ストーリーサッカー

令和も続くか?下克上 サッカー天皇杯を熱くする"ジャイキリ"

2019-05-23 午後 0:00

アマチュアからプロまでが一つのカップを競い合うサッカー天皇杯ならではの魅力のひとつが、一発勝負における“ジャイアントキリング”。

格下がJ1クラブを倒すなど、下克上が大会を盛り上げます。平成の天皇杯を彩った印象的なジャイアントキリングを振り返ってみましょう!

2003年 高校生がJ王者を追い詰める!市立船橋

 

市立船橋高校(千葉県)はインターハイで9度、全国高校選手権で5度の優勝を果たすなど、高校サッカー界の名門として知られています。(2019年5月現在)その栄光の歴史の中でも、2003年度の天皇杯は、とりわけサッカーファンに衝撃を与えました。なんと高校生達が“日本最強”チームをギリギリまで追い詰めたのです!

 

当時、高校ナンバーワンのディフェンダーと言われ、キャプテンを務めていた増嶋竜也選手率いる市立船橋は、初戦からその存在感を示しました。1回戦の相手は、アマチュア最高峰のリーグである日本フットボールリーグ(JFL)への参入を決めたばかりのザスパ草津(現・ザスパクサツ群馬=群馬県)。

 

元Jリーガーもいることに加え、ゴールは1998年のワールドカップ・フランス大会のメンバーでもあった小島伸幸選手が守っていました。そのゴールをこじ開けたのが、増嶋選手。キャプテンの先制点がそのまま決勝点になり、劇的なジャイアントキリングを起こします。

 

試合後、握手するザスパ草津のGK小島伸幸選手(右)と市立船橋のカレン・ロバート選手(左)

 

2回戦でもカテゴリーが上の阪南大学(大阪府)に1-0と競り勝つと、続く3回戦では日本サッカー界で最も高い壁が待ち構えていました。その年のJ1リーグを劇的な形で制し、日本一の座を獲得した横浜F・マリノスです。

 

日本代表選手らを温存していた横浜FMですが、さすがはチャンピオン。10分も経たないうちに、市立船橋は2点を奪われてしまいます。さらに、キャプテンの増嶋選手はプロの猛攻を止めるために必死となり、反則でイエローカードをもらうことに……。

 

ところが、このイエローカードがその後の試合をさらに演出することになります。

 

後半24分 増嶋竜也選手がシュートを決める

 

 

後半が残り20分を迎える頃、横浜FMの反則で得たフリーキックで、ゴール前にボールを送ると相手ゴールキーパーがまさかのミス。ボールを取りこぼしたところに詰めていたのは増嶋選手。ゴールへと思い切り蹴り込み、1点を返します。疲労により、増嶋選手を含めた数人が足をつる中、このゴールが市立船橋イレブンを奮い立たせました。

 

残りおよそ5分、翌年にJリーグの名門ジュビロ磐田への入団が決まっていたカレン・ロバート選手が自陣からスピードに乗ったドリブルで相手DFの間を抜けて切り込み、ゴールライン際からパス。ゴール前に詰めていた田中恒太選手が冷静に同点ゴールを蹴り込みます!

 

後半39分 同点ゴールを決めた市立船橋・田中恒太選手

 

さらに勢いに乗りたい市立船橋でしたが、ここで思わぬアクシデントが……。相手の反則に見せかけようと故意に倒れたとして、増嶋選手が警告を受けたのです。1試合2度目のイエローカードをもらった増嶋選手はこれで退場処分。疲労困ぱいの高校生達にとって、Jリーグ王者を相手に1人少ない体制で戦うのは大変な困難を伴いました。それでも選手たちは懸命に戦い、突入した延長戦の30分間もゴールを守り抜きます。

 

PK戦までもつれ込んだ結果、惜しくも市立船橋は横浜FMに敗れます。

 

試合後 スタンドからの声援を受ける市立船橋の選手たち

 

Jリーグ王者をまさにギリギリまで追い詰めた市立船橋にはスタンドからは温かい労いの拍手が送られ、選手たちは晴れ晴れとした表情でピッチを後にしました。ただ一人、号泣していたのは、責任に押しつぶされそうな増嶋選手。しかし、1人少なくなったからこそ、チームメイトたちはキャプテンのためにと力を振り絞れたはずです。

2009年 天皇杯の歴史を塗り変えた!明治大学

この年まで、天皇杯の長い歴史の中で、大学チームがJ1クラブに勝ったことはありませんでした。それを始めて成し遂げたのが、のちに日本代表に選出されることとなる山田大記選手、丸山祐市選手を要した明治大学でした。

 

2009年の3回戦でモンテディオ山形と戦う明治大学

 

チームには、それぞれ得意とするプレーがあります。選手が自陣に構え、守備を固めて一気に反撃するスタイル。あるいは、華麗にボールを回して、どんどんと攻め込んでいくチームなどなど…。2009年の3回戦では、前者にモンテディオ山形(J1)、後者に明治大学が当てはまりました。

 

