特集 照ノ富士 史上最大の復活劇なるか!?

照ノ富士
やっと近づいてきたかなと思う。今場所決めておかないと、また最初からになるので頑張らないと。
関脇・照ノ富士は大関復帰を果たすことができるのか。春場所の大きな注目だ。
初日、やや強引ともいえる左の下手投げで北勝富士を退けた照ノ富士。
2日目の若隆景戦でも小手投げからの力任せの相撲で勝負を決め、2連勝とした。
ただ、豪快な相撲は照ノ富士の魅力でありながら、時に“もろ刃の剣”にもなりうる。
平成27年夏場所後、大関に昇進した照ノ富士は大きな体を生かした豪快な相撲で相手を圧倒、“すぐに横綱になる”との声もあがっていた。
しかし、そのスタイルが仇となり土俵の上で左右のひざを相次いで痛める結果に。昇進から2年あまりで大関から陥落した。
さらに糖尿病や内臓疾患も煩い、気がつけば番付は序二段まで下がっていた。
大関経験者が幕下以下で相撲を取った前例はなく、照ノ富士自身、何度も師匠の伊勢ヶ濱親方に引退を訴えたと言う。
しかし、そのたびに親方から「ひざのけがや病気を治してもう一回頑張ってみろ」と慰留され、現役を続けた。
復活をかけた苦しい時期を支えたのが妻のドルジハンドさん。入籍したのは十両への陥落が決まった時期だった。食事面などで献身的なサポートを受け、2人で復活への道を歩んできた。
春場所前の先月、入籍から3年越しで開いた結婚披露宴。照ノ富士は妻への感謝の言葉を伝えた。
照ノ富士
1人じゃできないことがたくさんあるし、だからこそ周りの支えが本当に大きかった。その中で1番近くで本当に復活するきっかけになったのはやっぱり奥さんのおかげだなと思っています。
三役に復帰後、ここ2場所で24勝。昇進の目安とされる直近3場所33勝には、今場所9勝が必要になる。平幕以下に番付を下げたあと、大関に復帰となれば昭和52年の魁傑以来。過去、十両以下はもちろん、序二段まで落ちて戻った例はない。
大関復帰へのポイントは何か。
今場所前、師匠の伊勢ヶ濱親方は「変わらず稽古はできている。足腰は再入幕した頃よりも安定してきた。まわしを引いて前に出る相撲を取らなければならない」と、ひざへの負担を軽減する取り口を徹底するよう求めた。
妻をはじめ、周囲の支えもあって近づいてきた大関復帰の目標。
「奥さんにカッコイイ自分を見せたい」
そう言ってはにかんだ照ノ富士が史上最大の復活劇を成し遂げるためには前に出る相撲を徹底できるかが鍵となる。
この記事を書いた人

鎌田 崇央 記者
平成14年NHK入局
さいたま局を経て、スポーツ部に。プロ野球、水泳などを担当し、格闘技担当は通算5年目