特集 大関 照ノ富士 綱とりに挑む男の不退転の決意 大相撲名古屋場所

6場所連続休場から復帰した白鵬の相撲に注目が集まる名古屋場所。横綱が進退をかける意向を示して場所に臨む中、綱とりに挑む男も不退転の決意で臨んでいる。
いつ辞めてもおかしくないという覚悟の上で最後かもしれないという思いでやっている。(横綱に)上がっても上がれなくても、納得できる辞め方をしたい。
言葉の主は大関・照ノ富士。大関で初めて優勝した先場所千秋楽翌日の会見。横綱昇進への期待が膨らむ中、みずから“進退”に触れたのが印象的だった。
大関のこれまでの相撲人生を考えれば当然かもしれない。23歳で大関昇進を果たしながらも、ひざのけがや糖尿病で一時は序二段にまで番付を下げ、引退も頭をよぎったという。
それでも周りのサポートや懸命のリハビリを続けて復帰。稽古やトレーニングを重ねて元の番付に戻ってきた。栄光と挫折の両方を味わってきたからこそ、“毎日が最後”という思いを胸に完全燃焼を誓っているのだろう。
4日目の相手は前頭筆頭の大栄翔。優勝経験のある押し相撲の実力者に押し込まれ、はたいてかわそうとするも土俵際まで後退し俵に足がかかって万事休すか。
何とか踏みとどまって、ここから圧力をかけた。最後は寄り切りで逆転勝ちし初日からの連勝を守った。
照ノ富士
ぎりぎりだったけど、白星でよかったかなと思う。全部思い通りにいってたら、もちろん全部勝つし、相手がいる中で思い通りにいかないこともある。その中で1つでも白星を重ねていければいいかなと思う。
大関は淡々と話した。完勝にはほど遠いが、勝利への執念がかいま見えた土俵。日々の相撲で完全燃焼を続ければ大きな頂が近づいてくるはずだ。
この記事を書いた人

小野 慎吾 記者
平成28年NHK入局。岐阜局を経て、2019年8月からスポーツニュース部で格闘技(大相撲、ボクシングなど)を担当。前職はスポーツ紙記者。