ストーリーラグビー

ラグビーの気になる話(37)「司令塔のノートにあったキーワード」

2019-08-21 午前 0:00

日本代表は先月下旬からのテストマッチで3連勝し、世界ランキングも11位から過去最高に並ぶ9位に浮上。開幕まで1か月となったワールドカップ日本大会に向けて勢いに乗っています。

その勢いを象徴する選手の1人が、スタンドオフの田村優選手です。チーム不動の司令塔は、ある言葉を大切にして、ワールドカップに向っています。

司令塔の『部外秘』ノート

田村優選手

 

6月から7月まで宮崎市で行われた強化合宿。田村選手が『部外秘』というノートを特別に見せてくれました。そこには、戦術の狙いやサインプレーなどが細かく書かれていました。

 

『部外秘』のノート

田村優選手

サインプレ-などはベースがあるんですけど、起きて欲しくないシチュエーションが起きたときにどう対処するかなどが書いてあります。これが試合が行われる週になったら、1日に2ページくらい書くときもあります。だいたい1試合で10ページ近く書きます。

毎試合攻撃の仕方が変わっていきますし、月曜日から木曜日までに完璧に覚えて、最後は、試合前日の金曜日に確認します。あとは、試合での状況判断ですね。

キーワードは "CONNECT"

田村選手は、キャプテンのリーチ マイケル選手などとともに、日本代表で、リーダーグループの一員になっています。ノートには、ミーティングの内容も細かく書いてありました。

 

 

その中でひときわ大きく書かれていたのが、"CONNECT"という単語。日本語では、"つながり"を意味します。

 

リーチ マイケル選手

 

もともと、キャプテンのリーチ選手が発したというこの言葉。田村選手は、チームが1つになるために大切なキーワードだと説明してくれました。

 

田村優選手

1つ1つやることをつなげていくという意味もありますし、一貫性を持つということにもつながるかな。いろんな柱をつなげていき、毎週、同じストラクチャー(=構築)をしていくというのもあると思います。

ワールドカップではいろんなコントロールできない状況が起きると思いますし、そこで、みんながしっかりつながっていれば、僕たちがやることは変わりません。

フィールドの内外で

"CONNECT"に込めた思いのとおり、日本代表は、どんな状況でも意思疎通を図り、1つのチームとしてまとまることができるように鍛え上げてきました。その成果は、先月下旬から行われた3試合のテストマッチにも現れています。

 

日本―フィジー トライ決める福岡選手(7月27日)

 

岩手県釜石市で行われた最初のフィジー戦では、田村選手が、ウイングの福岡堅樹選手とコミュニケーションを取った上で、柔らかなキックで最初のトライを演出しました。

トライを決めた福岡選手は「自分のスピード、田村選手のキックの正確さをお互いにわかり合えていたから決めることができた」と振り返りました。

 

日本―トンガ トライを決める松島選手(8月3日)

 

さらに、翌週、東大阪市で行われたトンガ戦でも、ウイングの松島幸太朗選手が手を挙げてアピールしたのを受けて、田村選手がディフェンスのいないスペースに、キックでボールを転がし、トライを生み出しました。

 

宮崎県日向市の大御神社で必勝祈願を行うラグビー日本代表(7月17日)

 

一方、フィールドの外でも、"CONNECT"は進んでいます。選手たちは、宮崎合宿の最終日に日向市の神社にある「さざれ石」を見に行きました。「さざれ石」は日本国歌の歌詞に登場します。外国出身選手もチームに多くいるなか、試合前に歌う国歌への理解を深めることで、結束を高めようとしていました。

さらに、地域や住民との一体感を高める取り組みも行っています。フィジー戦では、東日本大震災の被災地である釜石で試合を行う意義をチームで共有し、岩手県内の合宿先や試合会場で子どもたちとのラグビー教室も開き、田村選手自身も試合後に手応えを話していました。

田村優選手

良い練習をするために良い準備ができているし、チームの絆もどんどん深めていけています。釜石で試合をする意味をキャプテンが1週間かけてチームに話してくれて、それがキッズイベントにもつながった。

試合当日も声援を感じ、チームが"CONNECT"しているのは当たり前だが、そこでもつながっていると感じられたことが今まで無かったのでそれが一番うれしかった。

W杯を占う対戦へ

南アフリカ代表

 

ワールドカップまで残すテストマッチは来月6日の1試合のみ。4年前に日本代表が史上最大の番狂わせで勝利した南アフリカ戦との試合です。世界ランキングは日本の9位に対して、南アフリカは4位。ランキングとしての力関係は4年前とほぼ変わっていません。

この戦いは、日本が鍛えてきたキックを織り交ぜた素早い攻撃のほか、タックル、密集での攻防、攻守の切り替えなどが世界の強豪に通じるのか試される場となります。言い換えれば、ワールドカップで日本が目標のベストエイト以上に入れるかを占う試合にもなります。

 

北海道網走市でW杯登録メンバー発表前最後合宿(8月19日)

 

今月18日から始まった北海道網走市の合宿では、戦術の仕上げの部分で最終段階に入ります。チームの成長をワールドカップへどうつなぐか、"CONNECT"するチームへの注目がますます高まります。

中村 大祐

スポーツニュース部 記者 平成18年に入局。奈良放送局の後、福岡放送局を経て、平成25年の夏に政治部に異動し、厚生労働省や防衛省などを担当。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて去年夏からスポーツニュース部に。高校・大学とラグビー部に所属し、ポジションはバックス。

 

 

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