ストーリーラグビー

ラグビー日本代表「日本の強さを世界へ、躍進へ」

2019-10-21 午後 0:00

ラグビー日本代表は、今大会、準々決勝で敗れたものの初のベストエイト進出という歴史的な快挙を成し遂げました。外国出身も多く、さまざまな文化を持つ選手たちが強く結束した「ワンチーム」になることで、体格で勝る強豪と互角以上に渡り合えることを世界に示すとともに、さらなる躍進の可能性を見せた大会となりました。

掲げたのは『ワンチーム』

2015年のラグビーW杯イングランド大会の南アフリカ戦

 

4年前に行われた前回大会で強豪の南アフリカから「世紀の番狂わせ」と呼ばれる歴史的な勝利をあげながら決勝トーナメント進出を逃した日本は日本大会に向けて世界最高峰のリーグ、スーパーラグビーに参戦するなど強化に取り組んできました。

 

就任後初となる合宿でのジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ

 

そして、3年前にジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチが就任し、掲げたテーマは「ワンチーム」、チームとして強く結束することでした。強豪に対して体格で劣りがちな日本にとって力強い外国出身の選手はもはやなくてはならない存在です。日本代表には日本を含む7つの国の出身者がいて、さまざまな言語や文化が集まるいわば『多国籍チーム』です。このため日本代表としての意識を高め、お互いに意思疎通して同じビジョンを持つことが強豪に勝つために欠かせなかったのです。

みずから判断、行動

 

そのうえでジョセフヘッドコーチが求めたのは選手1人1人が自ら判断し、行動する精神面の強さとも言える自主性でした。キャプテンのリーチ マイケル選手だけでなく出身国を問わずリーダーの役割を与え、攻撃や守備などの分野でチームを引っ張ることを意識づけていきました。

 

 

前回大会ではなかった選手だけのミーティングも増えていき、コーチが提示した戦術やプランを話し合い、疑問点は聞き直し、なおざりにしない。さらにチームづくりのアイデアを提案するなど、日本代表というチームを自分たちでつくっていくという意識で結束を高めていきました。

 

ピーター・ラブスカフニ選手

 

南アフリカ出身でリーダーの1人のピーター・ラブスカフニ選手が「南アフリカを愛しているが、日本のことも愛している。日本が私のチームであり、新しい故郷だ。日本の皆様にチームを誇りに思って欲しい」と話していたのが印象的でした。

大会前に見えた成長 そして、W杯の舞台で

大会前のテストマッチではゲームプラン通りキックを多用したり、相手の戦い方を踏まえて途中からキックを封印して戦ったりするなど柔軟性も見せ、自ら状況判断する自主性の成長が見て取れました。そして迎えたワールドカップ。

 

アイルランド戦

 

日本代表は、柔軟性に加えて長く、厳しい練習で磨いてきた「オフロードパス」などリスクを恐れない攻撃や、鋭い出足のダブルタックルを武器に、優勝候補の一角のアイルランドや強豪のスコットランドを破りました。アイルランドとスコットランドは「ティア1」と呼ばれる世界の強豪10チームで、「ティア1」に連勝したのは初めてでした。

 

 

試合内容でも長年、日本の弱点とされてきたスクラムやラインアウトといったセットプレーも安定し、特にスクラムでは、アイルランドに押し勝つ場面もあり日本の進化を象徴しました。こうして日本は、1次リーグ4戦全勝で悲願であり、目標でもあった初のベストエイト入りを成し遂げました。

 

この快挙の裏には、大会期間中、出られなかった選手たちが対戦相手の特徴を分析し、対戦相手以上の激しさを意識して練習台となるなど、それぞれが役割を果たしたこともあります。

 

姫野和樹選手

 

期待の若手として今大会に臨み世界のトップ選手相手にも引けを取らない活躍を見せたナンバーエイトの姫野和樹選手は「『ティア1』の概念を壊したと自信を持って言える。『ティア1』に食い込める 実力を世界に発信できた」と胸を張りました。

 

福岡堅樹選手

 

また、世界レベルのスピードを見せつけたウイングの福岡堅樹選手は「本当にきつい合宿を何度も乗り越えて『ワンチーム』を作り上げ、お互いのことを信頼しあって戦えるチームができた。前回大会での悔しい思いが、今大会の躍進の要因なのは間違いない。そして、日本の人たちの声援が確実に力になっている」と話しました。

 

南アフリカ戦

 

しかし、準々決勝では優勝候補の一角、南アフリカに対し、前半こそ互角に渡り合ったものの相手の圧倒的なパワーの前に体を痛める選手が続出しました。後半はスクラムや密集での攻防などで劣勢になり、反則を重ねるなどしてトライやペナルティーゴールで得点を重ねられ最後は完敗でしたが、試合後、およそ5万人の観客から惜しみない拍手が送られるなかで涙や笑顔の選手たちが健闘をたたえ合う姿からは達成感が伝わってきました。

 

さらなる躍進へ、見えた課題は

日本代表が世界最高の舞台で、屈強な海外勢と5週連続でぶつかり合うのは初めての経験で肉体の疲労もたまっていたことは否めません。今大会で日本は31人の選手のうち、5人に出場機会がなくほぼ固定されたメンバーで戦いました。一方で、ベストエイトに勝ち進んだ強豪のほとんどが1次リーグで31人全員を起用しています。

 

 

さらに一部のポジションでは層の薄さも感じられ、ジョセフヘッドコーチがたびたび指摘してきた「選手層」という課題が、最後に現れた形とも言えそうです。ただ、層を厚くできれば、ワールドカップを勝ち抜く力が高まるとも言え、今後、若手の育成のほか、日本代表でナンバーエイトからプロップに転向し、スクラムなどを献身的に支えた中島イシレリ選手のような人材の発掘を進めることも重要になります。

 

中島イシレリ選手

 

ジョセフヘッドコーチのもと「たくさんのことを犠牲にしてきた」とラグビーに専念して多くものを積み上げてきた日本代表の選手たちは開催国の誇りと自信を胸に初のベストエイトをつかみ取り、体格で勝る強豪と互角以上に渡り合える強さを世界に示しました。

 

 

4年後のフランス大会に向けて、強豪に勝ちきる土台を受け継ぎながらさらに底上げを図ることで、「桜の戦士」たちがもう一段、躍進する可能性が見えた大会になりました。

中村大祐

スポーツニュース部 記者 平成18年に入局。奈良放送局の後、福岡放送局を経て、平成25年の夏に政治部に異動し、厚生労働省や防衛省などを担当。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて去年夏からスポーツニュース部に。高校・大学とラグビー部に所属し、ポジションはバックス。

 

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