特集 角番 大関・正代 主役へのカギは「圧力」 大相撲夏場所

「状態はいい。自分の形を徹底したい」
4勝1敗で終えた序盤戦を振り返った大関・正代。5日目の相手は前頭2枚目、25歳の明生だった。
「立ち遅れた」という正代は明生の当たりをまともに受け、上体が浮き上がった。だが決して焦らず下がらない。
左を差したあとは圧力をかけることを徹底し、最後は寄り倒し。
前に出続ける相撲を信条とする正代らしい一番だった。
ただひとり勝ちっぱなしの照ノ富士に“何としても食らいつく”という強い気持ちが見て取れた。
「我慢して、攻められる時に攻めたのがよかった」とみずから納得した様子。
幕内後半の審判長、伊勢ヶ濱親方も高く評価していた。
「余裕があった。落ち着いて相撲を取っていた」
場所前の正代は予定通りに調整が進まなかった。
合同稽古では大関・朝乃山や小結・御嶽海と相撲を取ったものの所属する時津風部屋では関取衆が万全の状態でなく、幕下以下と稽古する機会がほとんどだったという。
時津風親方(元土佐豊)は「圧力ある相手とやっていない。どうなるだろうか」と心配している様子だった。
それでも部屋の稽古で多いときは20番余り相撲を取り立ち合いの踏み込みや、押す角度などを細かく確認。
稽古以外でも筋力トレーニングに加えてプロテインを1日6回ほど飲んで、ひたすら体作りに励んだ。
「(負け越した)先場所に比べて相手に圧力を伝えられている。せっかく、お客さんが入っているのでいい相撲を取って場所を盛り上げていきたい」
「早い段階での角番脱出」と目標は控えめの正代だが、横綱不在の場所で大関として主役になれるかどうかは『圧力』がカギを握っている。
この記事を書いた人

坂梨 宏和 記者
平成21年NHK入局 福岡県出身
長崎局、広島局などを経てスポーツニュース部。ヤクルト担当。