ストーリー野球

東京オリンピックで「打つ自信はあります」 金メダルへ覚悟はできた ヤクルト 村上宗隆 

2021-07-14 午後 09:00

2008年8月の北京オリンピック。金メダルを期待された野球日本代表は、まさかのメダルなしという屈辱を味わった。

 

「全然記憶にないです」

 

村上は当時8歳の小学3年生。野球は週に1回、地域で集まってやっていたが、オリンピックの野球をテレビで見た覚えはない。

 

それから13年。オリンピックで野球が復活する。熊本の少年は、日本を代表するスラッガーに成長し、日の丸を背負って悲願の金メダルへ戦いに挑もうとしている。

 

「打つ自信はあります」

 

代表最年少の21歳。覚悟はできている。

1年延期でつかんだチャンス

2020年に開かれるはずだった東京オリンピック。前の年にプロ2年目で新人王を獲得した村上だが、プレミア12ではメンバーに入れず、まだ出場は難しいと感じていた。

 

 

その後、開催の1年延期が決まり、昨シーズンは打率3割7厘、ホームラン28本、86打点の好成績をマーク。シーズンが終わったころには、オリンピックに出たいという気持ちが強くなっていた。

 

村上 選手

去年の開催だったら、少し諦めている部分があったんですけど、1年延期になって、去年しっかり結果も残すことができたし、ある程度自信もついたので。

 

シーズンオフには、雑誌の企画で競泳の池江璃花子選手と対談する機会があった。池江選手は村上より一学年下だが、同じ2000年生まれ。白血病の治療を乗り越え、レースに復帰した池江選手から競技への思いを聞いた。

 

4月の競泳日本選手権100mバタフライで優勝した池江選手

 

その後、池江選手が4月の日本選手権で東京オリンピック内定を勝ち取り、涙する映像を目に焼き付けた。

 

村上 選手

本人にしか分からないつらさが、僕たちの想像の何倍もたくさんあったと思います。本当にいい刺激をもらったし、僕も頑張ってオリンピックに選ばれたいという思いもさらに増しました。

 

自分も同じ舞台に立ちたい。それから2か月後、村上選手もオリンピック日本代表に選ばれ、その願いは現実となった。

 

村上 選手

日の丸を背負って(池江選手と)一緒に戦えることを誇りに思います。本当に日本の皆さんが期待されていると思うので、期待に応えられるようにとにかく必死に頑張りたい。

最後に決まった代表のサード

 

日本代表のメンバー選考の中で、“サード”は稲葉篤紀監督が「最後の最後まで迷った」というポジションだった。

 

2年前のプレミア12を含めてソフトバンクの松田宣浩選手が長年選ばれ、代表チームでムードメーカーの役割も果たしてきた。また、昨シーズン、村上選手を上回るホームランや打点をマークした巨人の岡本和真選手もいる。

 

その中で稲葉監督が最終的に村上に決めたのは、国際大会に対応できるバッティングスタイルを持っているという期待からだ。

 

稲葉 監督

村上選手は逆方向に強い打球を打てる。(プレミア12で成績を残した)浅村栄斗選手も鈴木誠也選手もそれができる。どうしても外国人ピッチャーの強くて動くボールには差し込まれ気味になる。差し込まれたボールでもしっかり押し込めるというのが大事ではないかと思う。

 

左バッターの村上選手のホームランの方向を見てみると、センターからレフトの逆方向に数多く打っていることが分かる。(2021年は、7月13日現在)

2019年 左 12 センター7        右 17

2020年 左 10 センター5        右 13

2021年 左   7 センター4        右 15

 

広角に長打を打てるバッティングが、外国人ピッチャーの手元で変化するボールにも対応しやすいと稲葉監督は見た。それは村上自身の考えとも一致している。

 

村上 選手

動くボールの難しさは感じていません。しっかり逆方向に強い打球を打てるようになれれば、どんな球でも打てるかなと思う。

 

一方で、今シーズンはホームラン数はここまで26本とハイペースだが、ライトへの引っ張り方向の打球が多い。村上はバッティング内容にはまったく満足していないという。

 

村上 選手

たぶん、それが今状態があんまり上がってきていない原因だと思う。僕の場合、逆方向に打つことができるときは自分の中で状態がいいなと思うことが多々ある。今はなかなかそっち方向に大きいのが打てなくなっている。自分が思い描くような打球が打ててないところがだめかなというふうに思う。今シーズンは自分の中で状態がいいなと思って打席に立つことはあまりない。もっともっとできるんじゃないかという自分の中のモヤモヤはすごくある。前半戦のくくりとしてみたら全然だめだなという感じ。ホームランは調子悪くても、試合をこなしていければ打てる自信はありますが、僕が目指しているところはそこじゃない。しっかり強い打球を逆方向に打てるように頑張りたい。

走塁への意識の高さ

 

稲葉監督が村上を評価したのは、バッティングだけではない。“スピード&パワー”を掲げる日本代表の戦略に合っているという考えもあったという。

 

稲葉 監督

村上選手は走れるんですよね。走れるチャンスをうかがっているのかどうかがすごく大事なところだと思っていて。村上選手は失敗するときもあるが、走ろうとする。なんとか相手の隙をついて次の塁を狙うという姿勢が、国際大会でもすごく大事。

 

2020年11月5日 阪神戦でホームスチールを成功させた

 

村上選手は昨シーズン、全試合で4番を打つなかで11盗塁をマーク。11月5日には、二塁へ、三塁へと盗塁を決めた後、二塁けん制のすきにホームスチールを成功させ、プロ野球記録に並ぶ1イニング3盗塁を達成した。

 

盗塁だけではない。ことし7月7日の阪神戦では二塁から、ファーストへのファウルフライでタッチアップし、三塁を陥れる好走塁を見せた。主軸でありながら、果敢に次の塁を狙う姿勢がシーズンを通して見える。

 

村上 選手

自分の中では足が遅い方だと思っていないし、走塁の面ではいろんな技術を身につけていければ上達していくものだと思う。そういうところにも僕はしっかり目を向けてやっていきたいと思っているし、走攻守すべてにおいて上のレベルを目指してやっていきたい。

初めての国際大会

 

日本代表は12歳、15歳、18歳以下など、さまざまな年代があるが、村上選手は意外に世代別の日本代表に選ばれたことがない。

 

おととし3月のメキシコとの強化試合では日本代表としてプレーしたが、東京オリンピックが野球人生で初めての国際大会出場となる。初めての舞台に怖さはあるか尋ねると、村上は「ないですね」と即答した。

 

村上 選手

日本のプロ野球でも外国人ピッチャーと対戦している。初めて対戦するピッチャーはやっぱり難しいと思うが、打つ自信もあります。打てると思って常日頃から打席に立とうという意識なので、難しかろうが、打たなきゃいけないことには変わりない。試合をしていく中で感じることがあればすぐにトライしないと、短期決戦なので、すぐに終わってしまう。そういうところもいろんな方と話し合いながらしっかり対応していけたらなと思う。

 

 

“打つ自信はある” 

 

オリンピックという重圧のかかる舞台に臨む村上は、覚悟を持ってはっきりと言い切った。自信をみなぎらせる21歳が世界を相手にどんなプレーを見せてくれるのか、楽しみでならない。  

この記事を書いた人

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杉井 浩太 記者

平成20年NHK入局。富山県出身。
新潟、横浜局を経てスポーツニュース部。ヤクルト、日本代表、NPBを取材中。

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