特集 大相撲・照ノ富士が語る優勝決定戦 支度部屋での16分間の心境は

大相撲夏場所で2場所連続の優勝を果たした、大関・照ノ富士が千秋楽の夜にサンデースポーツにリモート出演。終盤戦の苦しい状況をどう乗り越え、決定戦に臨んだのか。そして来場所に期待がかかる「綱とり」への思いを語りました。
照ノ富士と貴景勝 再び優勝決定戦!
大相撲夏場所千秋楽、優勝の行方は最後の最後までもつれました。2敗で単独トップに立つ照ノ富士と、星の差ひとつで追う貴景勝。結びの一番の直接対決では、貴景勝の突き落としが決まり、優勝の行方は大関同士の決定戦へ。
2人の優勝決定戦は、去年の11月場所以来。その時は貴景勝が優勝を掴んでいます。本割から決定戦までの16分間、支度部屋で集中力を高めた両大関。
迎えた決定戦、立ち合いでかち上げた照ノ富士は貴景勝の突き押しを受けながらも、相手を土俵際に押し込みます。そこで貴景勝が前に出てきたところをはたき込み。
照ノ富士は2場所連続4回目の優勝。土俵下のインタビューでは、大関として初めての優勝をつかんだ喜びを語りました。
大関・照ノ富士
「いつもより嬉しかったです。一生懸命頑張って、最後まで自分の力を絞りましたと、胸を張って歩きたいです」
”大関としての優勝”への強い思い
優勝から約4時間後。サンデースポーツにリモート出演した照ノ富士。第一声で「ホッとしています」と安堵の表情を見せ、こだわっていた“大関としての優勝”の喜びを語りました。
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――照ノ富士関、優勝おめでとうございます。優勝後のインタビューでは「いつもより嬉しかった」とおっしゃっていましたが、その思いを教えてください。
「今までずっと横綱という地位をめざして来ました。そのためには“大関としての優勝”がないと、横綱は見えてこないので。そういう意味で嬉しかったなと思います」
――千秋楽、勝てば優勝を決めるという一番で、貴景勝関に敗れてしまいました。その時の心境は、どのようなものだったのでしょうか。
「(本割で決められたら)それが一番楽だったんですけどね。(貴景勝の突き落としは)頭にはありましたけど、それをくってしまった自分が悪い。練習した事が出ていない、そういう相撲で負けてしまった。あとは自分のやってきたことを信じて、自分に自信を持って決定戦は土俵に上がりました」
――照ノ富士関は、過去3回優勝決定戦に臨んで一度も勝った事がありませんでした。決定戦になって、支度部屋では何か心がけたことはありましたか。
「そんなに変わった事はしませんでした。また同じ結果が出ちゃうんじゃないか、という心配はもちろんありましたけど、できる事を精一杯やろうと思っていたので(決定戦に対して)怖さはそんなにありませんでした。いつも通り気合を入れて、自分がやって来た事を信じる。土俵の上ではやって来た事しか出ないのでね。強く当たってそこからは考える暇もなく、体が自然と動いてくれた感じです」
綱とりを見据えて
今場所の照ノ富士は初日から10連勝。これまで苦手としていた関脇・髙安にも勝利するなど安定した相撲を見せていました。ところが終盤戦、“予期せぬ出来事”が続きます。11日目の妙義龍戦では、相手のまげをつかんだとして反則負けを喫します。勝てば優勝となる14日目の遠藤戦も、物言いがつくきわどい相撲で敗れました。好調が続いた序盤から予期せぬ終盤戦へ、心境の変化はあったのか尋ねました。
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――初日からの10連勝。照ノ富士関ご自身では、その好調の理由はどこにあったと思いますか。
「ここまで場所ごとに段階を踏んでやってきて、体の調子も上がってきていました。それが一番よかったんじゃないかなと思います」
――連勝が止まった11日目の反則負け、さらに14日目もきわどい相撲を落とすことになりましたが、心境に変化はありましたか。
「いや、もうそういう相撲をとった自分が悪いと思って、次の日の一番に集中していました」
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優勝争いがもつれる中、照ノ富士を土俵の外で支えていた存在がいます。元幕下・駿馬の中板秀二さん。照ノ富士の付け人を長く務め、2年前に引退するまで一番近くで支えてきました。引退後もしばしば電話で励ましを送っていたと言う中板さん。今場所の千秋楽の前夜も、電話で激励したと言います。中板さんからのメッセージのVTRを紹介すると、それまで真剣な顔つきだった照ノ富士の顔にも笑みがこぼれました。
中板秀二さん 元幕下・駿馬
照ノ富士関、優勝おめでとうございます。
応援する立場になって、私にとっては照ノ富士関を応援することが生きがいみたいな感じです。千秋楽は本割で優勝を決めてほしいなと思っていたんですけれど、本割で敗れた後もまだ気持ちが消えてないと目を見てわかったので、決定戦になったらやってくれるだろうと思っていました。次の場所も優勝するのは大変だと思いますが、気合いをいれて頑張って下さい。応援しています!
2場所連続で優勝した照ノ富士にとって、来場所は“綱とり”を目指す場所になります。最後に一番上の番付へ、意気込みを力強く語りました。
「もう明日から来場所に備えて、自分のできる事を精いっぱいやって、結果をちゃんと残したいなと思います」