初めてJ1に昇格した山形のスタジアムでは当時、選手を鼓舞するこんな横断幕がありました。「ねっづく守れ!」。山形の方言で、「粘り強く守れ」という意味です。せっかく昇格しても1年でJ2に逆戻りしてしまうチームも少なくない中で、山形が残留に突き進んでいたのは、その言葉を体現したような組織的な守りがあってのことでした。

 

守りを固める山形に対し攻撃的なスタイルを貫く明治大学

 

山形の選手が統制のとれた位置取りと動きで相手の攻撃を遮断しようとしますが、その合間にうまく入っていくのが明治大学の選手達。しかも捕まえにくる山形の選手を、ボールをすぐにパスすることでいなし続けます。格上相手に守りを固めるのではなく、自分たちの得意なプレーを前面に出すことで、試合を優位に進めました。

 

すっかり調子が狂った山形に対して、明治大学は勢いに乗ります。前半からシュート数で相手を上回り、先制に成功します。決めたのは現在ヴィッセル神戸(J1)でプレーする、当時1年生の三田啓貴選手でした。

 

後半40分 追加点を決め喜ぶ明治大学の選手

 

ハーフタイムを挟んでも流れは変わらず、後半半ばに追加点。さらに終盤には交代出場した選手がダメ押し点と、最後まで主導権を握り続けての勝利でした。

2017年 復活のジャイアントキリング!筑波大学

2017年の3回戦 アビスパ福岡に勝って喜ぶ筑波大イレブン

 

明治時代からの長い歴史を誇る名門、筑波大学蹴球部は2014年に創部以来はじめて関東大学リーグ2部に降格してしまいます。しかし1年で復帰すると2016年には全日本大学選手権大会で13年ぶりの優勝を果たし、2017年は復活の予感を確信に変える大事な一年でした。

 

その鍵となったのが中野誠也選手。ジュビロ磐田の下部組織で育ったストライカーで、2016年の大学選手権では得点王に輝いています。4年生になっても、その得点力は健在でした。

 

天皇杯初戦のY.S.C.C.(神奈川県)戦でいきなり2得点!チームの全得点を挙げて、2-1の勝利に貢献します。

 

ゴールを決め喜ぶ中野選手(3回戦アビスパ福岡戦 2点目)

 

中野選手の勢いに続いたのが川崎フロンターレのアカデミーで育った三笘薫選手でした。2回戦で当たったベガルタ仙台(J1)は、2010年の昇格以来、8年連続でJ1で戦い続けてきたチーム。その仙台を相手に、当時2年生の三笘選手は前半6分、ドリブルで切り込み、あっという間にゴール!

 

後半に入って逆転されたものの、スピードある攻撃を止めなかった筑波大学は、押されながらも速攻を繰り出すと、後輩の三笘選手に負けていられないとばかりに、中野選手がこの試合で初めてシュート!見事に1点を返します。

 

最後はもう一度三笘選手!相手の緩いパスを奪った西澤健太選手がゴールに迫り、最後は三笘選手にパス。見事に再逆転のゴールを決め、チームを勝利に導きました!

 

突破を図る三苫選手(4回戦 大宮アルディージャ戦)

 

自信をつけた筑波大学は、続く3回戦でもアビスパ福岡(J2)を撃破。見事なジャイアントキリングの連続でした。
4回戦で大宮アルディージャに2-0と敗れましたが、大学の名門チームが狙い通りの復活を遂げる結果となりました。

2018年 成長した姿を見せつける!関西学院大学

2回戦でガンバ大阪を倒した関西学院大学

 

日本にJリーグが生まれ、その下部組織が発展するにつれ、ユース(高校年代)やトップ(プロチーム)に昇格できなかったクラブチーム出身選手が高校や大学でプレーするケースも増えました。そんな中には、出身のクラブチームと天皇杯で戦う学生選手もいるのです。

 

関西学院大学(兵庫県)の岩本和希選手は、中学生年代のジュニアユースからガンバ大阪(J1)の下部組織で育ちました。その後、高校卒業後にすぐに昇格できなかったトップチームであるガンバ大阪と2018年の天皇杯2回戦で対戦することになります。岩本選手にとって、成長の跡を示す絶好の機会でした。

 

過去に天皇杯を連覇したこともあるガンバ大阪の力に押される関西学院大学でしたが、焦ることなく対処して、試合は0-0のまま進みます。

すると87分、岩本選手にチャンスが訪れます。相手ゴール前でクリアされたボールが、自分のところに!この千載一遇の機会を逃すことなく、右足を振り抜いてゴール!

 

先制ゴールを決め喜ぶ岩本選手(左から3人目)

 

終了間際で岩本選手が交代のためピッチを退いた89分、関西学院大はまさかの同点ゴールを決められますが、それでも突入した延長戦の開始早々に勝ち越し点を決め、大金星をつかみ取りました。

日本サッカー協会の公式サイトは試合後、「ガンバ大阪は目指しているチームです」という岩本選手のコメントを伝えました。

 

さあ、令和の時代にはどんな劇的なジャイアントキリングが起きるのでしょうか!これからもサッカー天皇杯をお見逃しなく!

 

 

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