特集 羽生結弦「来季へ ジャンプ向上に意欲」

フィギュアスケートの羽生結弦選手は、けがからの復帰戦となった世界選手権で、こだわりを持った4回転ジャンプを成功させ、今シーズンの自己ベストを更新して2位に入り、金メダルを獲得したピョンチャンオリンピックに続き、大舞台での勝負強さを見せました。
一方で、優勝したアメリカのネイサン・チェン選手とは大きな差が開き、羽生選手は来シーズンに向けてジャンプの種類をさらに増やすことや、質の向上に強い意欲を示しました。
4回転ループ 跳ぶことに"強い使命感"
羽生選手は、去年11月、4回転ループの練習で転倒して右足首のじん帯などをけがして全日本選手権などを欠場。ことしに入って氷の上での練習を再開させて世界選手権を迎えました。
ショートプログラム
前半のショートプログラムで羽生選手は、冒頭の4回転サルコーが2回転になるミスがあり、ほぼ完璧な演技を見せたチェン選手と12点あまりの差がつきました。
厳しい状況で迎えた後半のフリーですが、羽生選手は冒頭のジャンプにこだわりを持っていました。けがの原因となった4回転ループで、世界選手権前には「跳ぶことに強い使命感を持っている」と述べ、大会期間中の練習でもフリーの冒頭から4回転ループを跳ぶまでの一連の動作を何度も繰り返していました。
フリーに向けて公式練習
さらにフリー当日の午前の練習では、アイスリンクでの練習を終えたあとも、イヤホンで曲を聴きながらイメージトレーニングを繰り返すなど、4回転ループの成功へ、執念を見せました。
"ミスなくても今回はチェン選手に勝てなかった"
フリーでの4回転ループ
迎えた本番、羽生選手は練習を重ねた冒頭の4回転ループをきっちりと着氷し、出来栄えでも3.45と高い評価を得ました。
続く4回転サルコーは回転不足と判定されましたが、演技の後半には、去年、自身が世界で初めて着氷した4回転トーループとトリプルアクセルの連続ジャンプも成功させ、フリーでは今シーズンの自己ベストを大きく更新する得点をマークし、あらためて大舞台での勝負強さを見せました。
フリーでの演技
それでも、優勝したチェン選手とは、フリーでさらに10点近い差がつきました。チェン選手はジャンプで回転不足があったり、出来栄えで減点されたりすミスがなく、ここで羽生選手と差がつきましたが、競技後、羽生選手は、「もしミスをしなかったとしても、今回はぎりぎりでチェン選手に勝てなかった」と話しました。
羽生選手がフリーに組み込んだ4回転ジャンプで最も基礎点が高いのは4回転ループの10.50ですが、チェン選手は11.50の4回転ルッツと11.00の4回転フリップを組み込んでいました。
"とにかくもっと強くなりたい"
羽生選手は来シーズンに向けて「得点源となるジャンプを増やさないといけない。チェン選手には大きなリスペクトを感じるし、だからこそ勝ちたい。とにかくもっと強くなりたい」とジャンプの種類を増やすことや質の向上に強い意欲を示しました。
挑戦することを明言している世界で誰も成し遂げていない大技、4回転半、「クワッドアクセル」をはじめ、羽生選手が来シーズン、どのような演技を見せてくれるか注目されます。

田谷 亮平
スポーツニュース部 記者 体操、フィギュアスケートなど担当。