ストーリーカーリング

北京オリンピックへの道!カーリング ミックスダブルス日本代表決定戦のみどころ

2021-09-17 午前 11:25

北京オリンピックへの出場権をかけ、2021年12月に予定されているミックスダブルスカーリング世界最終予選。この予選に出場する日本代表の決定戦が9月18日から開催されます。参加するのは、2021年日本選手権で優勝し、世界選手権にも出場した吉田夕梨花(ロコ・ソラーレ)・松村雄太(コンサドーレ)ペア、2020年日本選手権優勝の松村千秋(中部電力)・谷田康真(コンサドーレ)ペア、そしてワールドカーリングツアーで国内最上位の竹田智子・竹田直将(ともに名寄協会)ペアの3組です。オリンピック出場につながる日本代表の座をかけたこの大会の見どころはどのようなところか。藤澤五月選手(ロコ・ソラーレ)とペアを組み、2018年、2019年の日本代表をつとめた山口剛史さん(SC軽井沢クラブ)に、解説していただきました。

三つ巴の短期決戦!日本代表決定戦、どう戦う?

ーー今回の日本代表決定戦は、3ペアという少ない参加チームでの争いになります。通常の大会との違いを教えてください。

 

今回は、予選の結果を含めた「ベスト・オブ5」で最初に3勝したチームの優勝という方式です。まず予選ではA、B、Cの3チームがA対B、B対C、C対Aという試合を、それぞれ2回ずつ行います。そして次に上位2チームでの試合が行われ、予選を含めた5戦のうち先に3勝をあげたほうが世界最終予選への出場権を獲得するという方式です。ここでポイントになるのが、予選の結果を含めてのベスト・オブ5ということです。つまり、Aが予選1位、Bが予選2位だったとすると、AとBで決定戦をするわけですが、予選でAがBに2勝していた場合、決定戦であと1勝すれば先に3勝ということになります。そのため、予選の結果も非常に重要になってきます。予選時に勝ち越しが多いほうがメンタル的にも有利に働きますからね。

加えて、今回は全部で3チームなので、試合時に会場にいるのは2チームだけです。しかも無観客で会場は非常に静かなので、残った1チームはライバルたちの試合をじっくりと観察して作戦を練るといったこともしやすくなります。そのような特殊な事情も、試合展開に影響を与えるのではないでしょうか。

 

ーー短期決戦となりますが、その点ではいかがですか?

 

普通の予選であれば参加チームが多いので、中には実力的に自分たちよりも格下のチームとの試合もあります。そのようなときには、氷を読みながらいろいろなショットを試したりできるので、予選の間にじっくりとペースをつかむことができます。でも、今回は3チームしかいないので、ひとつの試合が持つ意味が非常に重要になってきます。どのペアも、いつものようにいろいろと試している余裕はないので、その意味でもシビアな試合になると思います。

 

ミックスダブルスは、4人制と比べるとスイープも少ないし、氷を読む人数も減ってしまうので、その精度も悪くなります。なので、ショットの成功率は4人制よりも低くなります。スイープを増やすことは物理的に限界があるので、いかに素早く正確に氷を読めるかが、勝利のポイントになるのではないでしょうか。

経験、技術、戦略…それぞれの特徴は?

2021年の日本選手権を制し、世界選手権に出場した吉田・松村ペア

 

ーー各出場ペアの特徴や強みを教えてください。まずは吉田夕梨花・松村雄太ペアはいかがでしょう?

 

このペアの強みは、やはり世界選手権を経験していることだと思います。昨年の世界選手権はコロナの影響で中止になってしまったので、2020年日本代表の松村・谷田ペアは経験出来ていませんから。世界選手権は、国内の大会と比べてレベルが格段に違います。そのなかで失敗したり成功したりということを繰り返して、経験値を上げられる。世界選手権に行くと、完全に一皮むけて帰ってきますね。また特徴としては、1投目と5投目を松村雄太選手が投げて、2、3、4投目を吉田夕梨花選手が投げるということでしょうか。ミックスダブルスの場合、最初と最後を女子が投げて、パワーが求められる場面の多い2、3、4投目を男子が投げるというケースが多いのですが、このペアはあえて逆にしています。選手の得意とするところを重視したのだと思いますが、それがうまくはまらない場合、ウイークポイントになってしまう可能性もあります。ちなみに、松村選手の妻は、吉田知那美・夕梨花姉妹の姉なので、吉田夕梨花・松村ペアは義理の兄妹ペアということになります。その点でも日頃からコミュニケーションはしっかりと取れているのではないでしょうか。

