ストーリーパラスポーツ

女子走り幅跳び・全盲の高田千明を支えたのは

2019-11-17 午後 0:48

中東・ドバイで開かれていたパラ陸上の世界選手権、女子走り幅跳び、視覚障害のクラスで全盲の高田千明選手が4位に入り来年の東京パラリンピックの代表に内定しました。日本新記録の跳躍で内定をつかんだ背景には、競技力の強化を支える2人のオリンピアンと愛する息子の存在がありました。(スポーツニュース部・金沢隆大)。

助走を支えるのは元五輪選手

生まれたときから視覚に障害がある高田選手は18歳の時に完全に視力を失いました。暗闇の中をまっすぐに助走して跳ばなければならず、助走の方向や踏み切りがわずかでもずれると失格になります。

 

 

そのため跳躍に欠かせないのが、声を出したり手をたたいたりして助走の方向や踏み切りのタイミングを知らせる「コーラー」と呼ばれる先導役の存在です。

高田選手のコーラーを6年前から務めているのが、アトランタオリンピック陸上短距離の日本代表、大森盛一さんです。

 

 

大森さんが踏み切りの位置に立って、手拍子を始めると高田選手は歩数のカウントにあわせてためらうことなくまっすぐ助走、ちょうど15歩目に踏み切り板の直前のベストのタイミングで踏み切ります。

 

コーラー・大森盛一さん

私の仕事はささいなことで、本人のやる気と怖がらない勇気が大切です。本人の力が90パーセント以上ですよ。

 

さらに短距離を専門とする大森さんがランニングフォームの指導を続けたことで助走のスピードが上がりました。スピードが向上したことで大森さんは夏前から踏み切りの直前3歩の手拍子のリズムを速めたところ、7月には4メートル60センチを跳び、みずからの日本記録を2年ぶりに更新しました。

跳躍の指導は日本記録保持者・井村久美子さん

井村久美子さん

 

大森さんとの練習で、まっすぐ走る安定感とスピードに磨きをかけた高田選手。そのスピードを跳躍につなげようと指導を仰いだのが、女子走り幅跳びの元オリンピック代表で日本記録保持者の井村久美子さんです。3年前から年3回ほど合宿を行い、スピードを殺さない力強い踏み切りや滞空時間を長くするため体全体を大きく使う空中での姿勢について細かく指導を受けてきました。

先月下旬の合宿で井村さんに「疲れていてもきれいなフォームで跳ぶこと」とテーマを設定された高田選手は多いときには1日40本以上の跳躍を繰り返して、理想のフォームを体にしみこませました。

 

 

日々の練習では井村さんが送られてきた高田選手の跳躍の動画でフォームを確認して、気がついた点をコメントしたりイラストで送ったりしてアドバイスしています。

 

井村久美子さん

スピードを生かした踏み切りのタイミングや距離を伸ばすための空中での足や腕の使い方を指導していった。

 

合宿の度にレベルアップしているし、この3年間で着実に力をつけている。お母さんで35歳だけど進化しているので楽しみだ。

“世界で戦う最高のママ”

2人の元オリンピック選手に指導を受けながら、35歳にして、記録を伸ばし続ける高田選手。その原動力となっているのが小学5年生の長男諭樹くん(10)です。

 

 

育児をしながらリオデジャネイロパラリンピックに出場するなどママさんパラアスリートの先駆けでもある高田選手の心の支えになってきたのが「世界で戦うママは目が見えなくても最高のママ」という諭樹くんのことばです。大会が行われるドバイにも諭樹くんを連れてきた高田選手は大会直前も「日本代表として世界で戦う、一番のママを、強いママを見せたいと思う」と意気込んでいました。

みんなの思いを背負って

そして迎えた決勝。高田選手は諭樹くんと井村さんが見守る中、大森さんの声を聞いて臨んだ最初の跳躍で4メートル65センチとみずからの日本記録を5センチ更新。順調な出だしに見えましたが、その後の跳躍は「助走と踏み切りがかみ合わなかった」と思うように記録は伸びませんでした。

 

パラ陸上世界選手権 女子走り幅跳び(視覚障害)で4位に入り 東京パラリンピック代表に内定(11月9日)

 

そんな中、井村さんからアドバイスされたのが「いつもより助走のスピードが遅いからもっと速く」というもの。最後の6回目。より速く走ることを意識し、4メートル69センチとさらに記録を伸ばして、4位に入り、東京パラリンピック代表に内定を決めました。

高田千明選手

大森さんや井村さんといったスペシャリストが跳躍の度に、助言をくれるし心強かった。

 

言われたことを意識して最後に自己ベストを更新できて本当によかった。

 
会場から声援をおくった諭樹くんも内定が決まった瞬間、父親と抱き合って喜んでいました。
 

 

長男 高田諭樹くん

最後の最後にすごいジャンプを見せてくれてよかった。もっと跳べる、もっと跳べると思って見ていました。いつもの数倍、格好いいママです。

 

高田千明選手

諭樹は一生懸命、応援してくれて力になった。ただ、メダルが欲しいと言われていたのでなんとかとりたかったが届かなかったのが残念。

 

メダルを首にかけて あげるのは 東京大会まで取っておく。

 

諭樹くんの願いをかなえるために、高田選手は2人のオリンピック選手のサポートを受けながら、東京での大ジャンプを目指します。

 



※こちらは、2019年11月17日に公開された記事です。内容は公開時のものとなります。

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