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ブラインドサッカーの魅力を北澤豪が解説! 東京パラリンピック

2021-08-10 午後 01:00

視覚障害のある選手が、周囲の声を頼りに、転がると音の出るボールを、ドリブルやパスでつないでゴールを狙う「ブラインドサッカー」。

 

5人制サッカーとも呼ばれていて、パラリンピックの正式種目にもなっています。サッカー元日本代表で、一般社団法人 日本障がい者 サッカー連盟会長の北澤豪さんに、この競技の魅力や選手たちの“すごさ”を聞きました!

ブラインドサッカーの基礎知識

研ぎ澄まされた感覚が、すごい!

視覚に障害がある選手たちが「音」を頼りにプレーしている。まず、そこがすごい。

 

選手たちは、目でボールやゴールの位置を確認できないので、両耳で音の焦点を合わせてプレーしています。パラリンピックに出場するレベルの選手たちは「人や物の気配とか音の跳ね返り方で、ボールやゴールの位置が分かる」と話していますが、かなりの時間をかけて、音の焦点を合わせる習慣を身につけないと無理だと思う。見えない恐怖を乗り越えて、感覚を研ぎ澄ませてプレーし続けるのは、本当にすごい。

 


Jリーガーでも今の10倍くらいトレーニングしないと、あのレベルに到達できないかも。僕も、ブラインドサッカーに参加しますが、集中力を使うからなのか、すごく疲れる(笑)。

 

僕自身、現役のころに、もっと耳(音)を活用できていれば、もっといい選手になれたかなと思うこともある。それを気づかせてくれることも、この競技のすごさ、魅力かな(笑)。

ドリブルの基本は足元でのダブルタッチ

ブラインドサッカーでは、自分から半径1メートルの近い範囲でボールを扱うのが、基本。ボールが転がると音が鳴るけれど、自分からボールが離れるほど聞こえづらくなって、コントロールも難しくなるし、ミスが出やすくなる。

 


だから、足でボールを前に押し出すドリブルではなく、自分の股下の範囲内に置いて左右交互にダブルタッチしながら、ボールを運ぶドリブルが基本ですね。

 

“音を消す”フェイントにも注目!

一方で、ダブルタッチのドリブルだと、しょっちゅうボールの音が鳴るわけですよ。相手のディフェンダーにもドリブルする選手とボールの位置が分かってしまう。だから、ドリブルの途中であえてボールを止める。ピタっと止めて急に音を消すことで、相手に場所を分からなくさせてから、再びボールを動かしていく。レベルが高くなると、空中にボールを浮かす。宙に浮いている間は音が鳴らないから。そして、ボールが地面に落ちた瞬間にできるだけ速く反応する。いわゆるフェイントの1つですね。

 


基本を話しましたが、最近は“ボールを押し出すドリブル”をする選手も出てきた。
見えていないけど、しっかり空間を認識できている、ということでしょうね。

 

離れたところにポーンと蹴り出しながらドリブル。スペースに出されたパスへ駆け込んで、そのままダイレクトでシュート。ワンツーパスで抜け出して、相手の選手を2,3人引きつけてから逆サイドの空いたスペースにロングパス。こんなプレーも、ブラインドサッカーで見られるようになりました。

“しゃべり” も、すごい!

みんな「しゃべり」がうまい。一緒に話をしていて、おもしろい。素早く、具体的に、正確な情報を言語化する能力に、みんな、ものすごく長けている。プレー中の「あれ」「これ」「そこ」なんて言葉は、曖昧で伝わらないから使わない。

 

僕らは「もうちょい前!」って言うけれど、「もうちょい」は、人によって、感覚が違う。だから、目が見える監督、ゴールキーパーは、ボールや相手、ゴールまでの距離が、何メートルあって、どの角度から、どれくらいの高さにシュートを打つべきなのか、選手に明確なイメージをさせる言い方をしています。こんなところも、すごいですね。

 

攻撃より守備が難しい!

ディフェンスの選手は、ボールを奪うときに「ボイ」という声を出さないといけない。これは声を出さないとぶつかっちゃうからで、安全上のルール。ブラインドサッカーでは、受け身になる守備の方が難しいと思う。自分から仕掛けていく攻撃と逆に相手が迫ってくる守備。選手たちは攻守それぞれの視点と発想をガンガン切り替えてプレーしています。

 

コンタクトプレーが激しい!

選手どうしが、つかんだり、ぶつかったり、すごすぎる。試合会場が静かというのもあるけど、選手たちがぶつかりあう音が、観客席まで、よく聞こえる。とくに代表戦は、フィジカルコンタクトが多すぎて、びっくりするかもしれない。フェンスに激突する音もすごい(笑)。もう、ほとんど格闘技です。だから、選手たちは肉体的な強さもないとプレーできません。

目指すはメダル!日本代表の意気込み

コロナ禍で初めて開催されたパラ国際大会で練習する日本代表選手

 

正直、日本は、まだまだ強くはない。世界ランキングは12位です。日本はこれまで予選を勝ち抜けなくて、パラリンピックに出られませんでした。今回の東京大会が初出場だけど、6月に行われたプレ大会では、2位になれました!決勝でアルゼンチンに負けましたが、国際舞台で、ここまで上位に入ったことがなかった。だから、代表選手たちは「東京パラリンピックでメダルを獲る!」ってみんな張り切っています。

“ストリートサッカー”で磨かれた南米勢は強い

ブラインドサッカーの世界ランキングは、現在、アルゼンチンが1位。パラリンピックで正式種目になった2004年アテネ大会から4連覇中のブラジル、コロンビアの南米勢は強い。

 

コロンビア代表

 

そして、南米が強い理由がちゃんとある。コロンビア代表なんかは、国道が2つ重なっている公園とかでも練習しています。常にゴーッと車が走っていて、もうめちゃめちゃうるさいわけ。それでも彼らは全然関係なくプレーしている。たくましいというか、さすがですよ。

 

ブラジル代表 リカルド選手

 

ブラジル代表のエースといわれるリカルドは、幼いころから健常者と一緒にストリートでサッカーをやってきた。遊びの中でのことだから、目が見えないからってハンデもつけないでしょ。ブラインドサッカーを習って身につけた技術じゃないんだよね。もう理屈とかじゃなく、感覚で抜いていく。一生懸命プレーしながらも、勝つためのずるさや賢さも身につけています。

パラリンピック開催の意味は、すごく大きい

ブラインドサッカーを観戦したり体験したりすると、目が見えている人だけの生活環境は良くないなと思います。コロナ禍で、よく言われるソーシャルディスタンスも目の見えない人には分からないことですよね?アルコール消毒液の場所を知らせる音なんて鳴らない。

 

 

弱視の人は物をつかんで間近で物を見なければならないのに、なるべく物に触るなと言われる時代。パラリンピックの開幕が近づいてきたのに、コロナ禍によって本来すべての人にアナウンスすべきことができておらず、人々の理解や配慮がすごく薄まってしまっている感じがする。病気や事故で視力を失った方に限らず、高齢化社会では身近なところにケアすべきことがたくさんある。他人事ではないと、とらえなければならない。

 

2019年IBSA ブラインドサッカー ワールドグランプリ 日本代表

 

そのことをスポーツという親しみやすいきっかけで気づかせてくれるのが、ブラインドサッカーだと思う。だから、パラリンピックで行われる意味は、すごく大きいと思います。

北澤 豪

サッカー元日本代表/日本サッカー協会理事/日本障がい者サッカー連盟会長

 

 

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