ストーリーサッカー

なでしこジャパンは、輝きを取り戻せるのか?

2020-03-13 午後 04:27

なでしこジャパンは、輝きを取り戻せないのか?東京オリンピックに向けた強化の一環として臨んだ3月5日からのアメリカ遠征はスペイン、イングランド、アメリカという世界の強豪に力負けし3連敗という結果でした。

金メダルを目標に掲げる本番まで4か月、この敗戦は、限られた期間の中で、強化のあり方をもう一度見直す時期に来ていることを示しています。

特別な日の試合 ミスから失点が続く

東日本大震災が起きた9年前、なでしこジャパンは、女子ワールドカップで初優勝し日本の人たちを元気づけ、復興の象徴となりました。奇しくも今回の遠征の最終戦となった女王、アメリカとの試合は現地時間の3月11日に行われ、選手たちも特別な日の一戦に強い決意で臨んでいました。

 

フリーキックで先制されたなでしこ

 

しかし、開始直後から前線から激しいプレッシャーをかけられると守備で慌てたすえ、ゴール前で反則をとられ、先制点となる直接フリーキックを決められました。さらに2点目もこの大会で続く守備陣のミスから失いました。

課題は判断のスピード

遠征を帯同取材するなかで日本に不足していると感じたのは『判断のスピード』です。対戦相手もなでしこジャパンの戦術を研究し、日本が守備から攻撃を組み立てる場面ではボールの奪いどころを決めて、早め早めにプレッシャーをかけてきました。

 

 

苦し紛れの横パスなどをとられ、失点のピンチにつながるケースも少なくありませんでした。攻撃でも前線までボールを運んだあと、サイドのスペースなどを狙うパスが少なく、選手が立ち止まって足元でボールを受けるシーンなどが多く見られました。スピードがなく、奇をてらうパスも少ない攻撃では相手を揺さぶることもできません。ペナルティーエリアで持ち込んでシュートを打つ回数は限られていました。

 

欧米のチームよりもパワーやスピードで劣る日本は、これまでそれぞれの選手がポジショニングを工夫したり、相手の考えを先読みして動いたりすることで勝機を見いだしてきました。その後、欧米のチームも日本と同じような組織で連動するサッカーを磨いたことで、「判断のスピード」も求められるようになっています。それができていないのです。

選手の成長に期待して…

なでしこジャパンを指揮する高倉麻子監督は、選手の自主性を尊重したチームづくりを目指し、ピッチの上での約束事を極力減らしてきました。試合中に起きた変化に対応する力を養うためにあえてさまざまなパターンを教え込まない手法をとってきたのです。

 

高倉麻子監督

 

もちろん、試合前には相手チームを分析し、定石としている布陣や選手の特徴は伝えていますが、「選手たちにみずから考えさせなければ判断力は身につかない」と繰り返し話し、たとえ結果を出せなくても選手の成長を信じ続けてきました。

同じ絵をみられない選手

ただ、いまチームは、この大会でも相手がフォーメーションを変えるとリズムを崩すなど柔軟な判断ができているとは言えません。選手たちもことあるごとに『共通意識』ということばを使っていますが、現実的には、選手たちが持つ引き出しは多くなく、同じ絵を見られていません。

 

 

そのため、1つの手が封じられると、焦ってミスが続く悪循環に陥ります。なでしこジャパンで成功体験がない選手も多く、何が正解なのか迷いながらプレーしているようにも見えました。ピッチでは選手たち自身が考えて、答えを見つけ出さなければいけないこともあります。オリンピックまで4か月。今回の敗戦は、限られた期間の中で強化のあり方をもう一度見直す時期に来ていることを示しています。

収穫は"エースの自覚"

後半、ゴールを決める岩渕選手

 

一方で、収穫がなかったわけではありません。それは、エース、岩渕真奈選手の存在です。今大会でも初戦のスペイン戦では、サイドからのロングボールに完璧なタイミングで足を伸ばしてゴールを決めたほか、後半から出場した第3戦・アメリカ戦でもゴール前でボールをキープして正確なシュートで1点差に迫るゴールを奪いました。

ドリブルでゴールに迫る力も見せてチームに攻撃のスイッチを入れ、世界の強豪相手にしっかり渡り合う能力を示しました。

 

カーリー・ロイド選手

 

アメリカ代表としてワールドカップに4大会連続で出場しているベテラン、カーリー・ロイド選手に「若いチームメートが迷っていたらどんな声をかけますか」と質問すると、ロイド選手は「私にどんどんボールを回しなさい。ゴールを決めてあげるからと言うわ」と答えてくれました。


若い選手が多いなでしこジャパンが強くなるためにはロイド選手のように少しぐらい強引にでもチームを引っ張る存在が必要です。

 

 

岩渕選手にはその資格が十分にありますし、本人もリーダーシップをとらなければいけないという自覚が芽生えています。迷えるチームをぐいぐいと引っ張る存在になることも、なでしこジャパンが輝きを取り戻す大きな要素です。今回の結果を糧にしてチームを変えていければ、輝きは取り戻せるはずです。

この記事を書いた人

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鈴木 笑 記者

平成23年NHK入局。函館局 札幌局 報道局遊軍プロジェクトを経て、スポーツニュース部サッカー担当。

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