特集 大関 照ノ富士 “鬼門” 突破し千秋楽へ 大相撲名古屋場所

冷静かつ圧力のある相撲で、初日から白星を並べてきた大関・照ノ富士。14日目の相手は関脇・髙安だ。
過去8勝12敗と負け越し、幕内に復帰した去年7月場所から、今年3月の春場所までは4連敗を喫した。いわば“鬼門中の鬼門”。連勝はここで止まってしまうのか、注目の一番。
立ち合いで低く踏み込んだ照ノ富士。髙安の押しに動じることなく前傾姿勢を崩さずに冷静に勝機を伺う。
いなしも交えながら前に出て、左上手の自分の形に持ち込んだ。
これで勝負は決まった。大関経験者の難敵を寄り切り、全勝のまま千秋楽を迎えることになった。
文句なしのすでに横綱のような相撲を続ける照ノ富士。
日本相撲協会の八角理事長は高く評価した。「立派だ。相撲内容がいい」。昇進の議論を預かる審判部も、千秋楽の取組前に協議することを明言した。
いよいよ目前に迫ってきた横綱の地位。そんな中でも、本人はどこまでも平常心を貫く。
「焦らないで、落ち着いて取れたのでよかった。当たって前に出ることしか考えてなかった」
「報道陣:体の状態は?」
「普通です」
「報道陣:(横綱昇進に前進し)気持ちの変化は?」
「特にないです。あした1日頑張ります」
報道陣の質問の1つ1つに淡々と語った。
残すは千秋楽のみ。横綱・白鵬との全勝どうしの直接対決を控える。
「報道陣:あすの決戦をどう戦う?」
「自分の今できることを精いっぱいやりたい」
優勝がかかる横綱戦への意気込みを問われても、淡々とした姿勢は変わらない。大きな“鬼門”を乗り越え、最高位が目前に迫った照ノ富士。千秋楽の大一番も、いつもどおりの姿で臨んでいくに違いない。
この記事を書いた人

小野 慎吾 記者
平成28年NHK入局。岐阜局を経て、2019年8月からスポーツニュース部で格闘技(大相撲、ボクシングなど)を担当。前職はスポーツ紙記者。