ストーリーラグビー

ラグビーの気になる話(20)平常心の通訳 その秘けつに驚愕!

2019-03-13 午後 0:00

ワールドカップまで半年あまり。これまで日本代表の多くの選手やスタッフをとりあげてきましたが、まだまだ気になる存在がいました。それは通訳の佐藤秀典さん。常に平常心を心がける佐藤さん、その秘けつに驚愕しました。

歴史的勝利にも 立ち会っていました

ラグビーW杯 南アフリカ戦 (2015年)

 

佐藤さんは、前回のワールドカップから日本代表に帯同。強豪の南アフリカから歴史的な勝利をおさめた試合でも、当時のエディー・ジョーンズヘッドコーチの指示を通訳し、ピッチ上のスタッフに伝えていました。ジョーンズヘッドコーチと固い握手をして勝利を喜び合った場面を覚えている方もいるのではないでしょうか。

 

 

佐藤さんは、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチのもとでも通訳に就任。今月、千葉県浦安市で行われた合宿でもボールを持ちながら動き回り、コーチの指示を大声で通訳する姿がありました。

選手やスタッフに正しく指示を伝えなければ、チームづくりに大きな影響が出てしまいます。ミスが許されない環境の中、日本代表の通訳として、何を心がけているか聞きました。

 

日本代表通訳・佐藤秀典さん

ラグビーはルールが結構複雑で、戦術や戦略がすごく細かいので、自分もしっかり理解して伝えることが大事です。ただ、それ以上にヘッドコーチとか選手とかが、何を意図して、何を伝えたいのかという真意の部分をしっかりと把握することが大事です。

自分の言葉に置きかえながらも、その人たちが使った単語や言い回しを忠実に、わかりやすく伝えていくことを心がけてます。いかに冷静さを保って、黒子になってやる。平常心を保つというところがすごく難しいです。

チームの"お兄ちゃん的存在"

ジェイミージャパンの通訳になって2年あまり。佐藤さんは、選手たちからも厚く信頼されています。

 

スクラムハーフ・流大選手

チームがコミュニケーションをとるうえで一番重要な存在です。ヘッドコーチが怒っているようなときは、それが分かる口調で伝えてくれるので、すごくわかりやすい。

以前、自分がしんどかったときに、選手やスタッフと一緒に飲みに行き、そこで色々本音を話し合ったことはすごく良い思い出です。

 

スクラムハーフ・田中史朗選手

100%信頼しています。佐藤さんは少し年齢が僕たちより上なので、本当にお兄ちゃんのような存在です。

彼がいないとヘッドコーチの言うことを100%理解できないと思うし、通訳だけではなく、人としていろんな相談に乗ってくれるなど、すべてにおいて大人で、本当に彼の存在がワールドカップ勝利への鍵になるとも思っています。

大一番でも"平常心"

ラグビーの試合では、ヘッドコーチは全体の動きを把握するなどの理由からピッチを離れ、観客席の上の方で試合を見ます。そして、無線機を使って、ピッチ上のスタッフに指示を伝えています。

 

 

伝える内容は人にもよりますが、選手の交代、具体的な攻め方や守り方、レフェリーの判定への注意点など多岐に渡ります。

佐藤さんには去年、秋のニュージーランドやイングランドなどとのテストマッチで新たな役割が与えられました。それは水出し係です。それまではヘッドコーチのそばにいた佐藤さん、コーチの指示を確実に選手に届けるために白羽の矢が立ったのです。片方の耳に無線機、手には水のボトルが入ったかご。試合の状況に応じて、指示が次々に飛ぶため、自身も試合の流れを把握しなければなりません。

 

ラグビーテストマッチ イングランド戦

 

イングランド戦では、8万人を超える観客がスタジアムに詰めかけ、大声援を送ったため、難しさも感じたということです。

日本代表通訳・佐藤秀典さん

ゲームの状況もしっかりと追い、どういう流れになりつつあるのかを把握しながら、大歓声のなか、耳も集中して、指示を聞き逃すことがないように走りながら聞いて、即座に選手たちに伝えないといけないっていうところがものすごく難しいですね。息も上がります。

平常心を保とうと努力はしますけれども、どうしても心拍数が上がるので、そこのコントロールはすごく心がけてます。やはり平常心がものすごく大事ですね。

佐藤さんとデスメタル

佐藤さんの平常心はどう養われてきたのか。取材を進めていく中で見つかった答え、それは渋谷のライブハウスにありました。

 

 

およそ200人の観客の前に、ステージに立っていた佐藤さん。いつものダンディーな声をさらに低く太くして、「お前ら全員かかってこいやー!」と叫んでいました。そして、激しい歌声に、激しい体の動き。観客も飛んだりはねたり、暴れ回ったりで、大きく盛り上がっていました。これがデスメタルです。

 

 

実は佐藤さんは、子どものころ、初めて聞いたデスメタルの衝撃的な魅力にのめり込み、10年以上前からデスメタルバンドを組んで、定期的にライブを行っているんです。ステージ上の佐藤さんに、グラウンドで見せる優しい笑顔はなく、まさに真剣、大柄の外国選手にタックルにいくような鬼の形相をしていました。

このデスメタルバンドの活動が、意外にも通訳の仕事に生かせていると言います。

 

日本代表通訳・佐藤秀典さん

パフォーマンスをただやっているのを見せるわけではなく、その場の空気に応じて、どこで盛り上げるための声をかけるかとか、そういうところをやはり意識しますね。激しさの中でも、平常心を保って、常に周りを感じる、見るというところは通訳とつながってると思います。

また通訳は技術というより大きい声を出せないといけません。グラウンドの端から端まで何かを言わなければいけないこともありますし、叱咤激励するときも、それなりのトーンでないといけないと思います。英語と僕の通訳の声がかぶったときに、かき消されないような通る声がないといけないと思うんです。もう十何年かデスメタルのボーカルをやっている中で、声がでかいのは当たり前で、太く通る声が養われたと思うので、それが生きていると思いますね。

 

この日のライブには、日本代表のフッカー、堀江翔太選手の姿もあり、グラウンドを離れても良い関係が築けていると感じました。

 

フッカー・堀江翔太選手

成功しているプレーは、全部秀さんが通訳してくれている。本当に秀さんがいなければこのチームは成り立っていないと思います。

ふだん、ラグビー場では、通訳としてスタッフとのコミュニケーションをしてくれますが、プライベートになれば尊敬する1人のアーティストです。音楽の話を聞いたり、いろいろな話をしたりすることが楽しいですね。

最高の懸け橋に

佐藤さんは、デスメタルをワールドカップが終わるまでお預けにするということで、今後は、日本代表が目指すベストエイト以上に向けて、さらなる通訳の技術を磨くことに集中していくということです。

佐藤さんにとっても、ワールドカップは勝負の舞台です。

 

日本代表通訳・佐藤秀典さん

黒子になって、しっかりとチームが円滑に、意思統一できるようにしたい。さらにスキルアップをしながらやっていくだけです。

よりよいコミュニケーションがあってこそ成果とか結果に結びつくと思うので、最高の懸け橋になりたいです。

 

 

 

 

この記事を書いた人

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中村 大祐 記者

スポーツニュース部 記者 平成18年に入局

奈良放送局の後、福岡放送局を経て、平成25年の夏に政治部に異動し、厚生労働省や防衛省などを担当。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて去年夏からスポーツニュース部に。高校・大学とラグビー部に所属し、ポジションはバックス。

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