ストーリー水泳

競泳 長谷川涼香 父とともに 緊張に勝ってつかんだ代表切符

2021-04-07 午前 11:07

大舞台で緊張しやすい自分に打ち勝ったご褒美が、2大会連続のオリンピックの切符でした。

 

 

競泳の日本選手権、女子200メートルバタフライの決勝、長谷川涼香選手は練習に裏打ちされた度胸満点のレース運びを見せます。

小さくおじぎをして決勝のスタート台に上がったときには「泣いても笑っても、最後の1本。いくしかない」と心に決めていました。

スタート台を蹴り出して水面に浮き上がった長谷川選手は一気に抜け出します。前半の折り返しは日本記録より速いペース、2位の選手に体1つ分の差をつけます。

その後も積極的な泳ぎを続けてリードを保ち、最後の50メートル、「最後までいい泳ぎをする」と泳ぎを崩さないことだけを意識しながら、練習どおりに懸命に腕を回し続けました。

やや失速したもののそのまま1着でフィニッシュ。おそるおそる電光掲示板を振り返った長谷川選手は派遣標準記録を突破したことを確認すると、ホッとしたように天を仰ぎました。

そして、喜びを表現するよりも先に隣のレーンで泳ぎ、牧野紘子選手の元に向かいました。2位に入ったものの、代表内定には届かなかった同学年のライバル、その健闘をたたえました。

長谷川選手が笑顔を見せたのはプールサイドに上がって一礼したあと、視線の先に父親でコーチでもある滋さんを見つけた時でした。

 

 

滋さんはもともとスイミングクラブでジュニア世代のコーチをしていましたが、3年前からは長谷川選手の指導も担当しています。

滋さんに長谷川選手の性格を聞くと、「優しい子です」と、自慢の娘を自慢するような父親の顔をのぞかせたあと「人間としてはすごく大事な部分だが、競技者としては弱気につながったり、不安に感じてしまったり、欠点になりかねない」と指導者としての答えが返ってきました。

長谷川選手本人も自分自身の性格をよく理解しています。

 

 

「基本的にどんな小さな試合でも緊張している」という長谷川選手が1発勝負の代表選考会の決勝の舞台で緊張しないわけがありません。

それでも、大一番で結果を出せたのには父と二人三脚で取り組んできた日々の積み重ねがありました。

特に効果があったのが滋さんが考えた課題克服のための厳しい練習メニューです。それは練習の終盤に行われます。疲れが出てくるころにまず苦手なクロールを1500メートル泳ぎ込みます。そのうえでバタフライを腕のかきだけで100メートルを8本も泳ぎます。

メニューを作った滋さんは「本人は練習嫌いじゃないので、ほかの選手だと心が折れるところも折れない。それができる子だと思っている」と娘を信じて厳しい練習を課していました。

長谷川選手も「追い込みプラス追い込みで精神的にも身体的にもかなりしんどい」と言いながら、「お父さんのことを信じているから厳しい練習も反発なく受け入れられた」と真正面から向き合ってレース後半でも腕を回し続けられる肩の持久力を養ってきました。

この練習の裏付けがあったからこそ、長谷川選手は選考会の決勝のレースで失速を恐れず、序盤から攻める泳ぎができたのです。

 

 

決勝の泳ぎを振り返って「最後までバテずに泳ぎ切ることができた。特訓の成果をちゃんと出せたと思う」と笑顔で話した長谷川選手。

「お父さんにはありがとうと伝えたい、これからも一緒に頑張っていきたい」と感謝を口にしました。そして、「きょうの緊張感に耐えられた自分を誇りに思ってオリンピックでも自分のレースをしたい」と自信に満ちた表情を見せました。

どんな大舞台にも揺るがない自分のレースをするためにまた、父と二人三脚での練習が始まります。

 

この記事を書いた人

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安留 秀幸 記者

平成22年 NHK入局 北九州局からスポーツニュース部。競泳担当。メダルラッシュが期待される選手たちを追いかけて取材に邁進中。

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