ストーリー野球

“全力プレーを忘れない” 監督室での誓い DeNA・桑原将志

2021-07-15 午後 11:40

5月13日の練習前、DeNAのリードオフマン・桑原将志(27)の姿は監督室にあった。前日の巨人戦で不注意な走塁をして、三浦大輔監督から呼び出されたのだ。「もう2度とするな」と諭された。全力プレーを誓った桑原は前半戦を終えて打率はセ・リーグ3位の3割1分8厘をマーク。チームを引っ張る存在になっている。(記録は7月14日現在)

9回ウラに出た“まずい”走塁

5月12日に横浜スタジアムで行われた巨人戦。5対5で迎えた9回ウラ、ツーアウトランナーなしの場面。桑原は4球目の真ん中高めの変化球を内野に打ち上げてしまった。悔しそうな表情で上空を見上げながら、ゆっくり走り出した。

 

ところが、これを巨人守備陣がお見合いをして、ボールは一塁ファウルゾーンに転がっていった。この間10秒ほど。俊足の桑原なら悠々と二塁に到達できたはずだったが、その姿は一塁ベース上にあった。この結果、相手にプレッシャーをかけることができず、勝ち越し点は奪えなかった。

 

桑原選手

ことが起こったあとに、『あーやってしまったな』ともちろん思いました。自分の中でまだある甘さかなと思います。

 

三浦監督

選手たちもロボットじゃないですから、気持ちが強かったんでしょうね、桑原もなんとかしてやろう、塁に出てやろうっていうところで、フライをあげて、悔しさが第一にきたんでしょうね。悔しがった後に走らないといけないっていう切り替えが少し遅れたら、ああいう状況になりますから。たらればじゃないですけど、あれがセカンドに行ったからといって、点が入ったかどうかはわからないですけれど、できることは全力でやろうというところでのミスですよね。

 

 

監督室に呼び出される

翌日、桑原は球場で練習前に三浦監督から直接、声をかけられ、監督室へ来るよう指示された。まずいプレーをした自覚はあったので、そのことを話し合うのだろうと察しはついた。めったに立ち入ることがない監督室に2人きり。監督は怒っているようには見えなかったが「去年、ファームでどういう気持ちでやっていたんだ。もう2度とするな」と諭された。それに対し「きょうからまた全力でプレーしていきます」と答えた。4分ほどのやりとりで、桑原は気持ちを腐らせず、グラウンドで精一杯のプレーを誓った。

桑原選手

チームが最後まで諦めないって戦ってる中での勝負放棄というかそう捉えられてもしかたないプレーだった。僕がグラウンドに出る以上、そういう気持ちをより一層強く見せていかなきゃいけない立場だと思っています。そこから自分を見つめ直すことはできました。ああいうことが起こったあとの次の自分の姿は見られてると思ったので、気をつけました。

三浦監督

(走塁ミスは)ショックというよりも、課題が克服されてないなと思います。そこは監督の責任ですし、うちはそういう課題が多いんで、1つずつ減らしていかないといけない。その積み重ねだと思う。弱いからああいうプレーが出るって言われますけど、弱い、強い関係なく、やっちゃいけないプレーですからね。コーチからも話をしてもらっています。そういうところをなくしていかないと勝ちが増えていかないと思います。

4年前には大活躍も成績は下降線たどる

2017年11月1日 DeNA対ソフトバンク 日本シリーズ第4戦 桑原選手が初安打

 

桑原は4年前、全143試合に出場し、日本シリーズも全6試合に先発した。ゴールデン・グラブ賞も受賞。ところが翌年以降、出場機会を減らし、おととしは72試合、去年はわずか34試合に。打率も直近の2年間は1割台に低迷し、ラミレス前監督のもとでは主力として扱われなくなっていた。

桑原選手

周りの選手が活躍していく中で、焦りというか、心が折れそうな時が何回もあり、自分と向き合えてないという日々でした。

 

再起のきっかけは2軍での三浦監督の存在

もがき苦しんでいた去年、桑原の2軍での姿を見ていたのが、今シーズンから1軍で指揮を執る三浦監督だった。三浦監督は1メートル74センチとプロでは小柄だが、その体をいっぱい使った全力プレーを評価していた。その良さを見失わず、常に泥臭くグラウンドを走り回ることを求めた。

 

桑原選手

『お前らしくしっかりプレーしろ』と。自分らしさをなくしそうな時期だったので。苦しい時にずっと励まして頂いたので、なんとか1軍の舞台で勝ちに貢献したいという思いは強くなりました。背中を押してもらいました。

今シーズンは開幕スタメン

キャンプ、オープン戦を通して首脳陣の評価を得た桑原は3年ぶりに開幕戦の先発の座を勝ち取った。しかしチームが開幕から6連敗、10連敗、5連敗と大型連敗を繰り返す中での不注意な走塁。5月26日には満塁の場面で打球を後逸して3点を献上するミスもあった。

 

 

それでも三浦監督は辛抱強く起用し続けた。すると桑原はそれに応える形でバッティングの調子を上げ、6月は打率3割7分2厘、7月も3割8分1厘の好成績。チームも6月は12勝8敗2引き分けで今シーズン初めて月間勝ち越しを達成した。

桑原選手

本能で野球するって言い方おかしいですけど、僕も頭でも考えてますけど、やっぱり最後は勝ちたいっていう気持ち、それがすべてだと思う。もう何も失うものはないっていう感じで、どうせやるなら当たって砕けろっていう精神でやってるんで今でも。本当、割り切れないとそういう自分の良さも出てこないと思うので。

 

リードオフマンとして存在感

桑原はシーズン前半戦を終えて、打率はセ・リーグ3位の3割1分8厘。強力打線のリードオフマンとして存在感を見せている。辛抱強く自分を起用してくれる監督に結果で恩返しをして、最下位からチームを引き上げたいと意気込む。

 

桑原選手

監督がなんとかこう柔らかい表情になるといいますか、僕らのこと本当に思ってくれて信用して頂いてると思うので、勝つことで監督のうっぷんとかも晴れる。そうするためには僕は僕で1試合1試合、全力でプレーすることでしか貢献できないんで、そこにしっかり向き合ってこれからもやっていきたいと思います。

           

この記事を書いた人

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寺迫 紗良 記者

平成28年NHK入局。高知局、津局を経て、スポーツニュース部ではプロ野球やカーリングを担当。学生時代はソフトボール、現在はゴルフに熱中。特技は暗算(十段)。

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