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パフォーマンスを上げる!プロスポーツ選手も活用するアロマテラピーの実力とは?

2021-06-29 午前 11:30

リラクゼーションに用いるイメージの強い、アロマテラピー。実は疲労回復やメンタルケアなどにも幅広く活用できることから、スポーツ界でも取り入れる選手が増えているといいます。そこで今回は、「アスリートアロマトレーナー」として多くのアスリートにアロマテラピーを使ったケアを行っている、下川路さやかさんにお話を伺いました。

 

 

下川路さやか

アロマテラピースクール代表講師。
・アスリートアロマトレーナー
・英国IFA認定国際アロマセラピスト
・AEAJ(公益社団法人日本アロマ環境協会)認定アロマセラピスト
・MMA認定メディカルアロマリンパドレナージセラピスト

2011年より所属スクールにてアスリートアロマ部門を立ち上げ、澤、川澄、鮫島選手などが所属していた女子サッカーINAC神戸の選手をケア。チームの3連覇、4冠をサポ―ト。
他にもテニス、バスケット、ラグビー、陸上選手のケアに関わる。現在はアスリートアロマトレーナー講座を担当し、普及と後進の育成に力を注ぐ。

アスリートも実感!心身に好影響をもたらすアロマテラピー

ーー まずは、アロマテラピーについて教えてください。アロマが私たちの身体や心にどのような影響を与えるのでしょうか?

 

アロマテラピーには2つの作用があります。


1つ目は香りが与える影響。人間には視覚や味覚を始めとする「五感」がありますが、そのひとつである嗅覚は唯一ダイレクトに脳に伝わる感覚です。香りを感知すると感情や本能を司る「大脳辺縁系」や、自律神経系を司る「視床下部」に情報が伝わり、ホルモン分泌や免疫機能、自律神経といった心身のバランスを整えます。

 

2つ目は皮膚や筋肉への直接的な影響。精油の種類によっては痛みを和らげたり、筋肉疲労回復に役立ったりと直接的に働きかけるものもあります。香りの成分は分子が小さいので、皮膚の奥にある毛細血管まで届きます。

 

ここで気を付けていただきたいのが「アロマオイル」と呼ばれるものと「精油」は違うということ。精油は植物に含まれる香り成分を抽出した天然成分100%の揮発性芳香物質のことです。アロマオイルと表記のあるものには人工香料などが含まれたものもあります。天然の植物成分でできた「精油」でなければアロマテラピー本来の働き、例えば皮膚や筋肉への影響はありませんので、購入時には注意してくださいね。

 


アロマテラピーというと「香りで癒しやリラックスをする」というイメージが強いですが、病気ではないけれど体の調子が優れなかったり、気持ちが不安定だったりする時、いわゆる「予防」や「未病」に力を発揮してくれます。

 

ーー 香りだけでなく、皮膚や筋肉にも働きかけることができるとは知りませんでした!では、近年増えてきたというスポーツ界においては、アロマテラピーはどのように使われていますか?

 

私たちが行っているアスリートアロマテラピーでは、主にスポーツ向けのオイルマッサージを行っています。マッサージにはホホバオイルなどの植物油を使用し、その植物油に精油を数滴ブレンドします。

 

ホホバの実

 

精油は濃度が非常に高いので直接肌などに使用することはなく、植物油などで希釈して使用します。ホホバオイルの他にも椿油や食用ではないオリーブオイルなどの植物オイルでもOKです。この希釈用のオイルを「キャリアオイル」と言います。

 

前述したように精油は疲労回復や痛みの軽減に働きかける力があるので、選手に合わせた精油を3〜4種類ブレンドして日々の疲労ケアのサポートをしています。香りや成分の力もさることながら、キャリアオイルを使うことで滑りがよくなるので、肌や筋肉への負担軽減や揉み返しが起こりにくいというメリットもあげられます。

 


もうひとつ重要な働きとしては、メンタルケアがあります。アスリートは身体を鍛えるだけでなくメンタル管理も重要なので、精神面のサポートも精油を使用し行っています。例えば、メンタルが変動しやすい海外遠征や試合の前に選手自身で使えるように、選手毎に合わせた精油をブレンドしたオイルを提供しています。実際にアロマを取り入れるアスリートは年々増えていて、「身体と心を一気にリラックスさせることができる」「アロママッサージを受けた翌日は身体が軽くて動きやすい」「集中力が上がってパフォーマンスが向上した」などといった嬉しいお声もたくさんいただいています。

日本にも広がるスポーツアロマテラピー

ーー そもそも、いつ頃からスポーツにアロマテラピーが取り入れられ始めたのでしょうか?

 

アロマテラピーは元々イギリス発祥で、フランスやベルギーでは「メディカルアロマセラピー」として医療行為のひとつになっているほどスタンダードなものです。スポーツ界でのアロマも、海外で1990年代に広がりはじめ、バルセロナオリンピックで選手が使ったという記録が残っています。現在ではオリンピックのブースにアロマケアが入ることが多くなっているので、海外の選手は経験している方が多いのではないかと思います。

 

日本で盛んになってきたのは2000年以降でしょうか。私が所属しているアロマスクールも活動を始めたのが2010年。女子サッカーのプロチーム、INAC神戸の監督からのお声がけから始まりました。当時の監督が、鍛えるというトレーニングだけでなく、酷使した心身を休めて整えるという「コンディショニング」を重要視していた関係で機会が生まれました。10年以上ケアを担当しています。ケアを受けた選手たちの口コミや評判が広がり、今ではサッカー以外にもラグビーや陸上選手など、サポートしている選手も増え続けています。

 

ーー 下川路さんは、実際にどんな選手にスポーツアロマテラピーを行ってこられましたか?