 

ーー世界選手権を経験しているという点では、松村千秋選手と谷田康真選手も、4人制の世界選手権を経験していますよね。それでも吉田・松村ペアだけがミックスダブルスとして世界の場で戦っているという経験の差は大きいのでしょうか。

 

大きいと思います。近年、世界のミックスダブルスのレベルはどんどん上がってきています。さらに2021年の世界選手権では、従来から試合形式が変わりました。これまで48か国が出場していたのが、今回から世界の上位20チームに出場が絞られた結果、どの試合も自分と互角、あるいはそれ以上に実力があるチームと戦い続けなくてはいけなくなったわけです。そこを考慮すると、テクニック、作戦、メンタルと、いろいろな面で成長していると思いますね。

 


ーーでは、2020年の日本選手権で優勝した松村千秋・谷田康真ペアはいかがでしょうか?

 

2020年日本選手権優勝時の松村・谷田ペア

 

このペアは、2020年が優勝で2021年が2位と実績もあり、今回も有力ではないかと思います。谷田選手は、所属チームのコンサドーレではセカンドを投げていますが、ミックスダブルスで投げる2、3、4投目は、4人制でいうとセカンドやサードのポジションに似ているんですね。また谷田選手はスイープも得意です。その意味で、このペアは谷田選手の長所をしっかり生かした戦い方ができるのではないでしょうか。一方、1、5投目を投げる松村選手は、いまは所属チームの中部電力でサードをやっていますが、その前はスキップをやっていたし、最後に投げるプレッシャーにも慣れているはずです。どちらの選手もいつも通りの力を出しやすいという意味で、このペアにはやはり安定感を感じますね。ちなみに松村千秋選手は、対戦相手である松村雄太選手の実の妹です。つまり、松村雄太選手の目線で見ると、実の妹(松村千秋選手)と義理の妹(吉田夕梨花選手)の対決ということになりますね(笑)。

 


ーー最後に竹田智子・竹田直将ペアですが、この二人は夫婦で、ミックスダブルス歴の長いペアですよね?

 

2018年日本選手権時の竹田・竹田ペア

 

そうですね。ふたりの地元である名寄市で開催されたワールドカーリングツアー(WCT)で優勝したことでWCT国内ランキング1位になり、今回の出場となりました。実はこのペアは、日本選手権で2009年に優勝、2013年は2位、2011年と15年は3位と、過去4回も入賞しています。長い期間プレーをしていて、ペアとしての経験値もある。まずその点がほかの2組と違います。ただ最近では、4人制の選手たちが強化推薦としてミックスダブルスに入ってきて、竹田・竹田ペアのような選手は、なかなか上位にあがりづらい状況にあると思います。ですから、今回の出場は非常に大きなチャンスではないでしょうか。竹田直将選手は、なかなかの秘策の持ち主でもあるので、どのような作戦で臨むのか楽しみです。

勝利への道、各ペアのどんなプレーに注目?

ーー各ペアの特徴をお話いただきましたが、それぞれのペアが勝利するためにはどんな戦い方、プレーが必要になりますか?

 

吉田・松村ペアは真ん中の2、3、4投目を吉田選手が投げますが、女子がここを投げるというのは、やはり世界でもまだ少ないんですね。押され気味の試合展開の場合、中盤でテイクアウトやダブルテイクアウト、トリプルテイクアウトなどで流れを変えようとしたときに、破壊力がなくて苦しくなるということはあるかもしれません。一方で、松村選手が4人制でスキップを務めているということもあり、氷の曲がり方を読む対応力や、戦術的な作戦の組み立て方に長けています。そこに、吉田選手が得意なドローをどのように絡めてくるかという点が勝利のポイントになりますね。

 

世界選手権でショットを放つ吉田夕梨花選手

 

松村・谷田ペアは、ショットを決める力はあるのですが、4人制でスキップを担当している選手がいません。そのため、氷の曲がり幅を読む精度という点では吉田・松村ペアに比べると落ちるかもしれないですね。そこでポイントになってくるのが谷田選手のスイープです。自分で投げる2、3、4投目でいかにチャンスを作っていけるかだと思います。

