ストーリーラグビー

ラグビー日本代表をベスト8へ導いた堀江選手・福岡選手の苦悩

2019-10-25 午後 0:00

ラグビーワールドカップでアイルランド、スコットランドを撃破し、史上初の決勝トーナメント進出を決めた日本代表。準々決勝では南アフリカに力の差を見せつけられたものの、日本ラグビーの新たな歴史を作りました。その立役者としてすっかり有名になったのが、堀江翔太選手と福岡堅樹選手。

爆発的なスピードを武器に攻守にわたって活躍し、プレーヤー・オブ・ザ・マッチに輝いた福岡選手。そして、スクラムの要である堀江選手は勢いのあるプレーと、トライにつながるパスを強みにスコットランド戦の劇的勝利に貢献しました。

実はこのふたり、大会前、出場が危ぶまれる大きな危機に直面していたのです。

 

世界に通用するスピード・福岡堅樹選手

2019ワールドカップ スコットランド戦 福岡選手2本目のトライ

 

1次リーグで3戦連続の4トライを奪った福岡選手。そんな日本が誇る彼の特徴は何と言っても足の速さ。なんと、50メートル走のタイムは驚異の5秒8!その速さの秘密は、身体を前傾させた独特なフォームにありました。

専門家によると、体を前傾しながら足首のスナップを効かせることで、爆発的な推進力を生み出しているといいます。その走り方は、もはや人間というより競走馬に近いのだとか!

福岡選手はこの急な加速を生かしながら、内側に入ると見せかけて外側に開くなどキレのある動きで、相手の攻撃を振り切っているのです。

膝に抱えた爆弾

しかし、そんな独特のフォームは福岡選手の膝に過度の負担をかけていたのです。高校時代に両膝の靭帯を損傷し、2度の手術を経験。去年2月にも右膝の手術をしたばかりでした。

 

 

膝に爆弾を抱える福岡選手を、さらなるアクシデントが襲います。去年9月、試合中に100キロを超える選手との接触で、後頭部と顎を強打。強い「脳しんとう」と診断されたのです。目前に迫っていた日本代表合宿も断念せざるを得ませんでした。

その後の診断結果は問題なかったものの、何回も脳しんとうを起こしてしまうと後遺症の恐れも出てきます。膝に爆弾を抱え、それに加えて後遺症のリスク。それでも、諦めず立ち上がり続ける福岡選手を支えるものは何なのでしょうか。

恩師から受け継ぐ諦めない泥臭いラグビー

 

福岡選手は、ラグビー経験者だった父親の勧めで5歳の頃からラグビーを始めました。その後、進学した福岡高校のラグビー部で出会ったのが、恩師である森重隆(もり しげたか)監督。森監督は、新日鉄釜石が日本選手権7連覇を達成した時の選手で、熱血指導で知られていました。現在は、日本ラグビー協会の会長です。

 

 

そんな森監督が何よりも重視したのが、“ひたむきなラグビー”でした。
常に前を向いて、諦めない泥臭さこそラグビーだ――
福岡選手の強い心は森監督から受け継いだものだったのです。

 

福岡選手:「自分自身、ラグビーというものの精神が『身を殺して仁を為す』と言いますけど、自分が最後目立たなくてもチームがトライを取れればいいというのは、ウイングとしても思っています。そのトライの中の、どこか1ピースとして勢いを与えられればと常に思いながら、泥臭いプレーも積極的にやるようにしています。」


師から授けられた不屈の精神で、福岡選手は怪我の不安を乗り越えたのです。

 

チームの大黒柱・堀江翔太選手

 

ドレッドヘアーがトレードマークの堀江選手は、スクラムの最前線で体を張るチームの大黒柱のような存在です。ひたむきなタックルが評価されて、アイルランド戦ではプレ-ヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれました。

蓄積した疲労から右足首を骨折

しかし、堀江選手もまた大きな苦難に直面してきました。それは去年9月、数日前から違和感のあった右足首を疲労骨折してしまったのです。最前線で圧力を受けるスクラムで激しい接触を繰り返していたため、知らないうちに長年の疲労が蓄積していたのです。

 

医師からは手術を勧められますが、過去に行った手術で肉体へのダメージが想像以上に大きかった恐怖心から、堀江選手は手術を避ける決断をします。この怪我で、11月のニュージーランドとの代表戦にも出場できませんでした。ワールドカップが迫るなか、先が見えない状況に、堀江選手の不安は日々大きくなっていきます。

 

 

2週間後、恐れていた診断結果が待っていました。疲労骨折したヒビの状態が全く良くなっていなかったのです。それから3日後、自然治癒を選んでいた堀江選手は、手術を受けることを決意します。

家族の笑顔が原動力

手術を受ける決断をした堀江選手には、大きな支えがありました。それは家族の存在。妻の友加里さんと長女の美乃ちゃん、次女の香乃ちゃんは、堀江選手にとって1番の原動力です。

 

 

友加里さん:「翔太さんの夢を一緒に見させてもらってるというか、大きな夢のひと支えにならせてもらっています。」

 

家族の応援を受けて手術を乗り越えた堀江選手は、ここから驚異的な回復力を見せます。なんと手術から2ヶ月後には日本代表に合流し、練習を再開させたのです。

 

 

堀江選手:「きれいなプレーなんかしなくていいと思うので、泥臭く勝利をとりにいきたい。みんなが喜んでいる顔を見るのが好きなんですよね。」

試練を乗りこえ迎えたワールドカップ

こうして、それぞれの原動力を胸にふたりはワールドカップを迎えます。怪我の不安を感じさせないほどの勢いあるプレーで大活躍しました。

 

2019 ラグビーワールドカップ ロシア戦 堀江選手(右)

 

足首の骨折を乗り越えた堀江選手は、初戦のロシア戦に先発出場。相手にタックルを浴びせ続けました。

1次リーグの難関と言われたアイルランド戦でも、堀江選手の勢いは止まりません。スクラムでは、体重差のある相手からペナルティの反則を取ります。福岡選手は後半から出場。大外を一気に駆け抜けトライを獲得!その後も相手の猛攻を必死に防ぎ続け、アイルランドを破ります。

 

2019 ラグビーワールドカップ アイルランド戦 福岡選手

 

最後の壁・スコットランド戦でも、日本代表は仲間とパスをつなぎトライを連発。
見事、夢のベスト8入りをつかんだのです。

 

1次リーグの死闘の中、ふたりはこのように話していました。

 

 

堀江選手:「みんなの声援のおかげで、最後の1センチ、最後の1ミリ走ることができました。」
(アイルランド戦後のインタビューより)

 

福岡選手:「この勝利のために、すべての時間を犠牲にしてこの勝利のために頑張ってきたので、もう本当に最高です。これまで自分がやってきたこと、そのすべてを出し切って、日本のラグビーの新しい歴史を塗り替えて行きたいと思います。」
(スコットランド戦後のインタビューより)

 

選手生命にも関わるほどの危機に直面しながらも、チームのために立ち上がり続けたふたり。そして、世界の強豪たちを次々と倒した日本代表。着実に勝利を重ね、その強さが世界トップレベルであることを証明しました。夢への旅は終わりましたが、その挑戦する姿は多くの人の目に焼き付き、ラグビーの魅力が知れ渡る歴史的な大会となりました。

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