ストーリーパラスポーツ

ブラインドサッカー日本代表・勝利への戦略 カギはGK佐藤大介 東京パラリンピック

2021-08-30 午後 10:30

東京パラリンピック、ブラインドサッカー日本代表は、あす(8月31日)午前9時から、予選リーグ最終戦となる中国戦に臨みます。両チームともにここまで1勝1敗。準決勝進出をかけた大一番です。

 

初めてのパラリンピック出場でメダル獲得を目指す日本代表はゴールキーパーの佐藤大介さんとの息の合ったプレーで、自分たちの戦術を機能させることができれば、予選リーグ突破に近づくことができそうです。

準決勝進出かけた中国戦!

ブラインドサッカーは、4チーム総当たりで戦う予選リーグ2つのグループの上位2チームずつ、あわせて4チームが準決勝に進出します。

 

開催国枠で出場している日本は、世界ランキング12位。同じグループには、ロンドン大会銀メダルのフランス(世界14位)、過去4大会すべてで金メダルのブラジル(世界2位)、北京大会銀メダルの中国(世界ランキング5位)と強豪がそろいました。

 

黒田智成選手(11番)の2ゴールなどでフランスに快勝

 

日本は予選リーグ初戦のフランス戦に4対0で勝利。第2戦の王者・ブラジル戦は0対4で敗れました。第3戦の相手は中国。日本は中国を得失点差で上回っているため、引き分け以上で準決勝に進むことができます。

 

世界ランキングでは「格上」の中国との試合、日本は高田敏志監督によって鍛えられてきた、持ち前の高い組織力が機能するかどうかが、ポイントとなりそうです。

 

フランス戦、指示を送る高田敏志監督

高田 敏志 監督

世界の強い“個”に対して、どう組織で対応するか。規律を守ってサッカーができるという点は、日本がどの国よりも優れているところです。

 

組織力で勝利をつかむため、緻密に強化を進めてきた日本。目の見えない選手たちが、自分たちの戦術を実行するために、フィールド上で大きな役割を果たしているのが、競技パートナーとして選手と一緒にプレーしている37歳のゴールキーパー、佐藤大介さんです。

守護神の仕事は好セーブだけじゃない

ブラインドサッカーは、視覚に障がいがある4人のフィールドプレーヤーと、視覚に障がいがないか、弱視のゴールキーパーでチームを組みます。

 

2019年の国際大会 ゴールを守る佐藤大介さん

 

幼稚園から大学まで、ゴールキーパー一筋でプレーしてきた佐藤さん。学生時代にテレビで偶然ブラインドサッカーの存在を知り、軽い気持ちでチームに参加。以来、長年にわたって日本代表のゴールを守ってきました。

 

ブラジル戦では好セーブを連発

 

初めてのパラリンピックとなった今大会では、予選リーグ2試合で何度も好セーブを見せてチームを救ってきました。しかし、シュートを止めることだけが、仕事ではありません。佐藤さんが「大きなやりがいを感じている」という、もう1つの仕事。それは、ブラインドサッカーの「主役」、目の見えないフィールドプレーヤーへの「声」によるサポートです。

美しい守備陣形を「声」でサポート

ブラジル戦の中継で解説者が「本当に組織的で美しいですね」と何度もたたえた日本の守備。

フィールドプレーヤー4人が等間隔でひし形に並ぶ「ダイヤモンド型」の陣形がその理由です。この陣形の維持に、佐藤さんは「声」で貢献しているのです。

 

互いの距離感をはかりながらポジションにつく

 

このディフェンスは、日本が世界を相手に戦うために、長い時間をかけて磨いてきたものです。日本の分析チームが過去の試合を検証し、選手間の距離を「3m」にすることが最も効果的だと設定しました。互いの距離感を維持して動くために、フィールドの4人がゴムチューブで体をつないだ状態でのディフェンスを、繰り返し練習。「3m」間隔の陣形を体にしみこませていきました。

 

ゴムチューブを使った練習の様子(2020年撮影)

 

この陣形を維持するために不可欠なのが、周囲からの「声」です。監督、コーチ、そしてゴールキーパーが担当エリアを決めて、選手たちに指示の声を送ります。ゴールキーパーの佐藤さんの担当エリアは、自陣のゴール前。組織的な守備が最も求められる場所です。

