特集 カーリング世界最終予選 女子代表ロコ・ソラーレ 北京オリンピックへの思い

オランダ・レーワルデンで行われている『カーリング北京オリンピック世界最終予選』。日本は残念ながらミックスダブルスでは北京オリンピックの出場枠をつかむことは出来ませんでした。
男子・女子も現時点では出場枠を得ておらず、この世界最終予選の狭き門を勝ち抜かなければオリンピックへの道は開けません。独特の緊張感があるというこの大会、それぞれの種目に出場する日本代表を紹介します。今回は、女子日本代表のロコ・ソラーレです。
再びオリンピックの舞台へ
2018年 ピョンチャンオリンピックで銅メダル
今回の世界最終予選に出場する女子日本代表は『ロコ・ソラーレ』。ピョンチャンオリンピックでは銅メダルを獲得、試合中でもとびっきりの笑顔でプレーする選手たちの姿を鮮明に覚えている方も多いかと思います。今回は最終予選から2大会連続のオリンピック出場を目指します。
今月上旬、最終予選に向け日本代表の選手たちはスイス・ルツェルンで最後の合宿を行っていました。その合間に、オンラインでロコ・ソラーレの選手たちにインタビューすることができました。
まず、それぞれのメンバーのパーソナリティーをチームメイトに伺いました。
(左から)吉田 夕梨花 選手、吉田 知那美 選手、鈴木 夕湖 選手
▼吉田 夕梨花 選手は?
「夕梨花は本当にリードっていうポジションの人そのものという感じで、良く周りを見ていて本当にいいところで的確な言葉をかけてくれるし、すごく気持ちの優しい子。私がちょっと困っていたりするとすぐに助け舟を出してくれます」(石崎琴美選手)
▼鈴木 夕湖 選手は?
「試合中も試合以外の所でもチームのムードメーカー的なのが夕湖。日本代表決定戦の時に2敗して追い込まれたときにすごくチームの雰囲気を良くしてくれた言葉をひと言声かけてくれたり、チームが若干暗い雰囲気になってしまったとき、いつも夕湖がきっかけでチームの雰囲気を変えてくれたり、そういうありがたさ、ポジティブさを常に夕湖は持っているし、チームの中でも一番努力家」(藤澤五月選手)
▼吉田 知那美 選手は?
「ちなは本当に発するひと言ひと言が胸に響く、チームの方向性を決めてくれるようなことを常に発言してくれるので、ミーティングでのちなの言葉にいつも救われています」(鈴木夕湖選手)
藤澤 五月 選手
▼藤澤 五月 選手は?
「さっちゃんはとても責任感があって、本当に『ザ・スキップ』。本当に人にやさしく自分に厳しい人で、その優しさから色んなことを考えすぎてしまう時もあるけれど、優しすぎるくらい優しい性格もうまく氷の上でパフォーマンスにつながるように一緒にやっていきたいです。本当に頼りになるスキップで、私はさっちゃんのキャディーでいるつもりです」(吉田知那美選手)
石崎 琴美 選手
▼石崎 琴美 選手は?
