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ハンドボール土井選手はなぜインフルエンサー“レミたん”に?

2021-07-06 午前 11:26

世界中で利用者が急増するショートムービーアプリ。若い世代を中心に、日々たくさんの動画が投稿されています。芸能人、著名人でもその利用者は多く、人気を集めればそのフォロワー数は百万人に達することも!

そんな中、240万人以上(2021年6月現在)というフォロワー数を抱える異色のアスリートを発見!

投稿は、”変顔”や絶妙な動きで笑いを誘う、ひょうきんな動画ばかり。

その正体は“レミたん”こと、土井 レミイ 杏利選手。東京オリンピックでも日本代表に選出された 、ハンドボールのトッププレーヤーです。

 

しかも練習で忙しいはずなのに、毎日のように動画を投稿するレミたん。

 

いったいなぜ?動画投稿の舞台裏、その思いをリモートで取材させていただきました!

土井 レミイ 杏利

フランス人の父と日本人の母の間に生まれ、小学3年生でハンドボールを始める。大学進学後、語学留学のためにフランスへ渡り、2012年に1部リーグに属するシャンベリ・サヴォワ・ハンドボールのセカンドチームの練習に参加、その後プロ契約を結ぶ。2019年シーズンまで6シーズンをフランスで活躍。2019年より日本ハンドボールリーグ加盟チームの大崎電気にて2年間プレーし、その後ジークスター東京に移籍。日本代表にも選出されている。ショートムービーアプリでは240万人(2021年6月現在)を超えるフォロワーを持ち、スポーツファンのみならず、幅広い世代からインフルエンサーとして注目されている。

動画は日常の自分

 

――ショートムービーアプリ(以下、SNS)では240万人を超えるフォロワーがいますね。日本の有名芸能人でも100万人を超えている人はあまりいない中で、これは相当すごいことです!SNSを始めたことで、大きな変化があったのではないですか?

 

やっぱり周囲や世間からの注目のされ方は変わりましたね。今の時代、アスリートに限らず、どんな業界でもプラスアルファの要素があったほうが注目されやすいと思います。ハンドボール選手の僕がSNSをやることで、一般のファンの皆さんだけではなく、メディアにも注目されるようになりました。いまこうしてインタビューをしてもらっているのも、その影響のひとつですよね。

 

――SNSをはじめた当初はハンドボール選手であることを名乗っていなかったそうですね。なぜですか?

 

最初は友達に誘われてはじめただけなので、特にハンドボール選手だと主張する必要がなかったんですよ。友達を面白おかしく笑わせたかっただけなので(笑)。ただ、ある日急にバズって、フォロワーがたくさん増えたんです。その時はハンドボールを知ってもらうツールにもなるかもって思いました。でも、そこでハンドボールのことばかりアップしてしまうと、今までと同じになっちゃうなと思ったんですよね。

 

――今までと同じ、というと?

 

実は、これまでも他のSNSでハンドボールを知ってもらうための普及活動はしていたんですけど、まったく注目されなくて、普及には全然つながっていなかったんです。そこで、ハンドボールを無理に押し出すのではなくて、“日常の自分”を出すことでフォロワーの皆さんに楽しんでもらうことにしたんです。まずは、自分のことに興味を持ってもらって、その後にハンドボールのことも伝えていったほうが興味を持ってもらえるのではないかと考えました。だから、あえてハンドボール選手ということは出さずに、まずは自分のことを好きになってもらうことを重視しました。

 

――普段からあんな感じなんですか!?

 

そうですよ!だからチームメイトとか友人とかは特に驚きはなかったです。僕の今までの“普通”をアップしているだけなので(笑)。もともとそうやって人を喜ばせることが好きだったんですよ。僕がもっとも幸せを感じる瞬間って、“幸せな人を見ている瞬間”なんですよね。だから、喜んでいる人を見ているだけで、僕も幸せな気持ちになれるし、満足なんです。よくギブアンドテイクっていうじゃないですか。でも、僕はテイクがいらないんです。ギブアンドギブで、ただただ人が喜んでくれたら、最高にハッピー(笑)。

 

映画『スーサイド・スクワッド』よりジョーカーのコスプレ。完成度が高い!

インフルエンサーではなく、幸せを届ける人になりたい

――表情や動きで笑わせる動画が多いですが、参考にしているものはありますか?

 

バズる動画にもトレンドがあるので、それを参考にすることはあるんですが、ほかのインフルエンサーに影響を受けているということはないです。というか、普段の自分なので、まったくの自己流です(笑)。ただ、インフルエンサーではないですが、影響を受けている人はいますよ。⼩さい頃からジム・キャリーや志村けんさん、チャップリンは大好きでした。彼らに共通しているのは、笑いに国境がないこと。ビジュアルコメディというか。言葉ではなく、表情や動きで笑いを届けるから、世界中の誰もが面白さを共有できる。そこが素晴らしいなって思うんですよ。『Mr.ビーン』のローワン・アトキンソンの表情の使い方とか、本当に素晴らしいですよね。そういう人たちからの影響は受けていると思います。

 

――なるほど、それならば動画という形で表現するのが最適ですね。ちなみに、どの動画も完成度がとても高いですが、かなりこだわりが強いのでしょうか?

