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特集 大関経験者の髙安が好調「千秋楽まで優勝争いに加わりたい」

相撲 2021年3月21日(日) 午前0:00

2分59秒の手に汗握る攻防だった。春場所7日目、髙安と宝富士は、ともに左の相四つ。
先に上手を引かれて半身となった髙安は圧倒的に不利な体勢だったが、そこから、じっと辛抱できるのが、今の状態の良さを表している。

 

 

一瞬の隙をついて右上手を引き、出し投げで白星をもぎ取った。乱れた大銀杏で勝ち名乗りを受け、さすがに疲れの色は隠せなかったが、あくまで冷静で、落ち着き払っているように見えた。

 

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幕内後半の審判長を務めた元大関・武双山の藤島親方は髙安の心身の充実ぶりを絶賛。「体が動いている。諦めていないし、気持ちも前向きだ」

 

その評価のとおり、今場所の髙安はとにかく動きがいい。立ち合いの当たりで一気に持っていく相撲もあれば、大関・朝乃山や小結・御嶽海といった実力者を四つに組んでしとめる相撲もある。

 

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大相撲合同稽古 髙安と朝乃山(代表撮影)

 

好調の理由として本人が挙げているのは2つ。「体調がいい」点と「ひざを曲げて相撲を取れている」ことだ。

 

腰や左ひじなど、たび重なるけがに苦しんで大関から陥落した髙安。けがの回復が安定した下半身につながり、かつてのような前に出る圧力、簡単に下がらない腰の重さが戻ってきているのだ。場所前から活躍の予感はあった。

 

2月に行われた関取同士の合同稽古では6日間のうち5日間で相撲を取り、合計54勝4敗。

 

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合同稽古で朝乃山を転がす髙安(代表撮影)

 

大関・朝乃山に対し、みずから三番稽古を申し出て13勝1敗と圧倒した日もあった。合同稽古の期間が終わったあとも元横綱・稀勢の里の荒磯親方と相撲を取りながら、じっくり体作りをしてきた。

 

「しっかり基礎に取り組んでけがをしない体を作ってきた」と地道な積み重ねに手応えを感じている様子だった。

 

中日、8日目の相手は1敗で並ぶ関脇・照ノ富士。今場所に大関復帰をかけ、規格外のパワーで順調に白星を重ねている。しかし、髙安はこの1年、照ノ富士に3連勝中で、通算でも11勝7敗と合い口は悪くない。藤島審判長が「もうちょっとあとに見たかった」と残念がるほど、場所の終盤に組まれてもいいぐらいの非常に楽しみな一番だ。

 

 

「千秋楽まで優勝争いに加わりたい」

 

場所前から一貫して口にしてきた髙安。大関復帰が少しずつ近づいてきた照ノ富士に注目が集まる一方で、もう1人の大関経験者が虎視たんたんと賜杯を狙っている。

この記事を書いた人

清水 瑶平 記者

清水 瑶平 記者

平成20年 NHK入局。熊本局、社会部などを経て、平成28年からスポーツニュース部で格闘技を担当。学生時代はボクシングに打ち込む。

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