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東京オリンピック 巨大施設の建設現場に密着!

2019-04-08 午後 0:00

 

東京オリンピック開幕まで、約1年。
選手たちは出場を目指して、着々と準備を進めています。

その選手たちが激しい戦いを繰り広げる競技会場は、一体どのように作られているのか?東京で着々と準備が進められている現場を取材しました。

15の施設が集う東京ベイエリア

 

東京の中でも、もっとも進化のスピードが加速しているのが、選手村など15の施設が集うベイエリアです。

ベイエリアは港区・中央区など6つの区をまたいで作られた埋め立て地。これまで改革が進められてきた東京の街の中でも最近になって着手された場所です。

世界から注目されるこのベイエリアのコンセプトは、効率を極め、環境と共生し、災害にびくともしない“持続可能な都市”。

 

 

水泳会場となるアクアティクスセンターには、48もの装置が組み込まれており、マグニチュード9の地震や台風に耐えられる設計となっています。

しかし、この施設の建設は困難を極めました。

予算の減少、台風…巨大屋根にのしかかる試練

 

最初に乗り越えなければいけない壁は予算でした。

 

工事が始まろうとする2016年、東京都知事が変わったのを機に、大幅な予算の見直しが行われ、当初683億円だったアクアティクスセンターの予算も、567億円に削減されました。
そのため、完成に3年を要する巨大工事が、予算を切り詰めながら行われることになったのです。

工事がスタートし、最初に姿を現したのは、巨大な屋根。重さ7000トン、ラグビー場3面分もの大きさです。

 

柱よりも下に屋根が作られている

 

始めに低い位置に屋根を作り、それをワイヤーで一気に34mの高さまで吊り上げる、リフトアップ工法と呼ばれる技術が採用されました。

実は、この工法こそ、予算を大幅に削減するための鍵なのです。

床や壁から作り、最後に天井を組み立てる通常の方法だと、高い位置に足場を組まなければならず、工期も予算もふくらんでしまうからです。

しかし、巨大な屋根でリフトアップ工法を用いるには大きな課題がありました。
屋根を吊り上げる際、7000トンもの重みで屋根の中央部分がたわんでしまうことです。

 

 

そこで、すべての鉄骨のたわみを計算し、逆お椀型で屋根を作り、たわんだ時にちょうど直線となるように鉄骨が組まれました。

運命のリフトアップの日。

7000トンの巨大屋根が宙に浮くと、大きな金属音と共に屋根がたわみ、屋根の形は直線になりました。未知の大きさの屋根が順調に浮かび始めます。

 

地面から屋根を切り離す“地切り”の後で、柱が直線になっているのがわかる

 

この日、日本列島には台風7号が近づいていました。
予想される風速10mであれば危険はないと判断され、予定通りリフトアップが行われることに。

ところが、順調に上がっているように見えた屋根がストップ。

屋根がどこまで上がったのかを測るエンコーダーという装置が異常を示し、リフトアップを進められなくなったのです。
工事を中止するべきか否か、この日のために全国から集めた職人を前に、工事長は決断を迫られます。

 

屋根がゆっくりとリフトアップされていった

 

“異常があるのは、安全上支障がない計測装置のみ”。

工事長は継続を決断しました。
そして見事に、手作業も駆使しながら、目的の場所まで屋根を引き上げたのです。

住宅地の中に構える、不可能を可能にしたアリーナ

 

バレーボールが行われる有明アリーナも、ベイエリアの会場の一つです。
こちらも建設にあたって数々の困難を抱えていました。

最大の難問は工事現場の立地。タワーマンションに囲まれた住居密集地帯です。かつて、巨大建造物をこれほどの住居密集地で建設した例はありません。

まず問題となったのは“光”。
一般的なアリーナと同じようにドーム型の屋根にすると、周囲のマンションに太陽の光が一日じゅう反射してしまうのです。

 

屋根をドーム型にすると、隣接マンションに太陽光が一日じゅう反射してしまう

 

これを解決したのが、屋根の中央をへこませた“反り屋根”です。
内側に反射する太陽光の習性を利用し、周囲への影響を抑えることができました。

 

 

しかもこの反り屋根は、建物の端にある観客席の容量はそのままに、へこんだ中央部分の体積だけを減らすことができるので、空調と照明のエネルギーを削減できるというエコな側面も持っています。

次の課題が、工期。東京都から設計の見直しを迫られた影響で、着工は2か月遅れ。通常の工事方法では完成予定日に間に合いません。

 

 

そこで、屋根と建物本体とを同時並行で作るというアイデアが飛び出しました。
しかし、ここでまた立地の問題が立ちはだかります。住居に囲まれたこの土地では、同時に作るほどのスペースを確保できないのです。

解決する策がたった一つだけ見つかりました。

屋根を9分割して作り、屋根部分に敷いたレールの上で端からスライドさせて設置していく方法です。

 

限られたスペースで9分割した屋根を作り、1つずつ建物に乗せてスライドさせる

 

これなら狭いスペースでも、建物と屋根を同時並行で作ることができます。
「トラベリング工法」と呼ばれるこの特殊な工法は、世界でもほとんど行われていません。

 

 

完成した9分割の1つをレールに乗せ、端までスライドしていくのに6時間。
1mずつ移動させ、本体部分の工事に必要な足場や手すりにぶつからないかを確認しながら、慎重に進めていきます。

 

1つめの屋根が乗った

 

無事に1つめの屋根が乗りました。しかし安心する間もありません。再びビル4棟分の鉄骨を組んで屋根の一部を作り、半日かけてスライドしていきます。これを繰り返していくのです。
前代未聞ともいえる、有明アリーナの工事。完成予定は2019年の12月です。

アクアティクスセンター最大の難工事

 

有明アリーナが最初の屋根を定着させた頃、アクアティクスセンターは最大の山場を迎えていました。
それは34m持ち上げた屋根の下に免震ゴムをはさみ、屋根を下ろして定着させるというもの。

ワイヤーで吊られているだけの屋根は、風によってわずかに揺れており、止まることはありません。傾いたまま屋根を下ろすと、しっかりと定着せず、免震が不十分になってしまうのです。しかし7000トンの屋根は、たとえ数ミリであったとしても人力で動かすことはできません。

 

屋根が傾いていると免震が不十分に

 

そこで、新たな部品が開発されました。その名も「オスメスジョイント」。屋根と免震ゴムの接合部を半球形にする部品です。

 

 

接合部が球面のため、風で多少傾いて接合してしまっても、免震ゴムへのテンションが一定になり、安全性が守られる仕組みです。

リフトダウンも完了と思われた直前、さらなるトラブルが発生します。

オスメスジョイントの接合部の隙間は残り50ミリ。しかし、隣にある免震装置と柱の接地面との隙間は残り34ミリしかありません。

 

 

このまま屋根を下ろすと、オスメスジョイントが下がりきらず、屋根を定着させることが出来ません。鉄骨は当日の気温や風の強さによって、体積や位置が変動するため、設計図通りにはいかないのです。

そこで、理論と現実の差を埋めるのが職人。
免震装置を支えるボルトを一度抜き、ミリ単位で位置を下げることにしたのです。

その微妙な試みが、完璧な屋根の定着につながりました。
日本の建築技術の真骨頂です。

 

 

ベイエリアの最南端には、住所がありません。
今なお埋め立てが進み、土地が膨張しているのです。

2020年に向けて、TOKYOは日々生まれ変わっています。

 

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