ストーリーパラスポーツ

東京パラリンピック ゴールボール男子「初戦突破」

2021-08-26 午後 04:51

ゴールボール男子予選 田口 侑治

 

8月24日に開幕した東京パラリンピック、大会2日目となる25日、ゴールボールの予選ラウンドが行われた。ゴールボールでは、日本女子が2004年アテネ大会で銅メダルを、2012年ロンドン大会で金メダルを獲得している。しかし、日本男子は、自国開催の東京パラリンピックが初出場の舞台である。

 

世界ランキング10位の日本男子は同13位のアルジェリアと対戦。前半1分半過ぎに金子和也が先制点を挙げると、ノータッチでのゴールを決めるなど怒とうの攻撃力を見せて、前半を7対3で折り返す。後半さらに6点を追加し、13対4で圧勝した。

 

 

 

「コートに立つ前は想定として、もっとドキドキするんだろうって思っていたんです」
 
ゴールボール日本男子チーム一の長身を誇る、身長182cmの宮食行次は、途中出場することが多い。初めてのパラリンピックの舞台で宮食がコートに入ったのは、後半2分5秒過ぎのタイミングだった。日本は、この時点で9対3と大きくリードしていた。

 

宮食行次

 

「思っていたよりも案外スムーズに入れました。それでも、最初の一発目が体に当たるまではかなり緊張していましたが、1回当たってからは、さあ、やるぞ、来い!という気持ちを強く持てたと思います」

 

 

バウンドボールを投げる宮食(右)と、ゴール前の田口(左)

 

大阪出身、26歳の宮食は、2019年に強化指定選手として代表入り。長くしなやかな腕で繰り出す、スピードあるバウンドボールが持ち味だ。

 

「バウンドボールが落ちてくるタイミングで相手の体に当てる、床でバウンドして跳ね上がるボールを当てる。一球ごとに、バウンドの高さや回数を計算して投げます」

 

 

ゴールボールは、1チーム3人が対戦する競技。鈴の入ったボールを交互に投げて、コートエンドにあるゴールに入れば得点となる。一見、ボールが単に行き来しているように見えるが、そこには細かな戦術があり、それこそがゴールボールの魅力なのだ、と宮食は語る。

 

「今自分が投げたボールが相手のどこに当たって、そこからどの選手にボールが渡されて攻撃してきたか。センターの手先を狙ったり、ゴールポスト際を攻めてウイングの選手を外に追い出してからセンターを弾いたりとか。一球一球に、すごく意味がある」

 

布石となるボールを、先に投げておく。日本は、後半アルジェリアのロングボールのペナルティに対し、山口凌河がしっかり得点を決めると、その後反則を冒した選手を徹底的にマークした。

 

その攻撃が奏功し、アルジェリアは選手を交代する。レフトポジションの宮食は、攻撃の際に大きくライト側にポジションをスイッチし、そこから交代したばかりの選手めがけてショットを放ち、得点を挙げた。畳みかけるように山口がセンターにスイッチして、同じ選手を狙ったボールを投げる。直後、ボールを手にした宮食は、再びライトにスイッチしてストレートに投球。連続得点に成功すると、アルジェリアはたまらずタイムアウトを要求した。

 

「あの場面、完璧な狙い通りでした。1回目に得点したことで、コートの中でセンターの田口さんと確認しあって、同じ攻撃を仕掛けることにした。日本の戦術的な攻撃力を証明できたと思います」

 

 

 

コロナ禍の1年、日本チームは合宿が再開すると、1か月の3分の2に及ぶ日数をNTC(ナショナルトレーニングセンター)でのトレーニングに費やしてきた。技術面はもちろん、医科学的なアプローチによるフィジカルトレーニング、心理サポート、栄養サポートなどの総合的な強化を徹底してきたことで、強じんなフィジカルを作り上げたと、宮食は手応えを感じている。

 

叩きつけるようなボールを投げる金子和也

 

「明らかにボールの質が変わりました。瞬発的にボールを押し込む力が身についた。ボールを押し込むことで、鈴の音を消すことができる。それによって、相手に音を取られず、惑わすことができるのです」

 

 

予選ラウンドのグループAには、アルジェリアのほか、世界ランキング1位のブラジル、2位のリトアニア、8位のアメリカが控えている。アルジェリアのように簡単に勝たせてくれない相手ばかりだ。

 

 

「以前は、守備力が安定せずせっかく攻撃しても反対にボコボコにやられてしまうことが多かった。だから、攻撃だけでなく守備力強化にも力を入れてきました。コロナ禍でも強豪国を丸裸にするくらい分析に時間をかけてきた。今回、それが日本の戦術にどう生きるか。しっかり見極めたい」

 

目指すところは、もちろん頂点。

「初めてのパラリンピックで結果を残して、ゴールボールの認知度を高めたいと思っています」。

 

 

◎ゴールボール男子 日本対アルジェリア ハイライト(2021年8月25日)

https://sports.nhk.or.jp/paralympic/highlights/content/90dbb2c7-ac63-4331-b0b4-cc3aeefceecb/

 
 

◎ゴールボール男子(日本)予選リーググループA 今後の試合予定

8/27(金)午後1時15分 対アメリカ戦

8/28(土)午後2時45分 対リトアニア戦

8/29(日)午前9時00分 対ブラジル戦

 

8/31(火)より決勝リーグ

9/3(金)午後3時 3位決定戦、夜7時30分 決勝

 

https://sports.nhk.or.jp/paralympic/schedules/sports/goalball/

 
 
 
スポーツライター 宮崎恵理(みやざき・えり)
出版社勤務を経て、フリーのライターに。1998年の長野パラリンピックを機に障がい者スポーツの取材に携わり、「Tarzan」「スポーツグラフィックナンバー」など雑誌やインターネットメディアで執筆。12年ロンドンパラリンピック、14年ソチパラリンピックではNHK開会式中継解説を担当した。著書に『心眼で射止めた金メダル』『希望をくれた人』『みんなちがって、それでいい』。日本スポーツプレス協会理事、国際スポーツプレス協会会員。
 
 

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