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特集 大関 正代“今できることを”春場所残り5日間で真価が問われる

相撲 2021年3月24日(水) 午前11:50

横綱不在の今場所、優勝争いに加わるべき大関陣が苦しんでいる。10日目を終えて、朝乃山3敗、貴景勝は4敗。特に正代は5勝5敗とようやく星を五分に戻した。10日目の妙義龍との一番も万全ではなかった。

 

 

立ち合いで相手に踏み込まれ、いなしながら持ち前の動きのよさで、なんとか肩すかしを決めたが、ひやっとさせる内容だった。

 

「押し込まれかけているので、もっと立ち合いで当たれるようにしたいですね」

 

白星にも、口にするのは反省の言葉ばかりだった。5勝5敗は土俵を引っ張っていく番付にあることを考えれば「ふがいない」と言われてもしかたない成績だ。

 

不調の要因を本人もわかっている。「立ち合いが遅れて圧力がかけられていない」ことだ。

 

正代の独特な立ち合いは「腰が高い」とも指摘されるが、体当たりで圧力をかけてどんどん前に出ていくのが本来の相撲だ。

 

ところが、今場所は立ち合いで踏み込めていないため、腰の高さが悪い方に出て相手を抱え込みながら簡単に後ろに下がってしまう場面が目立っている。

 

春場所9日目 正代が大栄翔に押し出しで敗れた一番

 

報道陣の取材に対し「出足をちゃんとしなければ」「立ち合いを鋭くしなければ」と連日のように繰り返し、必死に修正しようとしているのが伝わってくる。

 

ただ、場所中に微妙な感覚を修正するのは難しい。「満足のいく踏み込みはちょっと見当たらない。自分としては踏み込んでいるつもりでも押し込まれている感じ。勢いが伝わっていない感じがあるのでかみあっていないのか立ち後れているのか・・・」

 

万全の相撲が取れなくても勝ち星を求められるのが大関という地位だ。この日、下がりながらも白星をあげたことで少し吹っ切れたように見えた。

 

「立ち遅れても勝ちにつなげるためにどうすればいいか」という質問に「相手に踏み込まれても、すぐに対応できるようにすること。できる範囲で力を出し切ることが重要だと思う」と答えた。

 

春場所2日目 正代が阿武咲を押し出しで破った一番

 

苦しい体勢から白星をもぎ取れるしぶとさ、独特の器用さも正代の持ち味だ。「ネガティブ」と言われるほど弱気な発言は相変わらずだが「今の自分にできること」をしっかり見つめていた。

 

11日目に組まれた取組は星の差2つをつけて単独トップに立つ1敗の小結・髙安。これ以上独走を許せば優勝争いの行方が一気に決まってしまう可能性もある。

 

最後まで場所を盛り上げていくことも大事な役割だ。春場所は終盤戦に入り残り5日、大関・正代の真価が問われている。

 

この記事を書いた人

清水 瑶平 記者

清水 瑶平 記者

平成20年 NHK入局。熊本局、社会部などを経て、平成28年からスポーツニュース部で格闘技を担当。学生時代はボクシングに打ち込む。

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