ストーリースキー

弱点克服で飛躍!レジェンド葛西が語る 小林陵侑 成長の秘密

2019-01-13 午後 0:00

スキージャンプ男子の小林陵侑選手、22歳。今シーズンはワールドカップですでに9勝を挙げ、1シーズンの勝利数では日本選手の最多記録を更新。年末年始の4試合で争ったヨーロッパ伝統の「ジャンプ週間」では、史上3人目となる全勝での総合優勝を果たし、絶好調です。昨シーズンのワールドカップでは表彰台に上がったことがなかった小林選手の急成長の秘密は何か。

所属チームの監督として小林選手を指導してきた葛西紀明選手が、NHKへの単独インタビューでその秘密の一端を明かしてくれました。

『ひざ戻り』を克服

葛西選手が、小林選手の急成長の要因として挙げたのは『ひざ戻り』と呼ばれる弱点の克服でした。葛西選手がいう『ひざ戻り』とは踏み切る時の力のロスのことです。

スキージャンプで飛距離を伸ばすためには、ジャンプ台を踏み切る時にできるだけ大きな力を垂直方向に伝えることが重要だとされています。

 

 

しかし、助走路を滑り降りる選手たちのスピードは時速90キロにも達するため、踏み切るときに垂直方向に最大の力を伝えることは世界トップレベルの選手でも至難の業。

力を伝える向きが、少しでもずれると、スキーの板が後ろにスリップしてしまい、力が逃げてしまうのです。これが『ひざ戻り』です。

 

 

この『ひざ戻り』がおきると飛び出す力が弱まるだけでなく、飛び出した直後にバランスを崩し飛距離が伸びない要因になってしまいます。

昨シーズンまでの小林選手はこの『ひざ戻り』が克服できず、飛距離が伸び悩んでいました。

 

葛西紀明選手

スキージャンプにおいて『ひざ戻り』をせずに踏み切ることは 一番極めることが難しい技術のひとつ。

『ひざ戻り』をなくすことが出来れば、正確に力が伝わって良い位置に飛んでいける。

さらに飛び出したあとにバランスをとりやすくなり長く風を受けることが出来て、大きな浮力を生みだすことが出来る。

成長が見えたNHK杯

葛西選手が小林選手の成長を実感した大会が冬のシーズン直前、去年11月に札幌市で開かれたNHK杯でした。

小林選手は、1回目、2回目ともに超えるとポイントが加算されるK点を大きくこえる135メートル50のジャンプを見せて優勝。

葛西選手はこの大会で見せた小林選手の踏み切り後の飛行姿勢の美しさが『ひざ戻り』を克服した証だといいます。

 

 

NHK杯での小林選手と葛西選手の踏み切り後の飛行姿勢をコマ送りで比較した画像です。葛西選手に比べ小林選手は飛び出した直後に素早く腰が伸び、姿勢が安定しています。

「ひざ戻り」がなく力強く飛び出しているため飛行姿勢が安定。風を長く捉えられるため、飛距離が伸びているのです。

 

葛西紀明選手

この大会で小林選手はほとんどスリップせずに飛び出していた。

あんな完璧に近い踏み切りができる選手は世界でもなかなかいない。羨ましいほどきれいなジャンプだった。

シーズン前の“葛西式練習メニュー”で『ひざ戻り』を克服

小林選手が「ひざ戻り」を克服できた背景には、葛西選手みずから考案した独特な練習メニューがあります。

シーズン前に取り組んでいたのがインラインスケートで、滑りながら地面に置いたさまざまな障害物を飛び越えるトレーニング。不安定なインラインスケートでジャンプを繰り返し地面に垂直に力を伝える感覚を磨いてきたのです。

 

 

去年5月の沖縄県宮古島での合宿で、小林選手は葛西選手とともにこの練習を何度も何度も繰り返していました。

この地道なトレーニングの繰り返しによって、小林選手は無駄なく垂直方向に力を伝えられる理想の踏み切りに近づいていったのです。

“二人三脚”で飛躍

小林選手は葛西選手と二人三脚で作り上げてきたジャンプに、大きな手応え感じています。

 

小林陵侑選手

今シーズンは葛西監督のアドバイスがジャンプを作り上げる上で大きな力になった。理想のジャンプに近づけている実感があるので、結果は気にしすぎず1つ1つのジャンプに集中していきたい。

世界のみんなもびっくりしていると思うが、正直、自分自身もびっくりしている。今シーズンはたくさん活躍出来るようにいいジャンプを飛んでいきたい。

 

札幌市では1月26日から2日間男子のワールドカップが大倉山ジャンプ競技場で開かれます。

小林選手が「手が届きそう」と話した理想のジャンプは見られるのか、伸び盛りの22歳に世界から熱い視線が集まっています。

細井 拓

平成24年入局 北見、釧路放送局を経て、平成29年から札幌局。プロ野球からサッカー、ウィンタースポーツまで幅広くスポーツ取材を担当。趣味は体を鍛えること。座った姿勢から倒立できます。

関連キーワード

関連トピックス

最新トピックス

RANKING人気のトピックス

アクセス数の多いコンテンツをランキング形式でお届け!