特集 竹田直将・智子ペアが語る カーリング ミックスダブルス 北京オリンピック日本代表決定戦

Q:いよいよ代表決定戦です。今のお気持ちは?
直将:私たちがカーリングを始めたのは1997年、長野オリンピックの前の年なんですよね。その頃カーリングはもう少しマイナーなスポーツだった気がします。大学生で帯広でカーリングを始めた時は、雪が降っていました。20年~30年くらい前は屋外でカーリングをするのはさほど珍しい風景ではなくて。そこから24年間ずっとカーリングを続けてきたんですけれども、たぶん好きで続けてきたんだろうなと思います。この24年間数えきれないくらい挑戦をしてきて、1つか2つうまくいったこともあるんですけれども、その99パーセントは失敗に終わっていて。今回の代表決定戦についても、そういうふうに続けてきたたくさんの挑戦の中で、今この時点までうまくいってる、ってことなのかなって思っています。
智子:とりあえず今自分たちにできる練習とかをやって、本番できることをやるしかないのかなと思ってます。
“10年待ち続けた” オリンピックへ
Q:オリンピックに対しては、どんな思いがありますか。
直将:ミックスダブルス(以下MD)という競技ができたのが、確か2007年のシーズンだったと思います。世界カーリング連盟がオリンピックの正式種目に追加することを計画して、世界選手権を開催した。私たちが日本選手権で優勝したのは2009年でした。2010年バンクーバーの冬季競技会があって、それが終わったあとロシアで開催されたMD世界選手権に出場させていただくことができたんですよね。2014年にロシアのソチで大会を開催するってことが決まっていましたから。ただその後「2014年のオリンピックの正式種目にはしない」という決定がされたんですよね。我々にとっては残念な決定でした。
その後2015年になって、2018年ピョンチャンオリンピックでの正式種目が決まった。ただ、その時ちょうど子供ができていて、まだ妻のおなかの中にいたってことなんですけれども。2016年はお休み、2017年は日本選手権に出場はしたんですが、0歳児を抱えての練習だったのでいい結果を出すことはできず、2018年の代表選考にかかることはなかった。そういう意味でいうと、われわれはもう10年近く待ってますから、今回北京オリンピックに参加する可能性をまだ残しているということは、とても大きいと思います。
大会では“2人のスイープ”に注目
Q:ご自身の強み、持ち味はどんなところにありますか?
直将:技術的な部分は、カーリング競技を始めたのが少し遅かったので、さほど優れたものはないと思っています。ただ、目標を立てて計画的にやるべきことを積み重ねていく能力については、他チームに若干勝っているところはあるのかなと。個人としては、親が頑丈な体を与えてくれたので、それを生かして長くプレーを続けたり、強度の高い練習に耐えられるのがいいところだと思っています。
智子:私はですね…それほど強みは自分では感じないんですけれども。何かあるかな?(笑)
Q:ではお互いの強みは?
智子:たまにいいショットが。たまに(笑)。繊細なショットがたまに決まったりとか、あとは速いウエイトとトップウエイトのショットっていうのがあるんですけど、そういうのをねじ込んでくるようなところがあります。私がダメなことが多いので、“あとは任せた”っていうか。私が1番と5番を投げて主人が2、3、4を投げるので、私が1番で投げ散らかした石を2、3、4でなんとか立て直してもらうことが結構あります。
直将:勝負強いと思います。それから、まじめに練習に取り組むところはいいんじゃないかなと思います。
Q:チームとして注目してほしいのはどんなプレーですか?
智子:私とは体格がだいぶ違って主人のほうがスイープがよく効くんですよね。なので、ほとんどの石をスイープしてもらっているので大変かなとは思うんですけど、スイープ頑張れって思ってもらえれば(笑)。
直将:そうですね、できればあまり注目してほしくないという気持ちもあるんですけど(笑)、注目するのであればスイープを。2人でやってますんで。軌道を読んだり掃くか掃かないかって判断をしたりっていうのは、妻が担当してやっています。大きく動くのは私なんですけれども、これも2人で力合わせてやってますから、そこを見ていただければなと思います。
夫婦仲の秘訣は「半分諦める」&「気の持ち方」
Q:カーリング以外のところでは、どんなご夫婦なんですか?
