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高木菜那「姉妹でつかんだ理想の金」

2018-02-25 午後 0:00

スピードスケートの女子マススタートで高木菜那選手が金メダルを獲得できたのには、理想通りのレース展開と妹、美帆選手の存在がありました。スポーツニュース部の田中清高記者が解説します。

 

オリンピックの新種目マススタート。

10人以上の選手が一斉にスタートし、1周400メートルのコースを16周する長いレースですが、勝負で大切なのは、駆け引きです。

菜那選手はこの日の作戦として、「最後まで足を残す作戦だった」と、レース後の取材で明かしました。

「足を残す」とは脚力を温存し、最後にスピード勝負を仕掛けることを意味します。

 

 

最初のレースとなる準決勝は2組で行われ、1組12人のうち、上位8人に入れば決勝に進めます。

マススタートは4周ごとに上位3人に、5点、3点、1点がそれぞれ入り、フィニッシュでは1位に60点、2位に40点、3位に20点が与えられます。この配点が戦略上重要で、決勝でメダルを獲得するには得点が多いフィニッシュの順位が大切です。

 

しかし、準決勝では8人に残ればよいため、菜那選手は最も早い4周目でトップに立ち5点を獲得します。

 

このあとは決して上位をうかがうことはしませんでした。

菜那選手は「最初のポイントを取ることができて、足をためることができた」と、早々と得点を取り、決勝に向けて体力の消耗を避けた狙いを明かしました。

 

 

ところがこのあと、アクシデントが起きます。

 

2組目の佐藤綾乃選手がレース中盤でほかの選手に巻き込まれて転倒し、途中でレースをやめざるを得なくなったのです。

決勝では、これまでのワールドカップと同様、佐藤選手と一緒に滑り2人でメダルを狙う作戦でした。

変更を余儀なくされ、焦っていた菜那選手。その時、声をかけたのが妹の美帆選手でした。

 

「いける。がんばれ」。

 

短くもパワーをくれる言葉に、菜那選手は「いくしかない」。

気持ちが定まりました。

 

 

迎えた決勝。

 

菜那選手は、序盤から世界距離別選手権のこの種目で優勝経験のあるオランダのイレーネ・スハウテン選手の後ろにぴったりとつきます。

隊列を組んで滑るパシュートのように、ぴったり後ろについて体力の消耗を抑えながら、強豪選手の出方を見てスピードを上げるタイミングを狙っていました。

 

序盤からエストニアの選手が集団から大きく抜け出す展開。菜那選手はそれに目もくれず、スハウテン選手の後ろにずっといます。

残り3周目あたりから徐々にスピードを上げていくスハウテン選手に合わせて菜那選手も順位を上げていき、残り2周、スハウテン選手に続いて3位につけます。

 

 

そして、最後の1周。

ラストスパートを仕掛けたスハウテン選手についていった菜那選手は冷静でした。

 

「スハウテン選手がカーブでちょっと膨らんだので、最後、インから抜くことができると思った」。

相手の隙を見逃しませんでした。

ためていた脚力を最後のカーブで使い、1メートル55センチの小さな体で切り込むように、一気にインから抜き去りました。

 

 

ラスト100メートルは見ている人を興奮させるスピードで1位でフィニッシュした菜那選手。

 

レース展開を振り返り、「パシュートでもずっとやってきた前の選手の後ろについて風の抵抗を受けない滑りが無意識にできた」と話し、理想通りのレースには、日本が世界に示した一糸乱れぬ団体パシュートでの鍛錬がいきていたことも明らかにしました。

 

 

今回の金メダル獲得に欠かせない妹、美帆選手の存在。

 

これまでの取材で、菜那選手は8年前のバンクーバーオリンピックに2歳年下の妹の美帆選手が中学生で出場したことについて、「妹ばかりが注目されて、うらやましい気持ちがあった。スケートをやめたいと思うこともあった」と当時の複雑な心境を話していました。

 

 

その後、菜那選手は「今度は自分がオリンピックに出場したい」とがむしゃらに努力を続け、美帆選手が落選した4年前のソチオリンピックでは、今後は逆に菜那選手が初出場を果たしました。

 

そして、ピョンチャンオリンピックまでの4年は、それまでの過度な妹への意識は薄れ、同じ練習環境でともに時間を重ねるなどしていっしょに金メダルを目指す関係性に変化してきました。

 

 

菜那選手はレースのあと美帆選手について、「妹に負けたくない気持ちはあるが、これまで、ソチオリンピックで 代表に落選するなどそこから頑張る姿を見ているので妹のことを誇りに思う。今回、妹が個人種目で2つメダルを獲得していたことが刺激になった」と語りました。

 

自身が描く理想の展開でオリンピック新種目の初代、金メダリストとなった高木菜那選手。

 

その背景には、妹であり、よきライバルの美帆選手の存在がありました。

田中清高記者

ピョンチャン五輪 現地取材班
スケート担当

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