ストーリー野球

日本ハム 五十幡亮汰「驚異の脚力で新たな戦力に」

2021-06-01 午前 10:55

プロ野球・日本ハムで新型コロナウイルスの感染者が相次いだ中で、今シーズン、ドラフト2位で入団した五十幡亮汰選手(22)が1軍昇格のチャンスをつかみ、チームの新たな戦力になっています。

 

自らに「走れ」と明確なプレースタイルを課すルーキーに、栗山監督も「世界の盗塁王」の姿を重ね合わせて、飛躍を期待しています。

緊急事態下でのデビュー

 

日本ハムは5月4日までに、選手だけでも7人が新型コロナウイルスに感染し、さらに3人の選手が濃厚接触者として判定されて合わせて10人が1軍から離れる緊急事態を迎えました。

 

この事態で2軍から急きょ、呼ばれた選手の中には、中央大学からドラフト2位で入団した五十幡選手も入っていました。

 

日本ハムの新入団選手たち(前列右から2人目が五十幡選手)

 

身長1メートル71センチ、体重67キロとプロでは小柄な外野手について、球団スカウトが去年のドラフト会議で交渉権を獲得したあとに発表した選手紹介には、このように記されていました。

 

「驚異の脚力を誇り他の追随を許さないアマ球界NO.1のスピードスター。走塁、快足を生かした守備範囲の広さは、プロでもトップクラスのレベルに位置する。中学時代には陸上の全国大会で短距離2冠を達成し、当時は第一人者のサニブラウン選手を破った逸話も持つ。打撃もレベルアップし、機動力を生かした戦術のキーマンになれる存在だ」

 

 

チームが危機的な状況に陥ったなかで、五十幡選手は、この触れ込み通り、チームの新たな戦力になり、ファンには新たな魅力をもたらしました。

 

五十幡選手は5月7日の楽天戦で、9回に守備固めでデビューし、5月9日の楽天戦では2試合連続で1番・センターで先発出場し、実力を発揮しました。

 

5月9日の日本ハム対楽天 五十幡選手がプロ初安打

 

この試合の5回の第3打席で、五十幡選手は、早稲田大学からドラフト1位入団の楽天・早川隆久投手からプロ初ヒットを打ちました。

 

本拠地の札幌ドームのファンは、ルーキーのプロ初安打を大きな拍手で祝うと同時に、次は初盗塁への期待を高めていました。

 

ツーアウトから出塁した五十幡選手に対して、早川投手は、2番バッターの打席で初球の前に2回のけん制球。相手バッテリーが最大限の警戒をしている中でしたが、五十幡選手は初球でスタートを切りました。

 

「1球目から走る準備はしていた。手応えはあった」と送球が届く前に滑り込んでプロ初盗塁を決めました。

 

このスピードには観客から、どよめきが起こり、ベンチの栗山監督も思わず笑みをこぼして拍手を送りました。

 

五十幡選手は7回の第4打席ではダブルプレー崩れで出塁したあと今度は次のバッターの2球目で、2つ目の盗塁を決めて、このスピードで日本ハムの新たな戦力になることを示しました。

 

五十幡 亮汰 選手

(初ヒットは)ラッキーヒットではあったけど、自分のなかでは大切な一歩になった。自分の足を生かすために、まずは出塁することが大事。

 

相手投手のけん制や投球の癖を研究することも地道に行い、初ヒットからの初盗塁に結びつけましたが、実直な性格そのままに控えめに喜んで、先の試合を見据えました。

挫折から1軍デビュー

五十幡選手は、ことし2月のキャンプでは1軍からスタートし初日から注目を集めました。

 

五十幡選手は他の選手と一緒にベースランニングに参加。無観客で行われていた練習でしたが、五十幡選手の飛び抜けた速さに球場では報道陣や解説者の「おー」「速い」という驚きの声が響きました。

 

新たな戦力になると期待していた栗山監督は、「スピードがあればあるほど、心配はするけど、楽しみですね」と話して目を細めました。

 

しかし、この心配が現実のものとなり、自主トレーニングから段階があがったキャンプの練習で五十幡選手は左太ももを痛めました。

 

栗山 英樹 監督

あのスピードだと完全にけがをしてしまうので走り方を含めてやり直して、あのスピードを生かせる形にもっていきたい。

 

キャンプ3日目には1軍の練習から外れて、2軍での調整に移行しました。キャンプ後も調整は続き、2軍のイースタン・リーグでの成績は、15試合の出場で打率2割5分6厘、盗塁2つと、まずまずの成績でしたが、新型コロナの影響で思わぬ形で1軍にあがるチャンスを得たのでした。

出場7試合目で真骨頂

 

5月16日、札幌ドームでのソフトバンク戦、2対2の同点で迎えた9回に、五十幡選手は真骨頂を見せました。

 

ノーアウトでランナーが出ると、栗山監督はサヨナラ勝ちへの切り札として、代走で五十幡選手を起用。ソフトバンクのキャッチャーは、高い盗塁阻止率から「甲斐キャノン」で知られる甲斐拓也選手でした。

 

五十幡選手が盗塁を狙うなか、バッターへの2球目を受けると、甲斐選手はすかさず一塁にけん制し、2人の攻防にファンの目はくぎ付けになりました。

 

そして、4球目にスタート。甲斐選手の送球がワンバウンドになるなか、五十幡選手は悠々と盗塁を決めて、塁上で大きく息をはきました。一方の甲斐選手は、苦笑いしながら天を仰ぎました。

 

五十幡 亮汰 選手

初球からいつでも行けたらいいぞというサインは出ていたので、あとは自分で思い切って行こうと決めた。(相手は甲斐選手で)逆にそれをいいプレッシャーにして、決めてやろうという気持ちを高めながら準備を行っていた。球界ナンバーワンのキャッチャーから走れたというのは大きな自信になり、今後もチャレンジしていきたいという気持ちになった。

 

 

日本ハムは相手のペースを崩すことに成功して、このあと満塁のチャンスを作りながらもサヨナラ勝ちとはなりませんでしたが、相手が嫌がる攻撃パターンを示すことができました。

 

1983年6月3日 西武戦で当時の世界最多盗塁記録を達成した福本豊氏(左、当時阪急)

 

栗山監督はプロとしてスタートしたばかりの五十幡選手の可能性について、阪急でプレーした福本豊さんの姿を重ねました。

 

1984年8月7日 大阪球場の南海戦で福本豊氏(当時阪急)が通算1000盗塁を達成

 

福本さんは1970年から13年連続で盗塁王になり、通算1065盗塁、シーズン106盗塁はプロ野球記録になっています。

栗山 英樹 監督

あのレベルのランナーのイメージというのは、子どもの時に見た福本さん。福本さんは誰もが走ると思っていても、いつもセーフになっていたが、あの衝撃は子どものときから忘れていない。福本さんに本当に近いものがあって、100盗塁できる能力があるのではないかと思う。

自らに「走れ」

五十幡選手が大学時代から大事にして、いまも練習で使っているグラブには「走れ」という刺しゅうが入っています。自らの長所を明確なプレースタイルとして意識づけするためです。

 

五十幡 亮汰 選手

自分に言い聞かせるために、刺しゅうを入れた。やってやるぞという気持ちで打席に入れるというのもある。

 

日本ハムがリーグ戦で低迷するなか、五十幡選手は誰もが驚く脚力で、チームの新たな戦力になりつつあります。

 

(札幌放送局・雁田 紘司 記者)

 

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