「琴美ちゃんはリード出身で同じポジションということもあって、すごく気持ちに寄り添ってくれる。やっぱりこのポジションじゃないと分からないような細かい部分、気持ちのサポートというのが本当に世界一上手、飛びぬけている人です」(吉田夕梨花選手)
いかがでしょうか。互いを思いやる気持ち、揺るがぬ信頼、連帯感… メンバーの変遷はあるものの、結成10年目を迎えたチームの固い絆を感じます。
歴史に残る日本代表決定戦 さらに強まった絆
ピョンチャンでの銅メダル獲得後注目される存在となり、日本のトップランカーとして世界ツアーで戦う一方、国内では常にマークされる存在として大事な試合で敗れることもありました。孤独や苦しさ、格好つけてロコ・ソラーレらしさを見失いかけ、カーリングをするのが苦しくなってしまった時期もあったそうです。
2021年9月 日本代表決定戦で北海道銀行と対戦
そんなチームがさらなる成長を遂げたきっかけになったのが、ことし9月の日本代表決定戦でした。北京オリンピック世界最終予選に出場するための国内の代表権をかけた、わずか2チームでの代表決定戦。相手はことしの日本選手権決勝、逆転で敗れた北海道銀行でした。
第1戦でストーンを見守る藤澤選手
先に3勝すれば国内での代表権を勝ち取るという中で、ロコ・ソラーレは2連敗。いきなり後がなくなります。次の試合までのわずか1時間余りのインターバル、流れを変えたのはロコ・ソラーレが最も重要視してきたミーティングでした。
「自分たちの方が高いショット率で作戦のバリエーションもあるのに勝てない」
「自分たちには運がないよね」
「運が味方してくれないなら、自分たちで運命変えよう!」
敵は北海道銀行ではなく、『運命』…
運命を自分たちで変えるために、ポジティブだったチームはさらに大げさに見えるほどに喜怒哀楽の感情を前面に出しました。
2021年9月の代表決定戦 第3戦 喜ぶロコ・ソラーレの選手たち
吉田知那美選手がちょっとしたミスでもいつも以上に悔しがり、本当に申し訳なさそうに謝れば、藤澤選手は決して責めずにすぐ切り替える。比較的単純なショットであっても藤澤選手が決めれば「さっちゃん、天才!」と吉田知那美選手が何度も何度も盛り立てる。フロントエンドの吉田夕梨花選手、鈴木選手も積極的にコミュニケーションを取ることで安定感が戻り、少し短めのショットも得意のスイープで何度も置きたい位置まで運びました。
流れは次第にロコ・ソラーレに傾き、大逆転の3連勝で日本代表に決定。自分たちで運命を変えてみせた、ロコ・ソラーレ。わずかに及ばなかったものの持ち味は出し切った、北海道銀行。日本カーリング史に語り継がれる、日本代表決定戦でした。
試合後のインタビューで、吉田知那美選手は笑顔と涙が入り混じった表情で「超カッコ悪かったです。自分たちはトップアスリートである必要はなくて、ロコ・ソラーレであればいい」
ロコ・ソラーレは、格好悪くても、格好良かった!この大会でチームはまた一つ成長したのです。
藤澤選手に「喜怒哀楽は最終予選でも全部さらけ出す?」という質問をぶつけると、正直な気持ちを答えてくれました。
「きっとまた崖っぷちになったらそうなるかな、と。そうならないのが一番ですけど、やっぱり苦しい時こそ、そういうのを思い出すのが大事だと思うので、初戦からそういう気持ちは忘れずに、ロコ・ソラーレらしくカーリングを楽しむ気持ちも忘れず。だけど真剣にやっていきたいなと思います。自分たち史上最高のパフォーマンスができるように頑張ります」
1時間近いオンラインでのインタビュー、選手たちが口にする言葉には強い決意と覚悟がにじみ、リラックスしながらも最終予選に向けて、技術面・精神面がどんどん研ぎ澄まされていることを感じさせました。私はインタビューしながら「早くプレーが、試合が見たい」と高揚しっぱなしでした。
最後に、吉田知那美選手の最終予選にかける意気込みです。
「勝ったり負けたりを繰り返す長丁場の戦いになるので、エネルギーレベルも気持ちの状態もチームの雰囲気も常に一定の状態を保って戦いたいです。オリンピックという大きな目標に向かって頑張れるチャンスをもらっていることを改めて感じて、最後の最後にチーム一番の笑顔を更新できたらいいなと思っています」
ロコ・ソラーレ…「太陽の常呂っ子」
オランダ・レーワルデンのリンクに大輪の笑顔の花が咲くことを信じてやみません。
ライバルは韓国とスコットランド
女子も、男子と同じく出場9チームで3つの出場枠を争います。まず、総当たりの予選リーグを行います。
日本は対戦順に、イタリア、ドイツ、チェコ、スコットランド、ラトビア、韓国、エストニア、トルコ。予選リーグ1位チームに、まずオリンピック出場枠が与えられます。予選2位と3位が対戦する「決定戦」を行い、敗れたチームは予選4位ともう1回「決定戦」を実施。「決定戦」の勝者2チーム、予選リーグ1位のチーム計3チームにオリンピック出場枠が付与されます。
日本は世界7位で韓国の3位に次ぐランキング。ライバルはその韓国と、先日のヨーロッパ選手権で優勝したスコットランド(8位)。ピョンチャンで準決勝を戦った韓国はキム ウン ジョン、銅メダルを争ったスコットランド(オリンピック時はイギリス)はイブ ミュアヘッドが率います。日本は序盤3連勝でスコットランド戦を迎えたいところです。