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特集 小結・貴景勝 22歳の初優勝を語る!

相撲 2018年11月27日(火) 午後3:50

大相撲九州場所で初優勝を果たした、小結・貴景勝が千秋楽当日にサンデースポーツ2020に生出演。
3横綱1大関休場という場所を、大関・髙安との激しい優勝争いで大いに盛り上げた22歳。所属する部屋の消滅、移籍など大きな変化があった中、千秋楽まで得意の突き押し相撲に徹してきた15日間を終えての思いを、大越健介キャスターが聞きました。
(サンデースポーツ2020 11月25日放送から)

 

弱い自分と向き合った優勝

 

大越健介キャスター(以下、大越)
幕内最年少ながら見事初優勝を飾られました、小結・貴景勝関です。優勝おめでとうございます。

 

小結・貴景勝 関(以下、貴景勝)
ありがとうございます。

 

大越
優勝決定から4時間余り経ちましたけれども、少し落ち着きましたか。

 

貴景勝
そうですね。食事も頂きまして少し落ち着きました。

 

大越
千秋楽は目まぐるしい一日だったと思いますが、私も土俵下できょうの優勝力士インタビューを聞いていたんですが、その中で、「弱い自分というものが出てきて、それとどう向き合うか」ということをおっしゃっていました。それが非常に印象に残ったんですが、弱い自分というのは、どういうものなんですか。

 

貴景勝
十四日目、自分が優勝争いの先頭に立っていて負けました。(注:大関・髙安に敗戦)。やっぱり取組が終わった後は負けた悔しさもありましたが、千秋楽に向けても気持ちの切り替えもしなければいけない。その中で「弱い自分」、楽をして勝とうと思っている自分の中の弱い部分を、抑える自分の「意志」というか、抑えられる平常心を持っていくことはすごく難しかったです。それがこの1日で一番きつかったことかなと思います。

 

大越
昨晩は寝られたんですか。

 

貴景勝
寝られたんですけどやっぱり、寝てる中でも何か考えてしまう部分はあったと思います。

 

上位陣を圧倒した鋭い立ち合い

大越
その貴景勝関の今場所を振り返ってみたいんですが、まず初日ですね。対戦相手がひとり横綱の稀勢の里関でした。非常に激しい攻防で、常に常に前に出て、そして決まり手は「はたき込み」。この相撲、いい相撲でしたね。

 

 

貴景勝
もう、横綱とやれることに感謝して、胸を借りる気持ちで、作戦なしで思いっきり行こうと思いました。

 

大越
そして、九日目、大関、栃ノ心関との一番。攻め続けた会心の相撲だったんじゃないですか

 

貴景勝
はい。まわしを取られてしまうともう相撲にならないので、自分の攻撃だけ考えていきました。

 

大越
常に弱い自分との戦いでもあったということでしたが、振り返って見て、特にとにかく立ち合いが非常に鋭かったという印象があるんですけど、ご自分で評価されるとどうですか。

 

貴景勝
もう小学校のころから立ち合いの当たりと、突き押しだけしかやってこなかったので。自分の持ってる、武器はそれしかないので。土俵ではもう余計な事は考えませんでした。

 

大越
なるほど、まさに無心で臨むことができた場所だったと。

 

貴景勝
自分では、まだまだだと思います。

 

現師匠、そして前師匠への感謝

 

大越
貴景勝関は、場所前に稽古の環境が大きく変わりました。貴乃花部屋が消滅し、貴景勝関はじめ力士たちは全員所属が千賀ノ浦部屋に変わりました。新しい親方は、貴景勝関をはじめとする新しい弟子たちをどんな風に迎えてくれましたか。

 

貴景勝
非常に温かく迎えていただきました。はい。もともと、前の部屋でもお世話になったことのある師匠だったので。

 

大越
あまり、戸惑いを感じなかった。

 

貴景勝
そうですね。すぐ環境にも慣れることができました。

 

大越
そして一方、高校卒業以来4年間指導を受けてきた、貴乃花さんは相撲協会を退職されました。優勝の報告はされましたか。

 

貴景勝
はい、電話で報告しました。

 

 

大越
貴乃花さんに指導を受けた4年間では、一番教わったのはどんなことだったと思いますか。

 

貴景勝
僕が一番教わったのは、相撲の「技術」よりも「本場所を戦い抜くためにはどういう事を普段からしなければいけないのか」ということです。普段の生活であったり、食事や睡眠の大切さ。そういうことが強く自分の中では頭に残ってます。

 

大越
土俵上の振る舞いも非常に淡々としてらっしゃいますよね。そのあたりも教わった事のひとつでしょうか。

 

貴景勝
そうですね。気持ちを、上げもせず下げもせず、淡々とやることが大事だと普段から教わってきました。

 

厳しく育ててくれた父

大越
先ほど、小学生の時から突き押しで、離れて取る相撲が自分の身上だという話がありましたが、実は中学生の時、中学生横綱になられた時の映像がありました。

 

 

大越
取組で相撲を取っている相手が、今の阿武咲関なんですね。この時は投げで勝ちました。今の相撲はこの時からかなり進化しているはずですが、どんなところが進化していますか。

 

 

貴景勝
基本はそんなに変わらないんですけど、この時は「まわしを取ってしまった」んです。今はこの時よりさらに「まわしを取っちゃいけない、相手にも取らせたら駄目だ」という事を考えています。やっぱりプロの上位の方になると、相手の体の大きさが全然違うので。

 

大越
そして、当時からお父さんと「親子鷹」のように相撲に取り組んできたという話も聞きました。やっぱりお父さんの影響、教えというのは胸にあったんですか。

 

貴景勝
はい、小さいころは怖かったんで。とにかく、「やれ」って言われたものをやるっていう感じでした。

 

大越
きょう、お父さんが話した貴景勝関へのメッセージが実はあるのでご覧いただきましょう。

 

 

父・佐藤一哉さん

優勝したからほっとするのか、それともさらに頑張ろうと思うのかは、本人次第です。
あれ(貴景勝)が普段言っている事ができるようであればね、1月場所もきちっと成績残せると思いますけどね。残せないんだったらあれ(貴景勝)はもう、嘘つきですね。

 

 

大越
厳しいですね!真剣な表情で見てましたね。

 

貴景勝
そうですね・・・(笑)。

 

 

大越

怖いお父さんですか。

 

貴景勝

普段は全然優しかったですね。もう相撲のことになると、怖かったですね。

 

初場所でも自分の相撲を

大越
さあ来場所、初場所はですね。いよいよ大関取りということも視野に入ってくるかもしれない場所になります。いつもの平常心で相撲ができなければ嘘つきになるんだと、お父さんの厳しい言葉もありました。どんな心持ちで1月の場所に臨まれますか。

 

 

貴景勝
来場所は、そんな簡単にうまくいかないと思っています。そのうまくいかない中でも、これからにつながる何かをつかめるように、淡々と、黒星が出ようが、一生懸命に「自分の信条とする相撲」を貫ければいいなと思ってます。

 

大越
今日は本当にありがとうございます。そしておめでとうございました。

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