直将:そこらへんに転がってるような、どこにでもいるようなと思いますけれども。
智子:特にアイスの上とそれ以外で違うというような感じではないと思います。だいたいこういう感じ、家でも。(直将選手は)探し物は苦手なとこがありますね、すぐカギとかどこいったかなとかって探してて、私がすぐみつけるみたいなところはありますね。
直将:知り合ってかなり長いので、大学1年生の時に一緒でっていうところからなので、かなり長い付き合いですね。特に特徴はないと思います。
Q:気が合うなぁと思うところはありますか?
智子:…合うかな?(笑)同じものを見て、感想が合った時は気が合うなとは思いますけど、くだらないことについてなんですけど。
直将:あんまり気が合うなって思うことがないです(笑)ないけども、10年以上仲良くやってる、そういうことですね。
Q:10年以上仲良くいられる秘けつは何ですか?
智子:意見が違っても、あきらめるというか、無理に合わそうとせずに、ちょっと半分諦めたらいいのかなと思っています。
直将:そうですね、夫婦といえども別々の人間なわけで、考えが完全に一致するわけでもなければ違うところができるのは当たり前なのかなと。特にこういうカーリングとか競技を真剣にやっていると、衝突する場面というのはたくさんあるんですよね。その衝突がですね、結果としてお互いを高めあうようなものになるのか、それとも犬も食わないようなものになるのかっていうのは、その時のお互いの気持ちの持ち方かなというふうには思います。
“3人”で挑む代表決定戦
Q:長年ペアを組む中で、変化はありますか?
直将:子供が生まれたというのが、やはり生活をする上でもカーリング競技に取り組む上でもかなり大きかったなという風に思います。
Q:一緒に3人でカーリングすることについてはどう感じていますか?
智子:ちょっと前までは邪魔しかしなかったんですけれども(笑)、最近は石を出してくれたりとか。タイマーをかけてると、読み上げてくれたりとか。そういうことが色々とできるようになってきたので、最近は「2人+ちょっと」ぐらいな感じで練習できている感はあります。
Q:娘さんにどんな姿を見せたいですか?
智子:父親と母親が真剣になって頑張ってる姿を見せるっていうのは悪いことではないと思っています。私は私で一生懸命やって、娘がそこからどういう風に思うのかっていうのはわからないんですけど、それがいい影響であればいいなって思っています。
Q:子育てとの両立は大変なのではないですか?
智子:シーズン中、名寄のカーリング場がオープンしているときは、仕事が終わって夜7〜8時から会場が閉まる10時まで練習。1人が家で子供のごはん、お風呂、寝かしつけとかをして、1人が練習に行くスタイルになるので、平日は練習量が半分になってしまうのはありますね。最近は昼の練習だと2時間みっちり練習できている。最初の頃は本当に半分、ほんとに2時間あったら1時間、1人は子供に付きっきりという感じだったんですけれども。
コロナ禍で苦しむカーリング仲間のために
Q:仕事と両立しながら目指すオリンピックですが、大変なこともあるのでは?
直将:今でこそ企業や組織の支援を受けて、カーリングにほぼ専念できるような環境の選手たちが日本でもたくさん出てきていて、すごくいいことじゃないかなと思います。これからのカーリングっていうのは、彼らのような層がけん引していくんだろうなと思ってます。他方、大多数の競技者、私も含めてなんですが、表現はおかしいかもしれないですけれども本当の意味のアマチュアで、フルタイムで仕事をしながら家庭とか地域とか自分の役割を果たしながら競技を続けている人間、それがほとんどなんですよね。私はそういった仲間たちと切磋琢磨しながらお互い励まし励まされしながらここまで来たと思っているので、特に大変だったとか思うことはないんですよね。仕事をする中で世の中に少しでもいい影響を与えられたらという思いもありますし、自分のできる範囲でできることをやりたいと。だから大変だと思ったことはないです。
Q:代表決定戦への意気込みをお願いします。
直将:この2シーズンくらい、我々カーリングやってる選手っていうのは、あまりいいことはなくって。新型コロナウイルス感染症が拡大している影響で施設は休館が長かったですし、大会も中止や延期になったりが多かったんですね。みんなで集まって練習をしたり移動したりすることにも制限があって、苦しい思いをしながらやってきた。仲間の中には感染症の影響で仕事がうまくいかなくなって、カーリングどころじゃないっていう人も結構たくさんいる状況なんですね。私たちは代表決定戦に臨むわけなんですけれども、そういった仲間の気持ちっていうのをかみしめながらプレーしたいなって思います。
智子:仕事も休ませてもらって、練習もして大会に臨むので、悔いが残らないように、できることをしっかりできればいいなと思っています。