 

最初はINAC神戸のチームで澤穂希選手や川澄奈穂美選手のケアをさせていただきました。川澄選手は海外のチームに所属している今でも、日本に戻ってきたら受けに来てくださるほどアスリートアロマテラピーと相性が良いようです。あとは現日本代表の鮫島彩選手も5~6年ほどケアさせていただいています。

 

(左)澤穂希さん(中央)川澄奈穂美選手(右)鮫島彩選手

 

嗅覚は本能なので、その時々によって好みの香りが違ってくるのが非常に面白いです。2012年のロンドンオリンピックの時の話なのですが、帰国後に心身ともに疲れた選手たちのケアをしたときには、多くの選手がラベンダーの香りを希望しました。ラベンダーはリラックスや安眠したい時に最適な香りの一つなのですが、普段ラベンダーを好まない選手も選んだことが印象的でした。疲れたときには本能的にリラックスを求めているのだなと、あらためて感じました。

 

ロンドンオリンピックで銀メダルを獲得したなでしこジャパン

 

ーー アスリートに対して、具体的にはどんな精油を使ってどのようなケアをされているのですか?

 

例えば、心身を緩めてリラックスしたい時はラベンダーやオレンジの精油を加えたオイルマッサージ。マッサージプラス精油の効果で早くリラックスできたり、身体が温まって疲労回復に繋がったりと相乗効果があります。筋肉疲労を和らげたい時は、ウィンターグリーンやペパーミント、ローズマリーなどを使ってマッサージを行うことが多いですね。

 

海外遠征などで私たちが直接的なケアが行えない場合は、ホホバオイルなどの植物オイルに精油をブレンドしてすぐマッサージできる状態にして渡して、練習後や寝る前などに筋肉に沿って擦り込んでもらうようにしています。あまり手間をかけずにリラックスがしたい方やスイッチの切り替えがしたいという方には精油をブレンドした入浴剤や、スプレータイプのものを渡して手軽に使ってもらえるようにしています。

香りを味方に!日常で役立つアロマテラピー

ーー 幅広い使い方ができるアロマですが、私たち読者が日常生活で使うにはどのように取り入れると良いでしょうか?

 

 

手軽な取り入れ方の一つとして、精油をティッシュに垂らして香りを楽しむ方法があります。いわゆる「芳香浴」と言われる使い方ですが、直接嗅ぐと香りが強すぎるので、デスクやベッドサイドに置くなど少し距離を取るとよいですよ。日常での疲れや運動後の疲労回復には精油を使ったセルフマッサージもおすすめです。希釈用の植物油に精油をブレンドしてボトルに入れれば、オリジナルのマッサージ用アロマオイルが完成します。精油の濃度は1%が目安です。植物オイル30mlのボトルに対して精油約6滴程度を目安に薄めましょう。

 

好きな香りを選ぶのもいいですが、シーンに合った香りを選べるようになると、より効果的です。ここまででもお話したように、精油は種類によってそれぞれの働きをもっています。朝シャキッと目覚めたいのに、好きな香りだからとラベンダーを嗅いでいたら副交感神経が優位になってリラックスモードになってしまいますよね。シーンに合わせたおすすめの精油をご紹介しますので、参考にしてみてください。

 


<リラックス・安眠に>
ラベンダー、オレンジ・スイート、ベルガモット、フランキンセンス、マジョラム

 


<集中力・やる気オンに>
グレープフルーツ、レモン、ローズマリー、ユーカリ

 


<不安感をやわらげる>
ローズ、イランイラン、ジャスミン、ネロリ、マンダリン

 


<身体・筋肉の疲れに>
ジュニパー、ローズマリー、レモングラス、ラベンダー

 

※アロマテラピーは、病気やケガの治療を目的とした医療行為ではありません。精油を使用する際は使い方をしっかり確認しましょう。

購入する場合はココに注意!

ーー 自分にあったアロマを探して使ってみたいのですが、購入時や保管の際に気を付けることはありますか?

 

先ほどもお伝えしましたが、アロマオイルと精油は別のものです。成分を確認して、ラベルの品名、原料植物の学名、抽出部位、抽出方法、原産地、栽培方法(野生、有機栽培など)などを確認し、100%精油のものを選びましょう。精油の変質を防ぐために、遮光瓶に入った精油を購入するのがおすすめです。
また、冷暗所や湿気が少ない場所で保管することで品質が保てます。

アスリートアロマテラピーを普及させたい

ーー 今後、下川路さんとしてはどのような活動をされるのですか?

私が所属する会社では、日本のスポーツにおけるコンディショニングの選択肢としてアスリートアロマ(アロマコンディショニング)を普及させる活動に取り組んでいます。

また女性がスポーツシーンで活躍できるメソッドだと思っていますし、女子アスリートのセカンドキャリアの選択肢にもなればと考えています。

私は、そのために一人でもたくさんのアスリートのケアができるよう取り組んでいきたいです。

 

 

心身ともに激しく疲労するアスリートをサポートする、アスリートアロマテラピー。日本、世界でのこれからの広がりに注目です!日頃スポーツをしている人もしていない人も、ぜひ取り入れてみてはいかがでしょうか。

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