特集 横綱・鶴竜の現役引退発表の日に初めて安泰 正代、貴景勝、朝乃山に求められる気概とは

『三大関安泰』横綱・鶴竜の引退が発表された日。春場所11日目にして初めて3人の大関がそろって白星を挙げた。今場所は白鵬と鶴竜の休場でまたも横綱が不在。出場力士の中では、番付最高位となる大関には当然、土俵を締める責任が求められる。しかし、中日を終えた時点で正代はすでに4敗。朝乃山と貴景勝は3敗し、十分な役割を果たしているとは言えなかった。
この日の午後、横綱・鶴竜の引退が発表され、何とも言えないざわめきに包まれた国技館の土俵。大関として最初に上がったのは正代だった。鶴竜には毎場所のように場所前の稽古相手に指名され、胸を出してもらっていた。相手は優勝争い単独トップ、1敗の髙安。
立ち合いから押し込んだ正代は、もろ差しになって攻め込み、タイミングを見ての突き落とし。今場所一番の内容で大関経験者を破り、現役大関の意地を見せた。正代は鶴竜の教えを胸に、これからも戦っていく決意を示した。
「頭で当たる時の角度だったりを、よく胸を出してもらった時に教えてもらった。これからも教えられたことを忘れないように生かし、成績を残していけたらいいなと思います」
続いて土俵に上がった貴景勝の対戦相手は鶴竜と同じ陸奥部屋の霧馬山。下から下からの突き押しで寄せつけず完勝だった。
貴景勝はまじめな横綱と評された鶴竜の姿勢に学んだという。
「巡業で横綱が一生懸命、体を動かしていたら、自分たちもやらないといけないと思うし、言葉ではなくて、いろいろなものを勉強させてもらいました」
結びの一番は朝乃山。妙義龍を相手に立ち合ってすぐに得意の右四つになり万全と言える内容だった。
大関陣が持ち味を存分に発揮し、初めて白星をそろえた。最後を締めた朝乃山は大関の責任をはっきりと口にした。
「きのうまで同じ日に大関3人の白星がなく、僕が結びだったので刺激をもらった。目の前で2人が勝ったので負けられないと思った」
鶴竜が引退し白鵬が一人横綱となった。史上最多となる優勝44回の大横綱も次に出場する場所に進退をかける意向を示した。「次に看板を背負うのは俺だ」三大関にはそのぐらいの気概が求められる。
この記事を書いた人

鎌田 崇央 記者
平成14年NHK入局
さいたま局を経て、スポーツ部に。プロ野球、水泳などを担当し、格闘技担当は通算5年目