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特集 横綱 白鵬のまげを結い続け、共に歩んだ床山

相撲 2021年9月11日(土) 午後6:30

横綱白鵬は進退を懸けて臨んだ名古屋場所で45回目の優勝を果たし、若手が台頭するなかで第一人者の実力を示しました。

 

その白鵬のまげを入門以来18年以上結い続けた床山がかつていました。コロナ禍が続くなか今は支度部屋での取材ができなくなりましたが、取材ができた2年前の名古屋場所で白鵬と共に歩んだ床山床蜂(とこはち)さんの最後の仕事を追い、心の交流を見つめました。

13歳で入門、52年間まげを結い続けた

床蜂さん

 

床蜂さんは横浜市の出身13歳で角界入りし、中学に通いながら床山の修行を続けました。52年間まげを結い続け、床山の最高の地位の特等床山となって50人の床山のとりまとめをしていました。

 

床蜂さんは「いちばんの思い出は大銀杏を結えるようになったことです。白鵬関の大銀杏を結っているときは、けががなく頑張ってほしいと願っています」と話していました。

18年4か月 白鵬のまげをすべて結った

床蜂さん(中央)の定年を祝うパーティ

 

床蜂さんは令和元年名古屋場所で65歳の定年を迎えました。床蜂さんは白鵬が勝っても負けてもいつもと変わらず静かにまげを結いました。白鵬が入門して初土俵を踏んだ平成13年の春場所から18年4か月まげをすべて結い続けました。

 

入門当時やせた少年だった白鵬が新十両、新入幕、新三役、新大関、そして新横綱と出世の階段を駆け上がるときも常にかたわらで支え続ました。

 

平成16年 新入幕を喜ぶ白鵬

 

白鵬は「新弟子のころからまげを結ってもらってたくさんの思い出があり、本当に優しくしてもらいました。『夫婦は二人三脚』という言葉と同じ思いでずっと一緒でした。特に近い距離で支えてもらったと思っています」と振り返っていました。

名古屋場所千秋楽、白鵬に最後のまげを結う

令和元年 名古屋場所千秋楽  鶴竜に敗れた白鵬(右)

 

名古屋場所千秋楽、白鵬は鶴竜と横綱同士の優勝を懸けた大一番を戦い、そして寄り切られて優勝を果たすことはできませんでした。風呂から上がった白鵬は「どうなるか不安だった。ここまで戦ったことは褒めたい」と右腕のけがの回復が思わしくないなかでの出場を振り返りました。

 

最後に白鵬のまげを結う床蜂さん(令和元年 名古屋場所千秋楽)

 

白鵬は賜盃を抱く姿を床蜂さんに見せたかったに違いないと感じました。床蜂さんは記者に囲まれ取材を受ける白鵬の後ろで静かに最後のまげを結いました。

白鵬からサプライズの花束を贈られる

 

まげを結い上げてからサプライズがありました。白鵬が花束を用意して床蜂さんにプレゼントしたのです。白鵬は「まだ若いと思っています。私は『お疲れ様』と言わないです。『これからもよろしくお願いします』という気持ちでいます」と話していました。

 

 

床蜂さんは「最後のまげを結い終えて最高の気持ちです。あっという間の人生でもう思い残すことはないです(笑)」と最後の仕事を終えて笑顔でした。

 


相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から

 

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