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特集 豊昇龍 鮮やか「一本背負い」これは柔道か? 大相撲秋場所

相撲 2021年9月20日(月) 午後10:45

秋場所9日目、両国・国技館の館内を沸かせたのは、豊昇龍と若隆景の平幕どうしの一番だった。日本武道の聖地とされる日本武道館かと思わせる豊昇龍の鮮やかな“一本”が決まった。

 

 

この一番、立ち合いから攻めたのは若隆景。得意の押っつけから上手をつかんで攻めたてる。俵につまった豊昇龍は相手の右手を両腕で抱えてひねる。ここまでは相撲だった。

 

 

豊昇龍は、この抱え込んだ相手の右手を頼りに「一本背負い」。若隆景の背中が完全に土俵につき、柔道であれば見事な「一本勝ち」だったが・・・。

 

 

行司軍配は若隆景に上がった。審判団の協議の末、行司軍配差し違えで豊昇龍の勝ち。伊勢ヶ濱審判長は「技をかけた瞬間、(若隆景の)体が飛んだ。勝負ありだった」と説明、相撲でも勝ちを認められた。

 

 

幕内で「一本背負い」の決まり手は平成29年初場所で、豪風が魁聖を相手に決めて以来、4年ぶりだ。豊昇龍、レスリングの経験はあるが、柔道の経験はない。

 

 

取組後は「よく集中出来てたんで、体の反応が良かったと思います」と大技を振り返り、土俵際での逆転については「勝負は終わるまで諦めなければ大丈夫なので」。

 

大技を決めた要因は、強じんな足腰から生まれるバネと、諦めない負けん気の強さ。これは、まさにおじさんの元横綱・朝青龍ゆずりと言える。

秋場所は途中休場から再出場

自己最高位の前頭筆頭で臨んだ今場所は、5日目の朝に発熱した。新型コロナウイルスのPCR検査を受けた結果は陰性だったため、出場を師匠に訴えて国技館にやってきた。体調が戻らず「へんとう炎」の診断で無念の休場となったが、中日8日目から再出場。復帰の一番で小結・逸ノ城を破ると「体調はすごく落ち着いている感じになってたんで。びびることとかはなかったんで」と言い切った。

 

 

気の強さが際立つ22歳の新鋭だが「変な相撲を取ると怒られる」と元朝青龍からSNSを通じて叱られるのが唯一、怖いことだと話している。しかし、ファンを沸かせたこの日の“一本勝ち”は、おじさんも目を細めて笑顔で褒めてくれるはずだ。

            

 

 

この記事を書いた人

鎌田 崇央 記者

鎌田 崇央 記者

平成14年NHK入局

さいたま局を経て、スポーツ部に。プロ野球、水泳などを担当し、格闘技担当は通算5年目

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