 

ちゃんと数えたことはないんですが、15秒の動画を撮るのに100テイクぐらいかけることもあります。完璧主義なので自分が満足いくまで撮ります。自分自身でも楽しめないと嫌なんです(笑)。

 

動画では変顔ばかりの“レミたん”も、試合では一変!日本を代表するトッププレーヤーの土井選手

 

――多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーになって、目指していることはありますか?

 

自分自身は、そこまでインフルエンサーっていう意識はもってないんです。よく『フォロワー〇万人を目指します』って宣言する人がいますけど、僕はそこまで数字を伸ばすことに興味がないんです。むしろ今フォローしてくれている方たちに、どれだけ楽しさを提供できるかってことが一番大事だと思っています。毎日フォロワーの皆さんに満足してもらうってすごく難しいことですし、大事なことだと思うんですよね。

 

そうやってフォロワーの方が満足してくれて、僕を応援してくれているっていう構図がすごく幸せなことだと思います。SNSを始めてから、皆さんがすごく応援のコメントをくださるんですよ。子どもや中高生、その親御さんとか、これまで僕のことを知らなかった人たちが応援のコメントを送ってくれると、すごくうれしいです。

 

――フォロワーを楽しませたい。とてもシンプルだけど大切な動機ですね!

 

僕は海外のオーディション番組が好きなんですけど、番組を見ているとボロボロ泣いちゃうんですよ。夢を掴んだ人を見ていると、ついつい僕も感動しちゃう。そういう喜びというか幸せな感情を、みんなに届けたいっていう気持ちが強いのかもしれない。だから、僕の動画で少しでもクスって笑ってもらえて、ほんの少しの間だけでも、幸せな気持ちになってほしいだけなんですよ。

どんな困難も、見方を変えれば楽しめる!

2014年、フランス1部リーグ時代の土井選手

 

――「動画を見て幸せな気持ちになってほしい。」そう思うようになったのには何かきっかけがあるのでしょうか?

 

最近は暗いニュースばかりが流れていて、暗い毎日になりがちです。ですが、たとえ環境が変わらなくても、自分の見方次第で楽しく思えてくることもあると僕は思うんです。そういうことを強く意識するようになったのは、昔フランスのクラブチームで人種差別にあったからですね。なにも悪い事をしていないのに、毎日ひどい言葉を浴びせられて、パスさえ回ってこない時期があった。⼈種差別をされていたことで精神的にも追いつめられて、家では震えや汗が止まらず、なぜかわからないけど家で包丁を持っていた時もありました。でも、ここで変わらないとこのまま終わってしまう。せっかく世界でもトップチームに入ることができたのに、このまま終わったら意味がない。そんな苦しい状況をどう変えられるか考えてみたら、『ハンドボールは楽しむもの』という自分の中の原点に気付くことが出来たんです。そして、どんな状況でも楽しんでしまおうと思いました。そこからはチームに溶け込めるようになったし、困難も乗り越えていけました。

 

だから、皆さんにもちょっと意識を変えて、どこかで「楽しもう!」と思ってほしいです。そうすれば、きっと乗り越えられない困難はないはずですから。

 

 

――この先、目指していることはありますか?

 

ハンドボールでは、もちろんオリンピックで活躍すること。私生活もふまえて言ったら、一般の方々の日常のなかに当たり前のようにハンドボールがあふれるような世界になったら、いい未来だなって思いますね。個人的なことでいえば、ひとりでも多くの人が幸せでいられるような、そんないい影響を与えられる人間になれたらなって思っています。

 

――今後もSNSを通じて、ハンドボールを広めていきたいですか?

 

もちろん!「ハンドボール部に入りました!」とか「ハンドボール始めました!」とかコメントをもらうと、本当に心の底からうれしいんですよ。全国のハンドボール部から「教えに来てください」っていうコメントをもらうこともあります。

 

いずれはSNSだけでなく、実際に会ってハンドボールの素晴らしさを伝えられたらと思っています。実は僕、教えるのが得意なんですよ。だから、コロナが収束したら、そういった活動も広げていきたいですね。

 

僕はSNSだけじゃなく、本当にたくさんの人に支えられて生きてきました。自分ひとりで成し遂げられたことなんてなかったと思います。だから、リアルでもSNS上でも出会った方々には感謝しかありません。これからも皆さんに感謝の気持ちを忘れずに生きていくことだけは確かですね。

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