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特集 北勝富士 “心の成長”を見せられるか 大相撲夏場所

相撲 2021年5月20日(木) 午前11:25

北勝富士は本当に不思議な力士だ。

 

リズムを崩して、連敗を続けることもあるし、一度立ち直れば、人が変わったような強さを発揮する。

 

 

今場所もそうだ。11日目の相手は小結・御嶽海。

 

 

北勝富士と同学年で学生時代から対戦を重ね、「星は関係なく気合いが入る」と意識しているライバルだ。

 

 

立ち合いから攻め込まれたものの、土俵際、ぎりぎりで残って回り込み、相手が巻き替えに来た隙を逃さず、おっつけながら前に出て寄り切った。

 

 

今場所、初日から6連敗を喫したとは思えない動きの良さに、本人も手応えを口にした。

前半、元気がなかったけど、後半は、しっかり持ち前の相撲を取れている感じがします

 

そもそも、北勝富士は、平幕にいるべき力士ではないだろう。

 

当たりの強さ、突き押しの馬力、左右のおっつけの技術など、相撲ぶりは高く評価されている。

 

好調のときは、横綱や大関にひけをとらない力を見せ、獲得した金星は、現役で2番目に多い7個に上る。

 

ただ、課題は「心」の部分。今場所の前半戦も勝てないことで、より重圧を感じるという、精神面の悪循環に陥っていた。

体調は悪くないのに、どこか、かみ合わなかった。連敗したことで、気持ちが落ち込んでしまっていたし、肩に力が入ってしまっていたんですよね。

 

こう考え込んでしまうのは、真面目な性格の裏返し。

 

 

トンネルから抜け出したのは、7日目の関脇・髙安との一番だった。

 

 

突っ張りにおっつけながら耐え、うまくいなして送り出す、我慢の相撲で、白星をつかんだ。

 

 

気持ちが楽になった。

 

この日をきっかけに、見違えるような相撲に変わり、その後は、4勝1敗と完全に調子を取り戻した。

 

 

大事なのはメンタルですよね。落ち込むのではなく、気持ちの整理整頓をしなければいけない

 

その“心の整理整頓”のための強い味方がいる。

 

ことし3月に誕生した長男だ。風呂に入れたり、おむつを変えたりと、土俵の外では、愛妻とともに、初めての育児にも取り組むようになった。

 

 

子どもに会うと、穏やかな気持ちになるし、頑張ろうっていう活力にもなる。責任感も、また増したし、頑張らないといけないな、という気持ちになる

 

若いころから大関を期待されてきた北勝富士も、ことし7月で29歳。三役に復帰し、さらに上を目指すためには、重圧をはねのける心の強さが求められる。

 

夏場所は残り4日となり、優勝争いが最大の焦点だ。その一方で、一家の大黒柱となった北勝富士が、成長を見せられるかどうかにも、注目してほしい。

この記事を書いた人

清水 瑶平 記者

清水 瑶平 記者

平成20年 NHK入局。熊本局、社会部などを経て、平成28年からスポーツニュース部で格闘技を担当。学生時代はボクシングに打ち込む。

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