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特集 元勢の春日山親方 16年の力士生活と指導者としての抱負を語る

相撲 2021年9月10日(金) 午前10:40

元関脇の勢は6月21日に現役を引退し、年寄春日山を襲名しました。敢闘賞4回、金星5個の人気力士は25日にリモートで引退会見を行い、「やり切ったと納得。長かったような短かったような16年」と述べました。

 

一年生親方としてスタートした春日山親方に電話でインタビューしました。

お相撲さんの歌には力がある 思い出の一曲は山本譲二物語

Q 名古屋場所、親方の初仕事はどうでしたか。

 

初めてだったので、周りの人に教えてもらいながらやっていました。中日くらいから少しずつ仕事が分かってきました。

 

客席を歩きパネルでマスク装着を呼びかける春日山親方(名古屋場所2日目)

 

Q 9日目にはNHKの大相撲の向正面の解説もしましたね。

 

放送を見て「よかったよ」と言ってくれる人が多くて、安心しました。もっと話せばよかったかなと思っています。

 

Q 放送でNHK福祉大相撲での熱唱も紹介されましたね。

 

相撲はもちろんですが歌の力でお客さんを元気づけたいという思いがありますね。福祉大相撲で歌わせていただいて、いい経験になりました。

 

Q また放送では「歌手になりたかった」という親方の発言がありましたね。

 

ちょっと言っとこうと思いまして(笑)。歌手になられた増位山さんのような人生はいいなと思っています。東日本大震災の慰問で東北に行って歌ったときに被災地の方は涙を流して聴いてくれたこともありました。お相撲さんが歌う歌の力があると思います。こんな時期だから大好きな歌を歌って元気づけたいという気持ちです。

 

九州場所前夜祭で熱唱(平成29年11月9日)

 

Q 思い出の一番ならぬ思い出の一曲なら何を挙げますか。

 

何にしますかね。山本譲二さんの「山本譲二物語」です。これは隠れた名曲です。是非聴いてみてください。歌詞がいいです。

 

Q 先代の師匠(元関脇藤ノ川の伊勢ノ海親方)から「山本譲二さんに会わせてやる」と言われて入門したという話を聞きました。

 

師匠から「頑張っているから、希望を言いなさい」と言われて、「譲二さんが好きなので会いたいです」と言って幕下のときに会わせてもらいました。十両に昇進してからもまた別の方の紹介でお会いして、今も連絡を取り合う仲です。譲二さんの誕生日会にも呼んでいただきました。

白鵬戦の金星は忘れられない 1090回連続出場は生きた証

Q 改めて思い出の一番は平成29年春場所の白鵬関からの金星だと思いますがいかがですか。

 

そうですね。地元大阪での金星でした。物言いがつきましたが終始攻めていましたので、いい相撲だったと思います。大歓声がすごかったです。あの一番は忘れられないです。

 

勢(左)が白鵬から金星を挙げる(平成29年春場所4日目)

 

Q その金星を含めて金星が5個、敢闘賞が4回というすばらしい成績を残していますが、現役時代の16年を改めて振り返ってみてどう思いますか。

 

長かったですよ。「まだ16年しかたっていないの」という感覚です。自分の中では、もう30年くらいたっている感じです(笑)。普通の人の感覚とは違うと思いますよ。1場所2週間を1か月半くらいの感覚で生きています。疲れ具合とか時間の進み具合とか、朝から晩までずっと気の抜けない2週間です。だから長いのです。現役16年ですが、倍くらいの感覚です。

 

勢(左)が4度目の敢闘賞(平成27年 九州場所千秋楽)

 

Q そういう中でも1090回の連続出場です。史上3位、すごい記録ですね。

 

この数字は私が生きた、勢翔太が生きた証しですね。30歳を越えたら一気にケガが増えました。入門する前には相当悩んで入っていますので、その悩んだ時間が長かったのが嫌なのです。それでケガをしても休むことに時間を使うことが許せなかったのです。そういう気持ちで出場を続けてきました。入門する前に相当休んじゃっているんですよ(笑)。

 

敢闘賞を受賞した勢(平成27年 九州場所)

 

Q 現役16年間の思い出はいろいろあると思いますが、あえて1つ挙げると何ですか。

 

幕下生活が5年半と長かったです。その幕下上位で十両に上がるか上がらないかという時期に、トレーニングをしたり走り込みをしたり、みんなが休んでいるときに歩いて、いっぱい食べることに明け暮れた思い出が強く記憶に残っていますね。

 

新入幕の番付表を指さす勢(平成24年 春場所)

 

Q その苦労して上がった新十両で優勝していますね。これもすごいことです。

 

十両に上がったときは、あーよかったというよりもこれからが大変だなという気持ちのほうが強かったです。優勝して喜んでいる暇はなかったです。

心も体も強い貫ける精神持った侍のような力士を育てたい

リモートで引退会見、左は師匠伊勢ノ海親方(6月25日)

 

Q これから親方として弟子の育成に取り組むわけですが、どんな力士を育てていきたいですか。

 

師匠の方針のもと、サポートをしていきます。相撲が強いだけではなくて人間的にも心も体も強い、貫ける精神を持った頑固な不器用な力士を育てたいです。

 

Q 親方のしこ名のように勢いのある力士ですね。

 

そうです。侍のような、斬られても一歩一歩進んでいける気持ちを持った力士です。

 

 

相撲専門雑誌「NHK G-Media 大相撲中継」から

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