ストーリーサッカー

ロシアW杯総括 世界のサッカー 今後どうなる?

2018-07-18 午後 0:00

サッカーワールドカップロシア大会は、フランスの5大会ぶり2回目の優勝で幕を閉じました。今後の世界のサッカーの方向性を決めるとも言われるワールドカップで見えたのは何か。そして新たに導入された取り組みの効果はどうだったのか。スポーツニュース部の山本脩太記者が解説します。

史上最高の大会

優勝したフランス代表チーム (2018年 W杯)

 

旧共産圏の国で初めての開催となったワールドカップロシア大会は、世界ランキング70位と出場32チーム中、最も順位が下だった地元ロシアがベスト8にまで勝ち上がったこともあって、全64試合の観客動員数は、300万人の大台を超え、大会前に懸念されていた盛り上がりは最高潮のままフィナーレを迎えました。

 

2016年にFIFA=国際サッカー連盟の会長に就任し、今回が初めてのワールドカップとなったインファンティーノ会長は「史上最高の大会になった」と大会の成功を強調し、試合内容だけでなく、観客の輸送や警備体制などピッチの内外で大きなトラブルなくスムーズな大会運営が行われたことを強調しました。

ヨーロッパ勢が席巻

ロシア対サウジアラビア (2018年 W杯)

 

大会は、開幕戦で地元のロシアがサウジアラビアに大量5得点を奪って勝利したことで、一気に盛り上がりました。2日目にはポルトガルのスーパースター、クリスチアーノ・ロナウド選手が3得点、ハットトリックの活躍。一方で4日目には、前回大会の優勝チームで世界ランキング1位のドイツが、初戦でメキシコに敗れる波乱が起きました。

 

 

決勝トーナメントに進んだ16チームはヨーロッパが10、南米が4、北中米カリブ海が1、アジアが日本の1で、世界ランキング上位のドイツやポーランドは1次リーグを突破できませんでした。大会はその後、ヨーロッパ勢が力を発揮。ブラジルやウルグアイは準々決勝で姿を消し、ベスト4に残ったのは2006年のドイツ大会以来3大会ぶりにすべてヨーロッパ勢となりました。

勝敗を大きく左右したものとは

エムバペ選手(写真 左)、グリーズマン選手(写真 右)

 

優勝したフランス、そして3位のベルギーは、ともに「カウンター攻撃」を大きな武器としていました。

 

フランスは、準々決勝から決勝までの3試合で2失点の堅い守りをベースに、抜群のスピードを持つ19歳のエムバペ選手やグリーズマン選手などの攻撃陣が相手が守備を整える前に素早く前線に攻め上がるカウンター攻撃を決勝でも鮮やかに決め、優勝をつかみ取りました。

 

史上最高の3位に入ったベルギーは、決勝トーナメント1回戦の日本戦で後半終了間際のアディショナルタイムにカウンター攻撃から決勝点を奪いました。本田圭佑選手が蹴ったコーナーキックのボールをキャッチしたゴールキーパーが、パスを出してからわずか9秒余りという鮮やかな連係でゴールを奪った「高速カウンター」は、日本の初のベスト8の夢を砕くとともに、世界に大きな衝撃を与えました。

 

スペイン対ロシア (2018年 W杯)

 

逆に、一時代を築いたボールを保持して相手の守備のスキをつく「ポゼッションサッカー」は苦戦を強いられました。鮮やかにパスをつなぐポゼッションサッカーが代名詞のスペインは、決勝トーナメント1回戦でボール保持率が75%とロシアを圧倒しながらも勝ちきることができず、ペナルティーキック戦の末敗退しました。

 

ドイツもまた1次リーグの韓国戦はボール保持率が70%と圧倒していたものの、1点も奪うことができず最後は韓国のカウンター攻撃に屈しました。

 

カウンター攻撃とともにFIFAの技術研究グループは今大会の特徴の1つに「組織的な守備」を挙げました。相手の攻撃を「1対1」で守るだけでなく、複数の選手が連動し、組織的にボールを奪いに行くという守り方です。

 

メッシ選手 (写真 中央)

 

相手に応じて、あるいは試合の流れの中で守備のフォーメーションを柔軟に変更するチームもあり、アルゼンチンのメッシ選手やブラジルのネイマール選手といったスター選手であっても自由にプレーできるスペースがないため、持ち味を十分に発揮できないまま大会を去ることになりました。「組織的な守備」、そして「カウンター攻撃」が今大会の勝敗を大きく左右したのです。

新たな取り組み 大きく影響

VRA判定の様子 (フランス対クロアチア 2018年 W杯)

 

FIFAは今大会、ワールドカップで初めて「ビデオ判定」を導入しました。ビデオ判定は、VAR=ビデオ・アシスタント・レフェリーと呼ばれる審判が映像でプレーを確認して主審に助言を行うシステムで、「ペナルティーキック」や「レッドカード」などの判定で明らかな誤審や重大な見落としの可能性があった場合に、VARが無線で主審に助言するなどします。

