルマンです。この選手のスゴさは、「サーカスのような技の楽しさ」にあると八塚さんは言います。

子供が見て最も真似をしたくなるのは、まぎれもなくこの人でしょう。とにかく技が曲芸的で楽しい。ボールを踏んでコントロールしたり、ちょっとボールを浮かせたり、相手の股間を抜いたり。

とりわけ、足の外側と内側でボールを高速で2回触って相手を抜く「エラシコ」という超絶技巧にはびっくりさせられます。またパスを受ける場面一つとっても、あえて遠い方の足を背面から出してボールを受けたり、ときには敵をあざ笑うかのように背中で受けたり、見ていて本当に楽しいです」

いずれネイマールの時代が来る


そんなネイマールのプレーは、ブラジル人らしく、ある音楽にたとえられます。そう、サンバです。

その動きはリズミカルで、エレガントで、まさに踊りを踊っているようです。メッシにもロナウドにも、踊りのようなリズムはありません。たとえるならメッシはコチッコチッと動き続ける精密機械で、ロナウドは高性能のブルドーザーでしょうか。ここ10年、バロンドールはメッシとロナウドの2人が独占していますが、いずれネイマールが何年も続けてとる日がやってくると思います」

そんな3人がそろって出場する2018 FIFA ワールドカップ ロシア大会。こんなチャンスはこの先2度とないかも知れません。

「この3選手は普通に見るだけでも明らかにスゴイのですが、ポイントを絞って見ることで、より“怪物”ぶりがわかるはずです。ぜひこんなポイントを頭に入れて見てみてください」

【八塚 浩(やつづか ひろし)】

1958年生まれ、千葉県出身。立教大学卒業後、ラジオ福島に入社しアナウンサーとなる。88年に独立し、91年にイタリア・セリエAでサッカー実況のキャリアをスタート。以降、国内外のサッカー実況を数多く手がけ、サッカー実況としては日本屈指の実績を誇る。現在はセリエA、イングランド・プレミアリーグ、UEFAチャンピオンズリーグ、Jリーグなどの実況を担当。サッカー以外のスポーツ実況やナレーション、MCなども行う。