特集 王鵬 元横綱 大鵬の孫として 大相撲初場所
初場所11日目の1月19日。新入幕の王鵬が勝ち越しをかけた一番に臨んだ。王鵬にとって、この日は特別な日だった。祖父である昭和の大横綱、大鵬、納谷幸喜さんの命日。
十両の荒篤山との一番は、立ち合いで押し込むもいなされて体勢が崩れ、最後は突き出された。白星、そして勝ち越しはならなかった。
この日、どんな思いで土俵に臨んだか聞かれた21歳は「毎年聞かれるが、一番も負けていいと思って相撲を取っていない。自分のやることに理由はつけたくないので」と語った。
大鵬の孫として17歳で角界に入ったときから注目されてきた王鵬。7日目、琴ノ若との初顔合わせの一番も祖父が横綱どうしの対戦としてメディアに取り上げられた。
琴ノ若の祖父、琴櫻は大鵬とも対戦した元横綱だ。立ち合い、相手の力強い当たりを受けて上体が起きあがってしまい、最後は肩透かしで黒星を喫した。
取組のあと、王鵬は「自分のことだけで精いっぱい。集中して自分の相撲を取っていきたい」と話した。注目を集める王鵬をもう1人の元横綱がじっと見つめている。白鵬の間垣親方だ。
間垣親方は現役時代、生前の大鵬、納谷さんのもとを、たびたび訪れ、横綱としての心構えを学んできた。
12日目、王鵬と平幕・千代丸との一番。王鵬はまわしを取られて攻め手を欠き、そのまま寄り切られた。
勝ち越しを目前に連敗し、元気なく引き上げる王鵬に間垣親方が声をかけた。
そのことを聞かれると、王鵬は「いつも見てくださっている。『抱え込まれたあと、はず押しでいけたらいいよね』と言われた」とアドバイスを受けたことを明かした。
自分と同じ元横綱の孫である対戦相手がいて、自分の相撲を見続ける元横綱がいる。王鵬の土俵人生はまだ始まったばかりだ。
この記事を書いた人
持井 俊哉 記者
平成26年NHK入局
北九州局を経て、スポーツニュース部。小1から剣道をはじめ、現在、5段。「打って反省、打たれて感謝」をモットーに何事にも謙虚に誠実にチャレンジすることを目指す。