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特集 北の富士勝昭が斬る 照ノ富士は4大関の中では横綱の可能性が最も高い

相撲 2021年5月7日(金) 午後3:25

3大関は照ノ富士に太刀打ちできないと思っていた

春場所で優勝し賜杯を受ける照ノ富士

 

春場所の照ノ富士も強かった。足がそろうとちょっと危ない場面もあったが、他が弱いから賜盃を手にすることができたという面もあるだろう。3大関は初めから太刀打ちできないと思っていたし、3人の中で1人は負け越すと私は場所前から言っていたが、正代が負け越してそのとおりになってしまった。

大関陣は稽古をやらなさ過ぎ、1日10番では話にならない

予想が当たったからと言ってうれしくも何ともない。この場でも放送でも何度も言っているが、大関陣は稽古をやらなさ過ぎ。どうして1日10番くらいで「稽古をやった」と言えるのか不思議でならない。普通は不安に駆られるものだ。

 

春場所14日目 照ノ富士が朝乃山を攻める

 

その点、照ノ富士は稽古十分だ。あの体つきを見れば一目瞭然だ。大関戦、特に朝乃山戦はやる前から飲んでかかっている印象すら受ける。弱くて番付を落としたわけではないという思いも強いのだろう。

 

朝乃山が寄り切りで照ノ富士に敗れる

 

右の相四つで大関の方が5連敗する朝乃山はいったいどうしたことか。体つきも照ノ富士と比べてそん色はないし、先場所はもろ手突きの立ち合いだったが、そもそも気持ちですでに負けている。

夏場所の優勝争いは照ノ富士を中心に3大関が追う展開

春場所千秋楽 賜盃を持って笑顔の照ノ富士

 

大関に返り咲いた照ノ富士は膝に“爆弾”を抱えているとは言え、4大関となった中では横綱の可能性が最も高いのではないかと私は見ている。照ノ富士が番付で並んだことで既存の大関陣が刺激を受けて奮起してくれればいいが、果たしてどうなるか。

 

夏場所を前にトレーニングで汗を流す貴景勝

 

貴景勝にしてもトレーニングはやっていても番数はやっていないだろう。隆の勝と三番稽古をやったという話は聞こえてこない。

 

このコロナ禍で稽古もだいぶ制限を受けているとはいえ、やはり少ないと言わざるを得ない。協会ももっと稽古をやらせる方法を見つけないと。合同稽古も各力士の自由参加ではだめだろう。稽古総見並みに強制的に参加させるべきではないだろうか。

 

夏場所は誰が優勝するのか予想は難しいが、優勝争いは照ノ富士を中心に残りの3大関が追いかける展開になるだろう。本気で横綱を狙うのであれば、今ほどチャンスはない。

春場所は髙安が初優勝と思っていた

春場所10日目 貴景勝を攻める髙安

 

優勝と言えば、春場所はてっきり髙安が初優勝するものとばかり思っていた。10日目の時点で後続に2差をつけ、安定した相撲内容からして終盤の大崩れは全くの想定外だった。

 

春場所13日目 髙安が寄り倒しで若隆景に敗れる

 

だが、13日目の若隆景戦を見て悪い予感がした。案の定、体が動いてない。翌日の翔猿戦は左四つに捕まえてかいなも返して、これ以上ないいい体勢なのに足が出なかった。千秋楽の碧山戦はいかにも連敗を引きずっていたような相撲ぶりだった。とりあえず、三役で10番勝って大関取りの足掛かりは築いたが、精神的な落ち込みが心配だ。

若隆景は立派、おっつけのうまさは技能賞に値する

春場所で技能賞を受賞した若隆景

 

平幕では10勝した若隆景は立派だった。あんなにいい相撲を取る力士だとは思わなかった。右のおっつけのうまさは技能賞に十分値する。

 

春場所千秋楽 若隆景が北勝富士を破り10勝をあげた

 

体格は周りに比べて大きくはないが、相当力をつけてきた。私は若隆景のおじいさんの若葉山関のことを知っているので、よく見たら体つきも雰囲気も面影がある。昔は若隆景のような引き締まった体でしぶとい相撲を取る力士が多かった。インタビューでも多くを語らない昭和の香りがするお相撲さんだ。

 

相撲専門雑誌「NHK G-Media大相撲中継」から

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