ストーリーラグビー

ラグビーの気になる話 (25) 立川理道 もう一度あの舞台へ

2019-04-24 午後 0:00

ワールドカップ日本大会の開幕まで5か月を切り、代表争いは今後、激しさを増していきます。強豪の南アフリカから歴史的勝利をあげるなどした前回、2015年のイングランド大会で日本代表主力として活躍しながら、今、崖っぷちにたたされている選手がいます。

立川理道選手、29歳。もう一度あの舞台に立ちたいと必死にもがく姿を追いました。

歴史的勝利にも貢献

2015年のW杯で南アフリカから歴史的な勝利 立川選手 (右から2番目)

 

立川選手のポジションは、バックスのセンター。体の強さをいかした突破や1つ1つのプレーの技術の高さが持ち味です。前回、2015年のワールドカップイングランド大会で強豪、南アフリカから歴史的な勝利をあげて、『世紀の番狂わせ』と呼ばれた試合にも先発出場し、勝利を決めた最後のトライでもボールに絡みました。

大会後は、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチのもとで、一時期、キャプテンも務めるなど、日本大会へ、順調に歩みを進めているかに見えました。

立川理道選手

2015年大会が終わったあとも、2019年の日本開催が決まっていたので、モチベーションはすごく高かった。

まさかのいばらの道

ヨーロッパ遠征に出発するジョセフヘッドコーチら

 

ところが去年10月、ヨーロッパ遠征に臨む日本代表の名簿から立川選手の名前がなくなっていました。このとき、ジョセフヘッドコーチは「彼のパフォーマンスが、我々が求めるレベルまで達していなかった」と理由を説明しました。

まさかの裏街道を歩むことになった立川選手。ことし1月、都内で、トレーニングに励んでいるところを取材させてもらいました。トレーナーと2人きりで、およそ1時間半にわたる筋力トレーニング。ジョセフヘッドコーチに足りないと指摘された課題の1つ、フィジカルを徹底的に鍛えていました。重さ50キロ近いダンベルを片手で持ち上げる表情は、極めて厳しいものでした。

 

クレルモンとのラグビー慈善試合 攻める立川選手(中央)

 

実際、代表復帰のためのアピールの場は多くはありませんでした。2月には、トップリーグの選抜選手によるフランスのチームとのチャリティーマッチにも出場。センターで先発出場し、ジョセフヘッドコーチから一番の課題とされたディフェンスを改善したところをアピールしようと、必死に体格の大きな外国選手にタックルを繰り返していました。

立川理道選手

いいタックルをできた部分もありましたし、簡単に抜かれてしまう部分もあったので、自分的には満足はいっていない。これから試合はないので、もう一度、自分の置かれている立場を理解して、やれることをしっかり諦めずにやっていきたい。

選ばれていない現状をしっかりと把握することが大事だと思う。そこは受けとめて、今ある自分の状況でできることを精いっぱいやっていくという気持ちです。

支えてくれる人とともに

 

代表から遠ざかった立川選手にとって、精神的な支えとなった人がいます。廣瀬俊朗さんです。元日本代表でキャプテンを務めた経験もあり、前回のワールドカップはともに戦いました。実は、その前回大会、廣瀬さんは出場機会がありませんでした。しかし、裏方に徹することで、チームメートから絶大な信頼を得て、日本の躍進を陰で支える存在になりました。

 

立川選手は、2月中旬、廣瀬さんに、神奈川県・江ノ島で行った自主トレーニングに付き合ってもらい、ビーチを走ったり、神社の階段を上ったりしました。一緒に過ごした時間の中で「前向きに取り組むことがすごく大事」と教わったことが励みになったと言います。

立川理道選手

何でも相談できる存在で、何か迷ったときにも頼れる存在でした。今回、代表候補から落とされたときに、2015年の大会で廣瀬さんも同じような境遇、体験をした中で、ひたむきに頑張っている姿を僕も見ていたので、自分の支えになったのは確かです。

 

廣瀬さんも、立川選手の気持ちが痛いほどわかっていました。

廣瀬俊朗さん

本人が一番この状況を理解しているので、こうしたらいいみたいなことはあんまり言わなかった。ふだんどおり接して、楽しくやろうみたいな。何気ない会話をしながら、その中で、応援しているという気持ちが伝わればいいのかなと思っていました。

一段一段上っていく

ことし3月、立川選手にチャンスがめぐってきました。ケガをした選手に代わって、日本代表候補の強化合宿に呼ばれたのです。立場は練習生で、ジャージも周りの選手とは違っていました。

練習生として参加

 

5か月という長い期間、代表を離れ「もう選ばれないんじゃないかという思いが強かったし、気持ちが折れかかっていた」という立川選手。練習生としての復帰でしたが、「もうあとがないんだからミスを恐れずに思いっきりやろう」と考え、課題と指摘されたディフェンス面でアピールしようと無我夢中で取り組みました。

 

ワラターズ―サンウルブズ タックルする立川選手

 

その後、世界最高峰のスーパーラグビーの日本チーム「サンウルブズ」にも参加し、3試合で先発出場を果たしました。ミスを恐れず、迷いのないディフェンスで、チームに貢献するプレーが認められ、今月(4月)は、とうとう練習生ではなく、日本代表候補として合宿に呼び戻されました。

立川選手 (右)

 

そして、20日には、ジョセフヘッドコーチが指揮を執るチームで、10か月ぶりに試合に出場しました。途中出場でプレーした時間はおよそ10分だけでしたが、ここでもディフェンスで存在感を示しました。

もう一度あの舞台に立つ。立川選手は、崖っぷちまで追い込まれた経験を糧に、開幕まで5か月を切った大会へ、一歩一歩、自分で道を切り開く覚悟です。

立川理道選手

選ばれてもちろんうれしかったし、自分のために頑張ろうという気持ちもありましたが、それよりもはるかに支えてくれてる人たちのために頑張れるモチベーションのほうが強かった。それがあったからこそ今も頑張れていると思います。

自分のためのワールドカップというよりも、今回は今まで支えてくれた人たちのためのワールドカップになっていくのかなと。とにかく今はそういう人たちのために体をしっかりと動かして、アピールして、チームをいい方向に向けていきたい。

鈴木彩里

スポーツニュース部 記者 平成21年入局。金沢局、名古屋局を経て、平成28年からスポーツニュース部勤務。名古屋局時代を含めプロ野球の取材を4年経験してこの夏からラグビー担当。自らも大学時代は地域のクラブチームに入って楕円球を追った。

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