 

今大会では、ペナルティーキックの数が「29」となり、前回ブラジル大会の「12」から大幅に増えました。決勝でもVARによる映像判定でクロアチアのハンドの反則が明らかになったことで、フランスにペナルティーキックが与えられ勝ち越し点につながりました。

 

FIFAのインファンティーノ会長は「ラフプレーの減少などの効果もあり、今後、ビデオ判定抜きのワールドカップは考えられない」と導入の成果を強調しています。

 

そして、もう1つ、新たに導入されたのが、日本の決勝トーナメント進出を決定づけた「警告ポイント」です。イエローカード1枚はマイナス1ポイント、レッドカードによる1発退場はマイナス4ポイントなどと計算され、1次リーグで勝ち点や得失点差などが並んだ場合の順位を決める際に用いられました。

 

 

日本は、ポーランドとの1次リーグ最終戦で、リードされていたにもかかわらず、終盤は、同じ時間に行われていた勝ち点で並ぶセネガルの試合状況の情報を得たうえで、ボール回しをして時間稼ぎをする戦い方を決断。セネガルがコロンビアに敗れたことで、日本は警告ポイントの差で上回って決勝トーナメント進出を決めました。日本の戦い方には賛否が分かれましたが、わずかイエローカード2枚の差が明暗を分けました。

 

1次リーグ敗退となったセネガルは、前半にエースのマネ選手が相手に倒された場面で、一度は出たペナルティーキックの判定がVARでの映像確認の末に覆っていました。その後、セネガルは、コロンビアに先制されて0対1で敗れたのです。VARが導入されていなければ、試合結果は変わっていた可能性があり、また日本は終盤に時間稼ぎをするような戦いをしなかった可能性もあります。

 

今大会から導入された「VAR」と「警告ポイント」が、日本の決勝トーナメント進出に大きく影響していました。

ピッチ外で「中国」が存在感

日本対ポーランド (2018年 W杯)

 

今大会、ピッチの外では試合に出場していない中国が存在感を示しました。現在FIFAの主要スポンサーになっている12社のうち中国の企業は4社で、日本の企業は1社もありません。中国の調査会社によると大会期間中に中国の企業が投じた広告費の総額は、日本円にしておよそ900億円と最も多く、2番目に多かったアメリカの2倍以上だったということです。

 

ファンIDを手にするプーチン大統領

 

また、多くの観客も中国からロシアを訪れました。今大会から導入された試合観戦に必要な「ファンID」と呼ばれる身分証明書は、中国の観客およそ6万7000人に発行され、地元ロシアを除くと最も多くなり、決勝にも中国からの大勢の観客が訪れました。

W杯の法則 今回は?

ワールドカップでは、さまざまな「法則」が語られています。それらはどうだったのか、検証します。

 

クロアチア代表チーム (2018年 W杯)

 

「5大会ごとに初優勝のチームが誕生」
1958年のスウェーデン大会ではブラジルが初優勝、1978年は開催国のアルゼンチンが初優勝、そして1998年は開催国のフランスが初優勝と、ワールドカップではこれまで5大会ごとに初優勝のチームが誕生してきました。今大会でクロアチアが初優勝していれば、この法則は継続していましたが、フランスの2回目の優勝によって途切れてしまいました。

 

ベルギー代表 マルティネス監督

 

「外国人監督のチームは優勝できない」
これまで、ワールドカップで優勝したチームで外国人監督が率いて優勝したことはありません。今大会でフランスは元代表キャプテンのデシャン監督が率いて、史上3人目となる選手と監督の両方でのワールドカップ制覇を果たしました。3位のベルギーを率いたマルティネス監督はスペイン人でしたが、準決勝で敗れたため、史上初の快挙は次回以降に持ち越しとなりました。

4年後はカタールへ

W杯主催国の継承式典にて (左から)タミム首長 インファンティーノ会長 プーチン大統領

 

2022年のワールドカップはカタールが舞台です。ワールドカップは2026年大会がアメリカ、カナダ、メキシコの3か国の共催となることが今大会の開幕前に決まり、出場チームが32から48に拡大されることも決まりましたが、8年後を待たずにカタール大会で48チームに拡大される可能性があります。

 

これについてFIFAのインファンティーノ会長は「数か月以内に決めたい」と話しており、出場チームが多くなれば、予選の方式などにも影響が出る可能性があります。

 

また、中東という暑さの厳しい気象条件を考慮し、FIFAは、開催時期を11月から12月に決定しました。北半球では初めての「冬のワールドカップ」となり、各国のリーグ戦などの開催時期にも影響が出ることは避けられません。

 

サッカーの「トレンド」が変化し、またワールドカップを取り巻く環境も変わり続けています。新監督の下、新たなスタートをきる日本代表には「変化」に対応し、より強くさらに進化した姿で4年後のピッチに立つことを期待したいと思います。

山本脩太 記者

スポーツニュース部記者

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