 

男子世界選手権でも強みのスイープを見せる谷田康真選手(左)


竹田・竹田ペアは、ベテランらしい読みや策といったものはあると思いますが、ほかの2チームと比べると、個々人の能力という点で、安定感が不足しているかなという印象があります。そこで勝利のポイントになってくるのは、ベテランらしい読みと秘策ですね。きっと、思いもつかない作戦を繰り出してくるんじゃないかと思うんですよ。最近では、なかなか上位に食い込むことが難しくなっているという現実はありますが、一発逆転という可能性は十分にあります。

 

2019年日本選手権での竹田直将選手

 

全体的には、やはり2、3、4投目の中盤がカギになると思います。5投のうちの3投、つまり60%を投げるポジションなので、単純に投げる回数も多いですし、試合の展開でも、チャンスをつくったり、ピンチをしのいだりという重要な役割を果たすことが多い。ここがやはり勝負どころでしょうね。

ミックスダブルスの魅力、そして戦いのゆくえは?

ーー4人制のカーリングは見たことがあるけど、ミックスダブルスは見たことがないという人も多いと思います。ミックスダブルスの魅力や今大会の注目ポイントを教えてください。

 

まず、5投しかできないこと、最初からストーンが置かれていることなど、ルールの違いが大きいです。ストーンの置き方にしても、左右にずらして置くことで、ハウスのなかでストーンを散らすようにして、劣勢だった後攻が起死回生を狙えるパワープレーという独特なルールもある。ミックスダブルスは、とにかく点数が動くんですよ。4人制だとハーフを終えて4点差があれば安全圏も近いという印象ですが、ミックスダブルスは1投のミスで3、4点いってしまうこともあります。そういう意味で、最後まで本当に勝敗はわからず、気が抜けない展開になるのが魅力です。

 

ーー4人制とは違った楽しみ方がありますね。今回の大会はどのような展開になると予想されますか?

 

先程もお話しましたが、普段は4人制で戦っている選手が、強化推薦としてミックスダブルスに入ってくるようになりました。そうなると、氷を読む力やショットの精度などの点で、多くの試合を経験し、日頃から上位争いをしているようなチームの選手同士が組んだペアが有利になるのは否めないと思います。

 

そして、もうひとつのポイントは、会場が稚内のカーリング場だという点です。この会場は、基本的に氷が滑りやすいという特徴があります。その場合、スイープがより重要になってくるんですよ。ミックスダブルスの場合、1、2、3投目まではほぼドローでの展開になります。ちょっと押すとか、ゆっくりはじき出すといった感じですね。このとき、スイープで細かなコントロールをすることになるので、その技術が問われることになります。

 

これらを踏まえると、吉田・松村ペアか松村・谷田ペアのいずれかが戦いを制する可能性が高いかなと思います。そしてスイープ力や安定感という点において、松村・谷田ペアのほうがやや優勢と見ています。

とはいえ、竹田・竹田ペアの存在も決して軽視はできません。最近でこそ、上位争いや世界選手権から遠ざかっているものの、ほかの2ペアにはない長い経験があります。経験の差というのは技術では埋めきれない部分もあって、強豪であることは間違いありません。特に竹田直将選手は予想外の戦略を取ってくることがあるのでそこは要注目です。

 

 

ーー今回の試合で日本代表が決まり、12月の世界最終予選に進むわけですが、そこでの日本代表の戦いはどのようなものになると思いますか?

 

北京オリンピックに出られるのはあと2枠しか残っていませんが、その参加国のほとんどは中位レベル以上の実力があります。そしてその国々は、上位チームとそれほど差がないくらいに強いです。そのため、どのペアが日本代表として出場したとしても、またどの国にとっても、非常に厳しい戦いになると思います。そのなかで日本代表ペアが勝利できるよう、僕たちはしっかりと応援をしましょう!ぜひオリンピックに出場してもらって、日本のカーリングファンを増やしたいですね。まずは日本代表決定戦に注目です!

 

山口剛史(やまぐち・つよし)

1984年生まれ、北海道南富良野町出身。SC軽井沢クラブに所属し、2018年のピョンチャンオリンピックに出場。ロコ・ソラーレの藤澤五月選手とのペアで2018年、2019年のミックスダブルス日本選手権に優勝し、日本代表としてその年の世界選手権に出場している。

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