 

「全体右スライド!前出ろ前!ストップ!右45度!」

 

今回のパラリンピックの初戦、フランス戦では、この守備が機能。日本を体格で上回るフランスを相手に無失点と結果を出しました。第2戦のブラジル戦では、陣形が崩れたわずかな隙をつかれ失点しましたが、終始ボールを支配される展開の中で粘り強く対応しました。

 

ブラジルの選手を4人で囲む

 

第3戦の相手、中国は前の試合1試合でシュート24本と積極的な攻撃を見せました。日本は組織的な守備で、相手のシュートを封じたいところです。

「声」への徹底的なこだわり

選手たちにどのような声を送るのか、その言葉選びに、佐藤さんはこだわってきました。過去の試合の映像をチェックし、自分が発した声が適切だったか、もっといい表現はなかったか、味方の反応やプレーの結果を振り返りながら突き詰め続けてきました。

 

2016年の国際大会 試合で常に仲間に声をかける

ゴールキーパー 佐藤大介さん

映像を見返すと、次から気を付けないといけないなと思うことがたくさんあります。例えばある守備の場面、『出ろ』ではなく『寄せろ』の方がうまくブロックできたのではないか。『出ろ』だと、フィールドの選手はボールを奪いに行かなければ、とスイッチが入ってしまう。『寄せろ』だとボールを奪うのではなく相手に近づいてプレッシャーをかけるというニュアンスになりますよね。

攻撃を生かすバックパス

一方の攻撃。こちらでも、ゴールキーパーの佐藤さんの果たす役割は大きいものがあります。

 

黒田選手と川村選手が活躍するためには…

 

フランス戦では黒田智成選手川村怜選手がゴールを重ねました。しかし、続くブラジル戦では、自陣に押し込まれる展開が続き、1試合でシュート1本に抑え込まれました。

 

中国戦では、黒田選手や川村選手のような、攻撃で力を発揮する選手に、いかにいい形でボールを送りシュートにつなげるか、攻撃の組み立てがカギを握ります。

 

ここで大きな役割を担うのが、フィールドを目で見て、最適な配球ができるゴールキーパーの佐藤さんです。キックやスローイングで攻撃の起点になるのです。

 

 

特に、日本が重視しているのがフィールドプレーヤーからキーパーへの「バックパス」です。自陣ゴール前へのパックパスにはリスクもあり、世界では使わないチームも多いプレーです。

 

しかし、唯一目が見えるゴールキーパーがバックパスを受ければ、より効果的なパスで攻撃を組み立てられるメリットがあります。

 

日本は、この戦術を採用。ゴールキーパーの佐藤さんが、声で自分の位置を知らせて味方からバックパスを受け、前方にいる黒田選手や川村選手に長いパスを狙う場面が、今大会何度も見られています。このプレーが中国戦でも決まれば、数多くのチャンスを作ることができる可能性があります。

初めてのメダル獲得へ

日本でブラインドサッカーの代表チームが結成されて19年。世界の壁に何度もはじかれながら、目が見えない選手たちと、目が見えるキーパーや監督が互いに声をかけあい、チーム強化の歴史を紡いできました。そして日本代表は今、目指してきたパラリンピックの舞台で、「目が見えないとは思えない」と言われるほどのプレーを見せています。

 

 

佐藤さんは、去年のインタビューで、ブラインドサッカー日本代表における、目が見える自分の役割を、次のように語っています。

佐藤大介さん

(日本代表は)みんなが光り輝いた時、目標を達成するだけの力は持っている。あとは一人一人がその力をどうやって出すか。僕も彼らの力をどうやって引き出すか。そこが、すべてだと思います。

 

予選リーグを突破し、目標としている初めてのメダル獲得へ、挑戦は続くのか。大一番の中国戦は31日午前9時キックオフです。

ブラインドサッカー 見逃し配信などの動画はこちら!

関連キーワード

関連トピックス

最新トピックス

RANKING人気のトピックス

アクセス数の多いコンテンツをランキング形式でお届け!