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特集 北の富士勝昭が斬る 令和4年の大相撲を展望! 期待の力士は?

相撲 2022年1月6日(木) 午前10:15

照ノ富士は2桁の優勝回数は達成するだろう

一年納めの九州場所を全勝優勝でしっかり締めた照ノ富士は立派だった。これで年4回の優勝(幕内優勝は計6回)。優勝インタビューでは、令和4年の目標として2桁の優勝回数を目指すと言っていたが、阻む者は現れそうにないので達成はするだろう。

 

優勝インタビューで笑顔の照ノ富士(令和3年九州場所千秋楽)

 

新横綱場所に比べても強くなっているし、精神的にも成長していると思う。コロナ禍で全体的に稽古不足が言われる中で、稽古は相当やっているに違いない。体つきを見れば、一目瞭然だろう。両肩のあたりの筋肉のつき方も違ってきた。いちばん強い人が、いちばん稽古をやっているということだ。

次の大関は御嶽海しかいないだろう

次の大関と言うと、何だかんだ言っても御嶽海しかいないだろう。一応、去年(令和3年)の九州場所で11番は勝っているが、負けるときの相撲が本当によくない。強いときはめっぽう強いが、負けるときは気の抜けたような相撲で負ける。照ノ富士戦も、まったく相撲にならなかった。

 

ぶつかり稽古をする御嶽海(令和3年12月)

 

初場所で三役在位が連続10場所目。通算でも28場所目だという。優勝はすでに2回もしているのに大関になれないのは不思議だが、実力があるのは間違いない。それでも三役で、2場所連続で2桁勝ち星はまだないらしい。信用しては何度も裏切られているが、ここはもう1度、期待することにしよう。


阿炎はよく頑張ったが、上位に番付を大きく上げる初場所が正念場だろう。九州場所は久しぶりの幕内の土俵で緊張感を持って取っていたと思う。この緊張感をこれからも持続できるかどうか。人間、そう簡単に変われるものではないので、真価が問われるのは次の場所だ。相撲は強くなっているし、突っ張りも間違いなく、以前幕内にいたころよりも威力が増している。

 

阿炎が突き倒しで宇良を破る(令和3年九州場所11日目)

 

何と言っても引いたり叩いたりがなくなったのがいい。勝った決まり手も突き出し、突き倒しが多いのは、最後までしっかり突き切っている証拠。こういう相撲を上でも取り続けていけたら大関もいけるだろう。〝化ける〟可能性もある。ただし、繰り返しになるが、そんなに急には変われないものだ。徐々に実績を積んでいってもらいたい。

朝乃山の出場停止はつくづく痛手

照ノ富士と他の力士との差がまた一段と開いてしまったような気がしてならない。令和4年はさらにこの実力差が開きかねない。

 

三賞受賞力士と写真に納まる照ノ富士(令和3年九州場所千秋楽)

 

貴景勝をはじめ、三役や平幕上位にも御嶽海、大栄翔、隆の勝ら、実力者はそろっているものの、押し相撲タイプは波があって2場所、3場所と続けて好成績を残すのはなかなか難しい。

 

そうなってくると、朝乃山の出場停止はつくづく痛手である。照ノ富士に対抗できるとしたら、彼しかいないだろう。

 

隆の勝と攻め合う朝乃山 (令和3年夏場所11日目)

 

1人横綱の対抗馬不在の現状を思うにつれ、朝乃山がいたらと思わずにはいられない。右四つのスケールの大きなあの取り口は、本当に魅力的だった。照ノ富士に次ぐ横綱候補と思っていただけに、本当に残念だ。

 

あと3場所休むと、復帰する次の名古屋場所は三段目の下位あたりからの再スタートになるだろう。そこからはい上がって幕内に戻り、三役に返り咲くまでには土俵に復帰してから、さらに1年以上はかかるだろう。


いちばん力の出る時期を棒に振り、仮に大関に返り咲いたとしても早くて30歳手前。無駄に時間を費やすより「もうこれくらいでいいだろう」という声は協会内から上がってこないものだろうか。処分が短縮されたとしても、世間から文句が出ることはないだろう。現に私の周りは「もういいんじゃないか」という意見が圧倒的に多い。

 

 

相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から

 

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