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特集 北の富士勝昭が斬る 春場所の期待は大栄翔と照ノ富士!休場明けの横綱 白鵬と鶴竜は…

相撲 2021年3月10日(水) 午後0:50

大相撲を厳しく、かつ、温かく見守り続ける元横綱でNHK大相撲解説者の北の富士勝昭さんに、大栄翔初優勝の初場所を振り返り、春場所への期待を語ってもらいました。

大栄翔は大関候補に名乗りを上げた 頂点を目指して強い稽古相手を求めるべきだ

初場所千秋楽 大栄翔が賜杯を持って笑顔 (代表撮影)

 

初場所は新型コロナ関連で十両以上は初日に15名が休場となりどうなることかと思ったが、場所中に1人も感染者が出ることなく何とか無事に終わって本当によかった。土俵は大栄翔が頑張ってくれたおかげで大いに盛り上がった。

 

初場所初日 朝乃山を押し出す大栄翔

 

初日から3日連続で大関を撃破し、対戦する三役陣全員からも白星を挙げたのは実力がある証拠。そこそこやってくれるとは思っていたが、さすがに優勝はまだ早いと思っていた。それが最後まで崩れることなく賜盃を手にするのだから、あっぱれですよ。

 

隠岐の海を突き出しで破り初優勝を果たした大栄翔

 

大栄翔の突っ張りは手がよく伸びるし、足も出ているし、八角理事長の北勝海に相撲ぶりが似ているという声をよく聞くが、一発一発の押しの威力はそれよりも強いかもしれない。

 

初場所で初優勝を果たし賜杯を受け取る大栄翔

 

当然、大関候補に名乗りを上げたと見るべきである。大関、横綱になるには押し相撲一本では厳しいというのが定説ではあるが、大栄翔の場合は当分、今の押し相撲をさらに磨いていくべきだ。

 

ここで色気を出して四つを覚えようとすれば相撲が崩れてしまうだろう。師匠の追手風親方(元幕内大翔山)の指導力もなかなかのものなのだろう。関取衆も多いし、順調に育っている。

 

稽古でてっぽうをする大栄翔

 

北勝海には千代の富士という強力な稽古相手がいたように、大栄翔も頂点を目指して、コロナが落ち着いたら強い稽古相手をどんどん求めるべきだろう。聞くところによれば母子家庭で育ち、早く親孝行をしたいという理由から大学には進学せずに高校から即、プロ入りしたそうだ。何か目標を持って相撲に打ち込むのはいいことではないか!

照ノ富士の充実ぶりは目を見張った 一気に頂点までいくかもしれない

 

初場所技能賞の照ノ富士(代表撮影)


大関陣とは対照的に照ノ富士の充実ぶりは目を見張った。両膝の状態もだいぶよくなってきているのではないか。三大関と比べてもそもそも気合いが違う。やはり修羅場をくぐり抜けてきた者は違うのだろうか。

 

初場所14日目 正代をはたき込みで破る照ノ富士

 

次はいよいよ再大関とりになるが、ケガさえなければ2桁は固いだろう。まだ20代だし、ひょっとしてこのまま一気に頂点までいくかもしれない。今の大関陣にも当然期待したいところだが、昨今は関脇以下とは差がないのが現状だ。下手をすれば本気を出したときの御嶽海のほうが強いとさえ思える。

 

休場明けの横綱 白鵬と鶴竜は?

 

2月の合同稽古で阿武咲と相撲をとる白鵬(代表撮影)

 

そんな状況で白鵬が出てきたら、あっさりと賜盃を持っていくのではないか。それくらい、白鵬の力はまだ突出していると見た。ケガさえしなければあと1、2年はいけるのではないか。

 

2月に両国国技館内の相撲教習所で稽古する鶴竜(代表撮影)

 

一方の鶴竜は、もう限界だろう。腰が滑るというのは、黙っていても痛い。私も最近、腰をやったが大変だった。次の場所は背水の陣で臨むのだろうが、序盤5日間でどうなるか。

この記事を書いた人

北出 幸一

北出 幸一

相撲雑誌「NHK G-Media大相撲中継」編集長。元NHK記者。昭和の時代に横綱千代の富士、北勝海、大乃国らを取材し、NHKを定年退職後に相撲雑誌編集長となる。

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