特集 宇良「三役に上がらないとダメ。進化していかないと」大相撲初場所を前に語る

「限りなく強くなりたい。そう思っています」
宇良は九州場所で肩透かしを4回決めるなど活躍して初の三賞、技能賞を受賞した。
電話でインタビューする刈屋元アナウンサー
刈屋富士雄元NHKアナウンサーが幕内上位での不安や必殺技が誕生するまでの秘話を電話で聞いた。
三役に上がらないとだめ
九州場所千秋楽 初の技能賞を受賞し笑顔の宇良
Q 初場所は前頭2枚目に上がりました。是非、三役を狙いましょう。
そうですね。三役に上がらないとだめだと思います。
Q 三役は1回だけでなく、定着する力はあると思います。
いや、それはないですよ。
Q 九州場所の技能賞が実力を証明しています。三賞は入門したときからの夢と話していましたね。
三賞もらえると思わなかったです。
肩透かしを知られてしまった
九州場所13日目 肩透かしで逸ノ城を破る
Q 九州場所では肩透かしを4回も決めましたが、これまでないことですね。
そうです。肩透かしは「少しみんなに知られてしまったかな」と感じています。少し目立ってしまいました。これまでは翠富士関の陰に隠れていたのですが。
Q 伝家の宝刀の肩透かしが白日の下にさらされてしまったわけですね(笑)。
本当はイメージを持たれないままの方がよかったです。
技は狙ってできるものでない
九州場所6日目 足取りで髙安を破る
Q 関取は足取りがあるし、腕をひっかけられるし、それで相手がひっかけられるのがいやで抱え込んだら肩透かしがあります。上位で戦える武器がいっぱい出てきました。
そうですね。あとはまわしを取ることを覚えていきたいです。
Q あと何か隠している技はないですか。
もうないですよ。技は狙ってできるものでないところがありますね。
Q 相手が肩透かしとか足取りとかいろいろな技を警戒してくれて相手が手を握られるのを嫌がってくれれば形になりやすいです。
そうですね。形になれれば技を掛けやすくなりますね。
もっと身長が欲しかった
Q 1発の当たりがあることを見せると、全然違ってきます。前半戦に1発と後半戦に1発です。これであと3年くらいは幕内で戦えますよ。
3年ですか。考えたらすごいですね。関取として30場所が目標と言っていますので、30場所は務めたいです。あと2、3年ですか。長いですね。
Q 今回、自信をつかんだと思っていました。
全然つかんでいませんよ。幕内は強いですね。かなり強いと感じています。本当に押しても動かないですね。重いですし。もっと身長が欲しかったと思いますね。
九州場所11日目 突き倒しで阿炎に敗れる
Q あと何センチくらい欲しかったですか。
今1メートル72センチですが、最低でも1メートル85センチは欲しかったですね。最近思うことですが、相撲は体重より身長です。
Q どういうときに思うのですか。
下から上に押し上げる力が変わってくるじゃないですか。私は突き放す能力が高くないので、下からハズを決めて押すには身長が足りなかったと思います。両手を相手の脇に入れて万歳させたとしても起こし切れなかったりします。その点若隆景関は、ハズで起こせるのです。それで持っていける若隆景関がうらやましいです。
進化していかないといけない
Q 身長がない中で、どう相撲を取っていくかです。潜る意識を持つことです。昔低く潜る取り口から「潜航艇岩風」と言われた力士がいました。若い人は「なんだそれ」と言うでしょう。それなら潜水艦から「サブマリン宇良」ですか。
「サブマリン宇良」。あまり格好よくないですね(笑)。しかし今の相撲も通用しなくなるので、変えていかないといけないですね。
2020年 大相撲11月場所5日目 居反りで旭秀鵬を破る
Q これまでは「反り技の宇良」のイメージがありました。今度は新しい宇良像を作っていかなければいけませんね。
やはり進化していかないといけないと思います。もう29歳なので、どう変われるのかなと思いますね。
Q けがから復活してきて体も大きくなっているし、前に出る力もついています。反り技はたまに見せるだけにして、潜って下から足を取ったり押し上げたり、そして肩透かし(笑)。
体重を増やすのに限界を感じてきました。これまでは動かなくていいと思って体重を増やしていましたが、肉体的に限界と思っています。九州場所は140キロでした。
「サブマリン宇良」を想像しなければ
Q 舞の海さんとか智乃花さんとか、小柄だった人たちも三役まで上がっているわけです。宇良関の九州場所の活躍を見ると「これは間違いなく三役にいける」と思いますよ。
私も勝ちたい気持ちはずっとありますよ。それでもいまだに信じられないというか、そんな感じなんです。
2021年12月 稽古で四股を踏む宇良
Q 今の上位陣は照ノ富士関が1人だけ強いのです。だから優勝のチャンスも何場所かに1回巡ってくるかもしれないんです。
稽古、頑張って励みます。どうしたら強くなれるのかと思っています。ここからどうやって強くなればいいかなと考えます。
Q 潜る「サブマリン宇良」のいろんなバリエーションを今作っていけば三役定着、大きなチャンスが巡ってきます。
「サブマリン宇良」を想像しなければいけませんね。
30歳を越えても実力を伸ばしていきたい
九州場所8日目 幕内土俵入り
Q お客さんも増えるようになって、満員の中で結びを取る、そういう雰囲気の中で相撲を取って思い切ったバリエーションの技を見せるんです。
そうですね。応援してくださる方には「上を目指せ」とよく言われるのですけれども、私としてはよくここまで頑張ってきたと思っています(笑)。
Q ここからですよ。ここから。ようやく今舞台に立ったのです。
いつになったら「もう十分だよ」と言ってもらえるのかなと思っています。
Q だめ。だめ。まだ早いです。
何がゴールなのかなと思っています。
Q ゴールはないですよ。もう限りなく強くなりたいという気持ちですか。
はい。そうです。限りなく強くなりたい、そう思っています。
Q 三賞を獲得したので次は三役ですよ。身近な目標を積み上げていって1回優勝しちゃってもいいかもしれない(笑)。
いやー。どうですかね。厳しい世界ですよ。
Qそういう事を言いながらコツコツと階段を登っていくのでしょうね。
やるべきことは積み上げているつもりです。
Q そうして積み上げたところに技能賞があったのですね。
30歳を越えても実力を伸ばしていきたいですね。
Q 伸びていきますよ。大丈夫です。あと5年は伸びます。そういうふうに体を作っていますね。じゃあちょっと「サブマリン宇良」でいきますか(笑)。
ははは。頑張ります。
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